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風の音に耳を澄ませて  作者: 原案:深江 碧×文章:白井 滓太
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エフネの贈り物


 親友の娘 リタへ



 大人になると、言いたいことが素直に言えなくなる病気にかかってしまうのだと思う。

 だから、今更、こんな手紙を出して、そこに何の意味があるのかと思うかもしれない。君にとって私は、顔も知らない赤の他人だ。

 それでも私は、君に伝えたいことがあるから、これを書こうと思う。

 私は彼女――君のお母さん――とは、親友だった。

 遠い異邦の地で、孤独に押しつぶされそうだった私を救ってくれたのが、彼女だ。

 それまで魔女と呼ばれ、虐げられてきた私にとっては、それがたまらなく嬉しかった。

 私が今日まで魔女として生きてこれたのは、彼女がいたからだ。

 それなのに私はあの日、彼女の力になれなかった。

 ……私は、結局最期まで彼女に何も返すことができないままだ。

 彼女が最期に誰を想っていたか。

 どんな景色を見ていたか。

 何を言いたかったのか。

 私は、何も知らない。

 全てを知った時にはもう、遅すぎた。

 伝えたい言葉も、救えなかった時間も、あの瞬間に全て掌からこぼれ落ちてしまった。

 それでも、必死にかき集めて、ようやく彼女の大事なものを拾うことができそうだ。

 彼女の一番の自慢である君を。


 ……閑話休題。

 一緒に入れている石を、見たことはないと思う。

 それは、この国の宝玉と呼ばれるものだ。

 あの時。神官は、自分たちの権力をより強固なものにしようと画策し、権力を奪うため、王族に罪を擦り付けた。

 その結果、奴らはまんまと王族を滅ぼし、国の中枢に今も居座っている。

 君達の罪は、最初から無かった。


 宝玉は君に託そうと思う。復元するのに時間を費やしてしまったけれど、やれることはやった。

 神さまが上手く戻ってきてくれるかどうかは、翼のない私にはわからないけど、多分大丈夫だと信じている。


 だから、これからは君の人生を、大事に、大事にね。


 さて、そろそろ筆を置こう。

 私にはまだ“後始末”が残っている。


 ……いつか、逢えたらいいな。



《二枚目に続く》





 ……あぁ、それから最後に。彼女から預かっていたペットを返そうと思う。

 変な所ばかり私に似て、中々聡い子だけれど、少しさみしがり屋だ。

 きっと君の為に動いてくれると思う。



 できれば、仲良くしてやって欲しい。









 私の、自慢だ。





            エフネより





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