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助手席  作者: 狸
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今まで

「杉本さん。」


「ここにいるってことは卒業したんだね〜。」


「そうですね。なんとかできました。」


「そうかそうか、良かったね〜!本当にお疲れ様でした。」


そう深々と頭を下げる杉本さんを見て心が締め付けられた。


「こちらこそ今まで本当にありがとうございました。」


そう負けじと深々頭を下げる。


「そうだ、実はもし卒業式後に会ったらと思って手紙書いてきたんですよ〜。」


精一杯明るくそう言うと

少し照れ臭そうに


「えぇ、ありがとう?なのかな。」


と大きな手は小さな手紙に添えられた。


「これでもう立派な卒業生か〜。無事故を願ってるよ。一年以内に事故しちゃうと教習所に報告くるからね。」


そういたずらっ子の様にはにかんでいう杉本さん。


「じゃあ、一年間は運転しませんw」


「それだと次運転する時怖くなっちゃうでしょ!ダメです。しっかり乗ってください。」


「えぇ〜。」


こんなふざけたやりとりももう最後なんだ。

そう思うと自然と涙は出ず、開き直ったかの様に明るく振る舞えた。

この時があるのは過去に十分すぎるほど悩んだり悲しんだりしたからだろう。


「また教習所に来ることある?」


「ん〜。卒業したら遠くへ引っ越すのでそれはなさそうですね〜。」


決して強がりなんかではなかった。事実今いるところから遠く離れた地で就職するためもうここには来ないことは分かりきったことだった。


「そっか〜。もしまた教習所に来たら声かけてね。世間話ぐらいなら全然付き合うから。」


ニコニコとしている杉本さんにどこか罪悪感を感じた。


「そうですね。」


そう言うとチャイムが鳴った。


「あ。そろそろ行かないと。本当にお疲れ様、今までよく頑張ったね。」


そう言う杉本さんはどこか寂しげで

でもそう見えたのはただの願望だったのかもしれない。


「じゃあ、気をつけて帰ってね。」


いつもの様にそう言った杉本さんに

私は咄嗟に近づいてこしょこしょ話をする様に口に手を当てた。

すると杉本さんは私が話しやすい様にかがみ、耳を寄せた


「ずっと好きでした。」


今までひたすらに隠してきた言葉だった。

杉本さんには私の態度でバレバレだったのかもしれなかったけど

それでも言わずにいた

言葉が

想いが見境なく溢れ出た。


照れ笑いの様に息を吐いた杉本さんは


「うん。ありがとう。」


とだけ言った。


短かった様で長かった教習期間

これで良かったのだろう。

これが誰も傷つかない綺麗な終わり方だったのだと

思い込み

私はバスに乗り込んだ。


と言うことで、ついに完結しました。

と言ってもふわっとした終わり方で更新も飛び飛びで申し訳ございませんでした。

暇つぶし程度にと言っていましたが、ここまで長い間本当にありがとうございました。

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