表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
音の子  作者: 花言葉
王子暗殺は誰のための物?
18/24

2

 その後、三時間がして、マティスが戻って来た。

「外国の人のアリバイを探し出してきた」

 マティスは、そう言って、資料を見せてくる。

「ポンポル夫人は、特に問題なし、ケルペット夫妻も問題なし、ここで、フリージア姫が謎の外出をしています。そして、ケシャル国は、それを隠そうとしていた」

『それなら、フリージア姫が怪しいのでは?』

「そう思うよね、しかし、俺の予想だと、フリージア姫は、好きな人に会いに行っていたと言う線がある」

『そうか、一度結婚の話をした国だから、チャンスがあるならもう一度と思っているのかもしれないね』

「そうだろ、それなのに、庶民の彼氏と会っていましたでは、話にならないからね」

『そうか、そうなると、犯人は国内の人間かもしれないな』

「みんな、怪しく見えてくるな」

 マティスが考え込んでいた。

『マティス、落ち着いて整理して』

「おう」

 マティスは、また、少し考えて。

「動機を考えようと思う」

『なるほど、そう言えば、会議を止めさせるためかもしれないと言っていたよね?』

「そうだ。それなら、『グリーンボール』だ」

『やっぱり、『グリーンボール』が怪しいよ』

「そうだな」

 マティスは、三日後。

「ベルツ、『グリーンボール』のスパイから、返事があった」

『『グリーンボール』は、いつも通り金を数えて過ごしています』とのことです。

『『グリーンボール』は、本当にお金が好きだな』

「ああ、手紙には、『人より金、神より金』をモットーに作られた集団だと書いてあったしな」

『そうか』

「それで、この様子だと、今ある金の事でいっぱいいっぱいに見えないか?」

『そうだね、金を数えていると言う事は、まだ、増加させるよりも、把握に力を入れているようだしな』

「そうだろ」

 マティスもそう思っていたようだ。

「『グリーンボール』の線は消えた」

『そうだな』

「これなら、次に怪しいのは、フリージア姫になるがね~」

『フリージア姫は、アリバイがないからね』

「でも、この姫、かなり手ごわいみたいですよ」

『何で?』

「恋人が一人じゃないんだ」

『!』

「だから、誰と特定もしづらいし、聞きづらいしでね」

 マティスがため息をついた。

『ケシャルの王につないで、何とかしてもらえばいい』

「しかし、ケシャルの王も国の恥は隠したいだろう」

『そうだな』

「男が遊ぶのはいいが、女はダメだろ」

『確かにな』

 フリージア姫の肖像画を見ると、落ち着いたかわいらしい女性に見えるので、少し驚いているところがある。

「ケシャルは、何か隠しているぞ」

 マティスがそう言って、こっちを見る。

(つまり、ケシャル国が広告の犯人と言う事か?)

 マティスを見ていると、そう思えてくる。

『フリージア姫の手下が殺しに来るって事かい?』

「フリージア姫とケシャル国が犯人なら、国を越えてくると、ばれるだろう」

『そうだね』

「だとすると、会議の日が怪しくないか?」

『……そうか、会議の日に殺しに来るのか』

「そうだと思う、だって、この三日間何もなかったじゃないか、つまり、すぐ決行する気はないと言う事だろう」

『でも、フリージア姫と言うのも、仮説だよね』

「ああ、証拠なんてない」

『それなら、別な人の可能性もあるよね』

「まあな、でも、フリージア姫は怪しい」

『でも、会議にフリージア姫は、参加しないよ』

「そうか、それなら、ケシャルの王が」

『そんなに愚かな人にも見えなかったけど……』

 マティスの意見が正しいのか、怪しく見えてきたのだ。

「それなら、誰が?」

 マティスが慌てていると。

『可能性は低いけど、アイシャも怪しくない?』

「何でだよ」

『私と別れる口実に』

 マティスはベルツを平手打ちした。

「そんなわけがないだろう、心配になりすぎて、彼女まで疑い出したか」

『だって、それなら、納得がいく』

「お前がアイシャちゃんに、はっきり拒絶されればあきらめきれると思っているだけだろう」

『!』

「ベルツは、アイシャとの結婚を認められないと不安になっている。それだけだろ、アイシャちゃんを疑うな」

『ごめん』

「アイシャちゃんに謝れよ」

 マティスは、そう言って、また考え出した。

「そうか、身内の可能性を忘れていた」

『身内?』

「メイドとか、使用人とかかな?」

『そうか、あの人たちが裏切る理由は、何かはある物』

「そうだよ、給料上げろとか、休みを増やせとかな」

『それだったら、一番いいのにね』

「そうだな」

『でも、メイドか使用人が、殺すと書いても、給料も休みも増えないんじゃないかな』

「脅しだよ、脅し、仕事のうっぷん晴らしだよ」

『そんなことする人がいるの?』

「使用人達は、多いから、一人位は、いるんじゃないか?」

 マティスは、呆れたようにそう言った。

『そうか、それなら、狂言か』

「そうみたいだな」

 一生懸命考えていたのが、ウソみたいだった。

「正し、警戒を怠るなよ、使用人なら、殺そうと思えば殺れるわけだから」

『わかったよ』

 本当は、犯人が特定できていないのだが、すぐに結果が出ることでもなさそうだったので、別れた。


☆ ♪ ☆


会議の日が目の前に来たが、犯人は、動く気配すらなかった。

 廊下でアイシャと会い。

『アイシャ、おはよう』

「王子、犯人見つかりましたか?」

 アイシャは、心配そうに聞いてきた。

『犯人は、たぶん狂言』

「な~んだ」

 アイシャは、ため息をついた。

「でも、それなら、私も安心です」

 アイシャは、笑顔でそう言った。

『ありがとう』

 なぜかアイシャにとてもそう言いたくなった。

(声は、出せないから、この一言しか言えないな)

 心の中でそう思っていた。

「私、あの後、ものすごく、勉強がんばったんです。会議でも恥はかきませんよ」

 アイシャは、ガッツポーズをしてそう言った。

『ありがとう』

 もう一度書いた。百回位書きたかったが止めた。

「さて、アイシャさん、ドレスの調整をしますよ」

 ベティに連れられてアイシャは行ってしまった。

(アイシャ)

 変わらない彼女が何よりの救いだった。

「おう、ベルツ」

 マティスが正装していたので、驚いた。

『何があったの?』

「王が、危ないから、ベルツの護衛をしてくれって、その衣装合わせ」

『そうか』

「お前、会議中気をつけろよ、会議中、何か起こるらしい」

(何か、起こる!)

 それは、ベルツが狙われると言う事なのか?

(もしかして、狙われているのは、アイシャ?)

 アイシャの元へ行くとアイシャは寝込んでいた。

『何かあったの?』

「微量の毒が入っていて」

(毒!)

「やめて、言わないで」

「ここ一週間で、二回目です」

『アイシャ!』

「大丈夫、ごく微量で、殺す気なんてないみたいだから」

(これは、警告だ)

 ベルツは、そう思った。

 犯人は、『プラチナ』だ。アイシャを狙うとしたら、それしか考えられなかった。

(やっぱり、アイシャとの結婚は、アイシャを苦しめてしまうのか?)

 目の前の寝込んでいるアイシャを見ると、どうしてもそう思ってしまう。

「大丈夫だから」

『アイシャ! もういい』

「大丈夫よ、明日の会議がんばらせて」

『わかった。それが最後だ。無事に終わらせて、エルガドに帰って』

「……王子?」

 弱気にベルツが立っていた。

(ああ、アイシャを苦しめる位なら、あきらめよう)

 初めてそう思えた。


☆ ♪ ☆


 そして、会議の日の朝、ベルツは、覚悟を決めた。

(アイシャとキスして、お別れしよう)

 それが、一番なのだ。決意を決めて、正装に着替えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ