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その日から、女の子を巡る日々が始まった。
まず、城下町で、王子のお見合いだと言って、女を集めた。マティスには、音の子の事は、王妃から、伝えてあった。
「王子が何を考えているか当ててください」
「私がかわいい?」
「王子答えは」
『ポーチドエッグ』
「はずれです」
マティスと嫁選びが始まり、焦っているように見せていた。
「しかし、百単語の中からベルツが適当に言葉を選んで、当たる子なんて本当にいるのかね?」
単語にしたのは、分かりやすい上に、当てづらいと言う考えがあるからなのだ。
『当たったら、それが音の子だ』
「まあ、そうだね」
ベルツは、少しばかり人に合うのが苦手だったので、たくさんの人と見合いをして、とても疲れたようだった。
「ベルツ、大丈夫?」
『まあね』
(インク壺と鈴をつけた俺を見て、みんな笑っていたに違いない)
心の中でうじうじしてしまった。
「ベルツ様――」
外から女の声が聞こえる。
「王族になったら、金と権力が手に入るから、お見合いに行ったのに、ベルツ様、全然相手する気なかったわよ」
「そりゃあ、私達庶民ですから」
「でも、私を選んでくれないとか最悪」
「それは、みんな思っているよ」
「口もきけないくせに、偉そうにするなよな」
キャラキャラ笑って女達はいなくなった。
「うわ~、最低」
マティスが引いていると。
『世間の評価なんて、こんなものだ』
そう書いてうずくまる。
「ショックだったのなら、ショックだったって書いてもいいんだぞ」
(……)
羽ペンを取って。
『ふざけるな、この女ども、こっちとしても、お前達みたいなのは、願い下げ何だよ、散れ』
「わ~、本音か、なんかいいな」
マティスが嬉しそうにしている。
この時ばかりは、本音を書いてよかったと思った。
☆ ♪ ☆
次の日もその次の日も見合い、見合いの毎日だった。
「次の女性」
「はい」
「王子の手を握って、王子は何を思っている?」
「ペペロンチーノ」
「王子答え」
『マカロニ』
「違う、だめね」
どうやら、街の女性達は、単語が正解だと言う事をどこかで聞いたのか、単語しか言わなくなった。だが、音の子は見つからず、体力だけが減って行った。
『疲れた』
「そうか、ベルツ、お疲れ」
休んでいると、むなしくなった。
『こんなことしていても、音の子なんて見つかるの?』
「みつかるよ」
マティスは、開き直ってそう言った。
『そんな気がしない』
「大丈夫だよ、ベルツ、みつかる」
頭を撫でられて、安心した。
☆ ♪ ☆
その日の午後、賢者がまた来ていた。
「王子にお見合いをさせるよりも、同じ日に生まれた人を集めた方がいいのではありませんか?」
モンネは、そう言っていた。
「音の子は、同じ時間に生まれた子、つまり、同い年の同じ誕生日の姫ですよ」
「そうか、それならば、見つけられそうだ」
「音の子は、運命の子なのよ、王子の将来の伴侶になる位の」
「おお、そうか」
王とモンネが話をしているのを聞いてしまった。
(運命の子……)
部屋に帰って、運命の子について考えていた。
(かわいくて、優しくて、いい子だといいな)
顔を想像すると、ドキドキする。
「やっ、ベルツ」
マティスが来ていた。
「何を考えていたの?」
『運命の子について』
「音の子の事、キスするんだもの、かわいい子だといいよね?」
(! キス)
すっかり忘れていた。




