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音の子  作者: 花言葉
音の無い王子
4/24

4

 そして、お見合いが始まった。

「リリカ・カティス・マーチン嬢」

 そう呼ばれて入って来た、ピンクのドレスの令嬢は、美しく笑った。

(あ~、そんなに地位が欲しいんだ)

 ベルツは、一人で冷めていた。

「さあ、手を握って」

 ベルツとリリカ嬢が手を握った、ベルツは『ブラックペッパー』と心の中で言った。

「リリカ嬢、何と言っていた?」

「わからないわよ、こんなもの」

 リリカ嬢は怒って言った。

「これで、怒るのは、何人目だろうね、嫌な見合いだ」

 マティスがそう言う。

『確かに面倒くさい』

「そうだろう、ベルツ、そもそも、ベルツは、好きな子を待っているだけなんだろう」

『まあね』

 そう書いて、マティスに見せると、マティスは嬉しそうだった。

「アイシャ・カーネスト嬢」

 村娘の格好で、おどおどと入ってくるアイシャにドキドキした。

「それじゃあ、手を握って」

「はい」

「何が聞こえる?」

「そうですね『ドキドキしてしまう』ですかね」

「ベルツ、私情はだめだと言っただろ」

「『アボカドサラダ』ですか?」

「ちょっと待てよ、当たっているのか?」

『合っているよ』

「何だと」

「『アイシャでよかった』って、王子の声なんですかこれ?」

 アイシャは、驚いた顔をしている。

『うん、そうなんだ』

 手を通してそう言った。

「さすが王子、王子の声って、普通の人と違うのね」

「それよりも、王妃様、王妃様」

 マティスが走っていなくなる。

『アイシャ、君が音の子だったんだね』

「あの、意味が分からないのですが……?」

 アイシャは、困るばかりであった。

『君には、俺の妻になって欲しい』

「いやよ!」

「!」

「確かに私は、偉い男の人からお金を貸してもらおうとして、ここに来たわ、でも、王子に嫁ぐために来たんじゃない」

『アイシャ……』

「放して……」

 手を離すと、音が一つ減った。

「何なのよ、これ」

 アイシャが、困惑し続けている。アイシャは、城から抜け出そうとしだしたので、腕をつかみ。

『いかないで、アイシャ』

「王子、でも……」

『お金を渡すから』

「本当、それなら、しばらくいようかしら」

『うん、そうして』

 ベルツは、アイシャの態度に少しばかりがっかりしてしまった。

(俺の事なんて、眼中にないんだ)

 そう思うとむなしくなった。


 ☆☆


 アイシャは、王妃の元へ連れていかれた。

「あの、王妃様ですよね?」

「ええ」

 王妃は、長い黒髪を揺らしてそう言う。

「なぜ、私みたいな庶民とお話をしてくださるのですか?」

「あなたは、音の子だからよ」

「その、音の子って、何なのですか?」

「王子の音源が手違いで、あなたの中に入ってしまって」

「それじゃあ、解体?」

 アイシャが青ざめた。

「私、殺されちゃうのですか」

「違うの、音源を移すのは、たった一度のキスだけでいいのよ」

「キ、キス!」

 アイシャは、つい赤くなってしまった。

「ファーストキスをそういう物のために、王子に捧げなくちゃいけないのですね」

「ファーストなの、それなら一大事ね」

 王妃は、困っている。

「でも、キス一つで大金が手に入るなら、仕方がないです」

「あなたは、貧乏なの?」

「はい」

 アイシャは、迷わずそう言った。

「それは、大変ね」

「私の住む、村一つ貧乏ですから、食料もまかなえなくて、みんな、困っているの」

「……わかったわ、食料や金銭を援助しましょう、それで、それは、急ぐのかしら?」

 王妃は、承諾してくれた。

「心配しないでください、すぐに村は、なくなりませんよ」

「そうなのね、それで、王子は、あなたの事を気に入っているみたいだったけれど?」

「私なんかよりもよっぽどいい子がいます」

「でもね、音の子は、あなただけなのよ」

「……」

 アイシャは、下を向いてしまった。

「確かに私は、音の子でしょう、だって王子の声が聞こえました。中々格好のいい声でしたよ」

「そうなの、良い声なのね、私も聞いてみたいわ、とりあえず、あなたは、今日は泊まって行きなさい」

「はい」

 アイシャは、客が泊まる部屋に案内された。


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