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アイシャは、部屋に戻ってボーとしていた。
(王子、王子)
考えるのは、ベルツの事ばかり。
(やっぱり、だめだ)
あきらめきれない自分に嫌になっていた。
そこにドアを叩く人がいた。
「アイシャ」
その通る声は、ベルツの物だった。
「入るぞ」
心臓がドクドクと高鳴る。
「王子、何用ですか?」
「母様が、失礼なことを言ってすまなかった」
「王妃様は、当然のことを言っただけですよ」
「俺は、アイシャを姫にする」
「何で、私じゃないとだめなの」
「愛のために生きるのは、いけない事だろうか?」
「だめよ」
「アイシャ、君を愛している」
「王子」
(この声で言われて、耐えられないわよ)
「アイシャ、顔が赤いよ」
「きゃ!」
「そんな、アイシャが好きなんだ」
「どんな?」
「いつもの君だよ」
「そう」
いまいちピンと来ない。
「そう言えば、王子も、十六で成人ですわ」
「ああ」
「もう、大人なのですから、国の事も、しっかり考えて生活していかないと、だめなのですよ」
「それより、アイシャの事を考えている」
「えっ、あの……」
戸惑っていると、手を握られる。
「音の子は、運命の子だから、絶対離れないんだ」
「そんなこと、分からないわ」
「絶対に離す物か」
ベルツは、そう言って、頬に口づけした。
「それじゃあ、また来る」
「あっ、あっ、あっ」
アイシャは、赤くなっていた。
(頬にキスするとか、王子って人は……)
ベッドに突っ伏していると。
「アイシャさん」
ベティが入って来た。
「王子は、なんと言っていたのですか?」
「いつも通りよ」
「いつも通りアツアツでしたのね」
「ベティ!」
また赤くなった。
「あら、アツアツですね」
ベティは、ティーポットを持ってニコニコしている。
「いいのですよ、のろけちゃっても」
べティは、楽しそうだ。
「そんなんじゃない」
「ふふふふふ」
ベティの笑い声を聞いているうちに、眠くなってきた。
☆ ♪ ☆
そして、ベルツの成人の日が近づいてきた。ベルツは、相変わらず、毎日アイシャを口説くのに一生懸命だった。
(もう嫌……)
アイシャも、断るのが面倒になってきたころだった。
(こんなに望んでいるのに断るのも……)
そう思いだしたころ。
「ベルツ、オニキス姫はどう、ドロシア姫とか」
王妃がベルツを追いかけて、結婚相手を決めようとしていたのだ。
(こういうのを見ると、断らなくてはと思うわ)
そう思っていると、ベルツが。
「俺は、アイシャ以外の女と結婚する気はない」
ベルツは、そう言って振り切る。
(王子……)
ベルツの意思は固い様で、王妃も困っていた。
「せっかく声が戻ったのに」
王妃は、嫌そうにそう言う。
(ごめんなさい王妃様)
結局、アイシャの何がよかったのか、わからないのである。
(王子は、なぜ、私を選んだのだろう?)
ボーとそれを考えていた。




