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音の子  作者: 花言葉
王子暗殺は誰のための物?
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1

「王子を殺す? 王子は何も悪いことをしていないのに」

 アイシャが怒ると。

『しているよ、色々』

 ベルツは、書いて苦笑いした。

「何を?」

『君を姫にしたことも理由の一つにならないかい?』

 アイシャは口を押えて固まった。

「やっぱり、私は、王子に迷惑ばかりかけている」

『アイシャ、でも、俺は負けないよ』

「王子は、やっぱり、他国の姫と結婚なさった方がいいのです。今は、嫌でも、いつか忘れられる」

『アイシャは、逃げる気かい?』

「私は、王子のために……」

 アイシャは、イライラした様子でそう言った。

『私のため?』

 アイシャは、カッと顔を赤くして。

「私は、そんなに強くないの」

 アイシャは、逃げて行ってしまった。

(アイシャ)

 手を伸ばすが、届かない。

(行ってしまった)

 ベルツは、トボトボと部屋に戻った。

 部屋に戻るとマティスが立っていた。

「王子を消したい奴をピックアップしてきました」

 しれっとした顔で、紙を前に出すマティス。ベルツは、書類を読んだ。

『レッドバード』『プラチナ』『グリーンボール』など、王に反するチームの名前が書いてあった。

「そして、ここ」

 マティスが指をさしたのは、「フリージア」だった。

『前、結婚を断った姫』

「そう、ただ、その姫がやっているのではなく、辺りの人だろうね、だから、まとめて姫の名を書いておいた」

『そうか、マティス、ありがとう』

「でもね、その姫の線はかなり薄いよ」

 マティスは、「フリージア」に好きな人がいたことを示す手紙を出した。

「これがあるのに、王子の命を狙うかな?」

『そうだね、おかしい』

 マティスと話をしていると、いつも感心させられる。

「それだけど、『プラチナ』は、フリージア姫に賛成だったらしい」

 そう言って、マティスは、『プラチナ』のページを開いた。

『ベルツ王子を他国の姫と結婚させるべし!』と大きく書かれていた。

「これが、『プラチナ』の国のためにできること一覧に書いてあった」

『それは、やはり、『プラチナ』がやったと言う事になるのか?』

「確信はないが怪しい」

 マティスは困っている。

(また、アイシャに困らせたって言われちゃう)

 もし、『プラチナ』が犯人ならアイシャは、キスをしていなくなるだろう。

「そう言えば、アイシャちゃんは、本当に逃げているとは、思えないけど」

『なんでだ』

「だって、逃げたいなら、無理やりキスすればいいじゃない」

『そうか』

(そう考えると、アイシャは、心のどこかでは、あきらめきれていないのかもしれない)

 そう思うと、ワクワクしてくる。

(例え『プラチナ』が犯人でも、大丈夫な気がする)

 そう思っていると。

「発行元が、グリーンドリームと言う会社の広告で、こちらは経済の悪化をパーム橋のせいにしているんだ」

(グリーンドリーム?)

「気づいたか、『グリーンボール』が偽名を使った可能性があるんだよ」

『そうだね、わかりやすいから、返って怪しいけど……』

「そこなんだ。『グリーンボール』だってそこまで馬鹿じゃない」

『そうだよな』

「ここで出てくるのが『レッドバード』だ。ここは、王族の反対倶楽部みたいなものだ。いつも王族を殺すと言って失敗している連中だ」

『それなら、安全なのでは?』

「そう思うだろ、『レッドバード』だったら一番いいってだけの話さ、だって、あいつら教祖が頭悪いんだ」

 マティスは、苦笑いでそう言った。

「さて、ベルツは、どこだと思う?」

『『グリーンボール』かな?』

「俺もそう思った。だって、手掛かりの中に名前が出てきているのは、ここだけだものな」

 マティスは、大きく手を開いてそう言った。

「俺は、わざと名前を出したと思っているんだ」

『なるほど』

 ベルツも頷いた。

「『グリーンボール』が、どれだけやるか、見せてやる! と言う感じだと思う」

『そうか』

 ベルツは、一つ考えていることがあった。

(どの新聞に載せたかも大事なのでは……)

 資料には、『クッククルー』と言う料理コーナーの広告と書いてある。

(クッククルー?)

 少し不思議な気がした。

(この料理は、アギスト王国で作っている物じゃない)

 南国料理の作り方が書かれている。

「どうした? ベルツ」

 マティスが、不思議そうな顔をしているので。

『ここが怪しい』

 そう言って、羽ペンを『クッククルー』に走らせた。

「何が怪しいんだ?」

『南国料理なんだよ』

「本当だ。香辛料が、外国でしか手に入らない物だ」

『これを載せている時点で、この新聞には、外国の方も、普通に応募ができる事がわかるね』

「確かに……」

 マティスが腕を組む。

「そうなると、外の人の可能性が出てくるか」

 もう一度資料に目を通して、マティスは、部屋を出て行った。

「ちょっと、追加資料を見つけておく」

 そう言い残して。

(誰が犯人でも、よく考えれば、俺に不満があるのだ)

 パーム橋だって、結婚だって国民を考えずにしたわけじゃない。そう考えることもできるが、国民全員が賛成するわけがないのだ。

(もし、パーム橋にお金を出さなければ、国の調和が崩れるのに……)

『グリーンボール』が犯人な場合は、そうなる。

『プラチナ』が犯人だった場合は、アイシャとの仲を裂かれそうだ。

(『プラチナ』が犯人じゃありませんように)

 少しばかり神頼みした。


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