征服生活は突然に
世界支配を企む組織の長が突然死!?
思わぬ形で騒動のまっただ中に放り込まれた主人公は、何故かその影武者になる羽目に……
邪悪なる意思のもと、世界を牛耳らんとする悪の国家があった。
その名も【夢幻皇国エタニティ】。
悪逆非道なる総統ブロウディア率いる軍団の魔手は地球全土を蹂躙し、すべての生きとし生ける者たちは阿鼻叫喚と化した大地で震える日々を過ごしていた。
だが、この世に悪がはびこるのが理だとするならば、同様に正義もまた目覚めるのが道理である。
いつからか『光の戦士』と名付けられた五人の若者たちは皇国の暴虐に立ち向かい、涙さえ涸れ果てたかに見えた人々の希望となっていった。
そして戦士たちと皇国の一進一退の激闘は、早くも2年を迎えようとしていた。
暗雲たなびく城の玉座で、総統は静かにたたずんでいた。
順調だった侵攻作戦は『光の戦士』なる者たちの妨害にあい、停滞を余儀なくされていた。その埋め合わせとして、大半の戦闘員たちは各地の前線へと散り、今この城にいるのは側近とその手駒となる配下の者たちだけだった。
その者たちもまた城内の雑務に追われているらしく、謁見の間に総統以外の人影は見当たらなかった。
と、そこにひとりの男が息を切らせて駆け込んでくる。通常ならばこのような無作法者は入り口で止められるのが道理なのだが、今はその役目を負うものさえ出払っている。
「報告いたします。東方遠征中の皇国軍、龍の巫女アレイシアの抵抗に遭い、壊滅いたしました……」
苦渋をにじませた配下の言葉に、総統の返事はなかった。
この数ヶ月、こうした敗残の知らせが城に届けられるのはもはや二度や三度ではない。
役に立たない軍団の体たらくに業を煮やしているのか、城の主たる総統は指ひとつ動かさない。
張りつめた空気が、閣下の御前で平伏する男の肩にのしかかる。
——このまま処刑される。
絶望の予感とともに、一兵卒にすぎない伝令の男は震え上がる。
「どうか、どうかお許しを……」
かろうじて絞り出した懇願にも総統ブロウディアは返事ひとつしない。
もはやこうなっては逃れようがないと、男は死を覚悟する。
ならば、もうなりふりなど構っていられない。
吹っ切れた男は突然玉座に駆け寄り、口を閉ざしたままの総統の足下にすがりつく。
「御慈悲を……閣下、どうか御慈悲をっ!」
なかば自暴自棄になりながら、泣き叫ぶ男がマントに手をかけたその時だった。
ゆらりと、ふいに総統の体が男の方へと近づいてくる。
寛大なる閣下は哀れな男をお赦し下さるのか、それともこのまま塵すらも残さず朽ち果てる運命か。
だが、皮肉な運命は男にそのどちらも与えてはくれなかった。
——どさっ。
とっさに後ずさった男の前に、総統の体が横たわった。
「……へっ?」
いきなりの出来事に、それ以上の言葉が出てこない。
だが、さすがの男もこの異様な事態に立ち尽くしたままではいられなかった。
「閣下、いったいどうなさっ……」
おそるおそる近づいて、男はようやく気づいた。
報告に耳を貸すはずなど、はじめからなかったのだ。
何故ならば総統閣下は死んでいたのだから。
(ど、どどっ……どういうことなんだこれ!?)
遠大なる野望に燃える男の、あっけないほど突然の幕切れ。
そしてそれは、そこに居合わせた青年のあまりに数奇な「第二の人生」の幕開けでもあった。




