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女嫌い王太子は恋をする。※ただし、そのお相手は乙女ゲームのヒロインではないようです  作者: ごろごろみかん。
一章:疑念

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突撃!隣のビヴォアール国……なるか!?

「王太子を………代える………?」


「ビヴォアールはこのままだとダメになる。ガレット王子が即位なんてした日にはビヴォアールはセイサムの属国になるだろう。それでなくても、波乱の幕開けになることは間違いない。そしてその余波を、必ずうちも受けることになる」


「……………」


確かに私もそう思っていた。だけど、だからといってビヴォアールの王太子のすげ替えまでは発想に至らなかった。


「一度ビヴォアールの内情を調べなくてはならないな。………ユティ、僕は近いうちビヴォアールに向かおうと思うけど、君はどうする?………僕とともに、来てくれるか?」


夫が落ち着いた声で話しかけてきた。静かな、落ち着いたその声は私の判断を慎重に聞いてきている。

私は少し黙り、夫の言葉を噛み砕いた。近いうちにビヴォアールに行く………ビヴォアールは恐らく、内部が腐りかけているのだろう。あの王太子夫妻を見ればよくわかる。このまま放置していればビヴォアールはダメになることくらいはすぐに知れた。そしてそうなれば困るのはルデンだ。

エレノーワと同盟を結んでいるセイサムに攻めいられたらいくら地の利があっても今のビヴォアールじゃ太刀打ちできない。

むしろ王太子には間者を差し向けた方が勝率があるかも、というレベルだ。

王太子夫妻の警戒心のなさはさすがに………まずい。セイサムがそれに気づいているかどうかは分からないが、確かに早急に対処しないとまずいだろう。


「僕の最初の予定だとね。ビヴォアールにはセイサムの茶葉を、セイサムにはビヴォアールの茶葉を渡し、お互いに警戒させる予定だったんだよ。ルデンがもしかしたら向こうの国についてるかもしれない………そう思わせれば、少なくとも表面上、争い事は表沙汰にはならないだろう。下手をうってうちを敵に回したくない、そう、まともなものなら考えるからだ」


「………そんなことを」


………ん?そう言えば私、夫に茶葉を貰ったことがあるわ………。あの時はなんとも思わなかったけれど、もしかしてあの茶葉にもなにか意味があったのかしら……!?


そう思うとどんどん焦りが襲ってくる。あの茶葉の産地はどこだったかしら。

思い出そうにもたった一日で散々なことが起こり、すぐには思い出せない。後で侍女に確認しておこう。もしかしてあれも何かのメッセージ………?

読み切れてなかったらどうしよう。そうしたらこの夫は私のことも蒙昧だと判断するのだろうか。男女の仲については置いておくとして、彼に………ルデンの王太子に王太子妃が愚鈍だと判断されるのは避けたかった。

私が黙ると、夫が言葉を紡いだ。


「エレノーワがセイサムについているのかは半信半疑だったが………ビヴォアールの王太子を招いた次の日に来訪したいと言い出したんだ。ほぼ確実」


「…………あの、殿下がわざわざ?」


「内側を知るためだよ、ユティ。情報はいくらでも書面上で追えるけれど、ビヴォアールは少し面白いことになっててね。実際僕が、この目で見た方が早い」


面白いこと………?

聞き直したかったけれど、しかしそれより早くに夫は席を立ってしまった。時計を見れば既に時刻は遅い。もう就寝しないと明日に響くだろう。

アヤナ様と色々あったせいで余計なタイムロスをした。あの時間がなければもっと深いことまで聴けたかもしれないのに。

また明日からは手紙のやり取りなのかと思うと、口ですぐ聞けてすぐ返事ができる今の状況に比べかなり不便のように思えた。いや、思えたのではない。実際不便なのだ。疑問に思ってから回答が届くまで早くても数時間。

遅ければ日をまたぐ時だってある。


………遅い!面と向かって聞けば回答はすぐさま、即答で返されるのに。

手紙の不便さを嘆きながらも、しかし時間が来てしまった以上仕方ない。夫婦なのだから時間など関係ないと思うのだが、そこは仮面夫婦。表面上は夫婦であってもその実、他人の関係だ。


「それじゃあユティ。風邪をひかないように………ああ、あと。口の端が少し切れている。………すまない、僕が初めから彼女の対応をしていればユティが花壇に突き飛ばされることもなかった」


夫が私の顔を見て悲しそうに眉を顰めた。まあ、そればかりは仕方ないと思う。誰だってあの時点でアヤナ様がつまずくとは思わなかった。しかし彼女は毎度の事ながら転びっぷりが見事である。靴の裏にバナナの皮でもくっついているとしか思えない。


「………侍女に手当をさせるから。ゆっくり休んで、ユティ」


「ありがとうございます、殿下もゆっくりおやすみくださいませ」


「うん。おやすみ」


私は淑女の礼を執り、殿下も軽く笑ってそれに答える。そのやり取りは思った以上に気軽で、なんだか新鮮だった。

殿下とまさかこんなふうに話せるようになるとは。

初顔合わせの時は思ってもみなかったわ………


殿下は本当に、私と向き合おうとしてくれているのね………。


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