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音の子  作者: 花言葉
権力者
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1

 城下町に着くと、人がにぎわう市場が多く見えた。

「わ~、すごい人」

『ここは、城下町だから』

「そうよね、城の下なら、すごくたくさん人がいるのも納得だわ」

 アイシャはそう言って、馬車の外を楽しそうに見ている。

「私も、この城下町で買い物したいな」

『いいよ、今度行こう』

「約束ね」

 小指を出してきたので、小指を絡ませる。

「約束」

 ニコッと笑った。そのうち城に着き。

「王妃様、ただいま帰りました」

「ベルツはしゃべれるようになった?」

「それが、まだです」

 マティスが王妃と話をしている。

「どうするの、音の子はどうなったの?」

「一緒に来ております」

 王妃は、ベルツとアイシャを見て少し固まった。

「これは、手ごわいわ」

 ベルツがアイシャを愛おしそうに見つめていたのだ。

「ベルツの事だから、あの女の子との関係を切りたくなくて、わざとキスをしないのでしょう?」

 王妃はカンカンだった。

「王に相談しておきます」

「その前に会議の事ですけど、ベルツは出席で」

「は?」

 王妃は困った顔をした。

「しゃべれないあの子が出るの?」

「だって、アイシャ様と約束してしまいましたから」

「あの子が通訳をするって事? それじゃあ、ちゃんとした言葉を話せるかテストしなくてはいけないわ」

「そうですね」

 マティスは跪いた。


☆ ♪ ☆


 その後、アイシャは、ベルツと二人、王妃と勉強させられていた。

「今日は、私の意見を聞いてくださり」

「今日は、私の意見を聞いてくれて」

「はい、間違えたわね」

 アイシャは、正しい発音を教えられていた。

「あなたは、なまりがあるのね」

「ええ、まあ」

「その調子じゃ、ベルツが恥をかきます」

「すみません」

 ベルツは、申し訳なくなってみていた。

(アイシャ、かわいそうだ)

 心の中でそう思っていると。

「さ行の発音が少し変だわね」

「そうですか?」

 アイシャは、一生懸命授業を受けている。


☆ ♪ ☆


 その日の夕方、アイシャはベルツの所へ来ていた。

「音が合っているか、聞いてほしいのですが……」

『いいよ』

「さしすせそ」

『すが少し変』

「そう、す、す、す」

『今の合っていた』

「ありがとう」

 二人でそんな話をしていた。

『あの、なんでそんなに頑張ってくれるの?』

「王子は、自信がなさそうなので、今度こそ自分ができるって思ったら、頑張っていける、そんな気がして、それのお手伝いをしてあげたいなと思ったのです」

『アイシャ……』

「インク壺も鈴も変って言ったら変です。でも、そのせいで、自分を失うのは、間違っていますよ」

『そうかもね』

「わかってくれるの? 私、がんばるから」

『うん、ありがとう』

 アイシャは、部屋を出て行った。

(インク壺と鈴で自分を失っていた?)

 アイシャの言葉に考えさせられた。

(俺は、自信がないんじゃなくて、自分が無いのか?)

 少し焦った。

(アイシャには、そう見えていたのか?)

 アイシャには、自分の無い、ダメな人間に見えていたのだろう。

(声が出ないと言う事を理由に自分を捨てているのか?)

 冷や汗がポタポタと落ちる。

(俺は、間違っていたのか?)

 初めて気づかされた、自分の無さ。

(アイシャには、芯があるんだ)

 だから憧れて仕方がないのだろう。

(アイシャ)

 アイシャといれば、いつか見つけられるのかもしれないと思うと、増々手放しがたくなってしまう。

(彼女は、音の子、運命の子なのだ。それは、本当に運命が引き寄せてくれたのかもしれない)

 ドキドキと胸が高鳴る。


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