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「王子を殺す? 王子は何も悪いことをしていないのに」
アイシャが怒ると。
『しているよ、色々』
ベルツは、書いて苦笑いした。
「何を?」
『君を姫にしたことも理由の一つにならないかい?』
アイシャは口を押えて固まった。
「やっぱり、私は、王子に迷惑ばかりかけている」
『アイシャ、でも、俺は負けないよ』
「王子は、やっぱり、他国の姫と結婚なさった方がいいのです。今は、嫌でも、いつか忘れられる」
『アイシャは、逃げる気かい?』
「私は、王子のために……」
アイシャは、イライラした様子でそう言った。
『私のため?』
アイシャは、カッと顔を赤くして。
「私は、そんなに強くないの」
アイシャは、逃げて行ってしまった。
(アイシャ)
手を伸ばすが、届かない。
(行ってしまった)
ベルツは、トボトボと部屋に戻った。
部屋に戻るとマティスが立っていた。
「王子を消したい奴をピックアップしてきました」
しれっとした顔で、紙を前に出すマティス。ベルツは、書類を読んだ。
『レッドバード』『プラチナ』『グリーンボール』など、王に反するチームの名前が書いてあった。
「そして、ここ」
マティスが指をさしたのは、「フリージア」だった。
『前、結婚を断った姫』
「そう、ただ、その姫がやっているのではなく、辺りの人だろうね、だから、まとめて姫の名を書いておいた」
『そうか、マティス、ありがとう』
「でもね、その姫の線はかなり薄いよ」
マティスは、「フリージア」に好きな人がいたことを示す手紙を出した。
「これがあるのに、王子の命を狙うかな?」
『そうだね、おかしい』
マティスと話をしていると、いつも感心させられる。
「それだけど、『プラチナ』は、フリージア姫に賛成だったらしい」
そう言って、マティスは、『プラチナ』のページを開いた。
『ベルツ王子を他国の姫と結婚させるべし!』と大きく書かれていた。
「これが、『プラチナ』の国のためにできること一覧に書いてあった」
『それは、やはり、『プラチナ』がやったと言う事になるのか?』
「確信はないが怪しい」
マティスは困っている。
(また、アイシャに困らせたって言われちゃう)
もし、『プラチナ』が犯人ならアイシャは、キスをしていなくなるだろう。
「そう言えば、アイシャちゃんは、本当に逃げているとは、思えないけど」
『なんでだ』
「だって、逃げたいなら、無理やりキスすればいいじゃない」
『そうか』
(そう考えると、アイシャは、心のどこかでは、あきらめきれていないのかもしれない)
そう思うと、ワクワクしてくる。
(例え『プラチナ』が犯人でも、大丈夫な気がする)
そう思っていると。
「発行元が、グリーンドリームと言う会社の広告で、こちらは経済の悪化をパーム橋のせいにしているんだ」
(グリーンドリーム?)
「気づいたか、『グリーンボール』が偽名を使った可能性があるんだよ」
『そうだね、わかりやすいから、返って怪しいけど……』
「そこなんだ。『グリーンボール』だってそこまで馬鹿じゃない」
『そうだよな』
「ここで出てくるのが『レッドバード』だ。ここは、王族の反対倶楽部みたいなものだ。いつも王族を殺すと言って失敗している連中だ」
『それなら、安全なのでは?』
「そう思うだろ、『レッドバード』だったら一番いいってだけの話さ、だって、あいつら教祖が頭悪いんだ」
マティスは、苦笑いでそう言った。
「さて、ベルツは、どこだと思う?」
『『グリーンボール』かな?』
「俺もそう思った。だって、手掛かりの中に名前が出てきているのは、ここだけだものな」
マティスは、大きく手を開いてそう言った。
「俺は、わざと名前を出したと思っているんだ」
『なるほど』
ベルツも頷いた。
「『グリーンボール』が、どれだけやるか、見せてやる! と言う感じだと思う」
『そうか』
ベルツは、一つ考えていることがあった。
(どの新聞に載せたかも大事なのでは……)
資料には、『クッククルー』と言う料理コーナーの広告と書いてある。
(クッククルー?)
少し不思議な気がした。
(この料理は、アギスト王国で作っている物じゃない)
南国料理の作り方が書かれている。
「どうした? ベルツ」
マティスが、不思議そうな顔をしているので。
『ここが怪しい』
そう言って、羽ペンを『クッククルー』に走らせた。
「何が怪しいんだ?」
『南国料理なんだよ』
「本当だ。香辛料が、外国でしか手に入らない物だ」
『これを載せている時点で、この新聞には、外国の方も、普通に応募ができる事がわかるね』
「確かに……」
マティスが腕を組む。
「そうなると、外の人の可能性が出てくるか」
もう一度資料に目を通して、マティスは、部屋を出て行った。
「ちょっと、追加資料を見つけておく」
そう言い残して。
(誰が犯人でも、よく考えれば、俺に不満があるのだ)
パーム橋だって、結婚だって国民を考えずにしたわけじゃない。そう考えることもできるが、国民全員が賛成するわけがないのだ。
(もし、パーム橋にお金を出さなければ、国の調和が崩れるのに……)
『グリーンボール』が犯人な場合は、そうなる。
『プラチナ』が犯人だった場合は、アイシャとの仲を裂かれそうだ。
(『プラチナ』が犯人じゃありませんように)
少しばかり神頼みした。




