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助手席  作者: 狸
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大袈裟

また同じバスに揺られ教習所に着く。

慣れた手つきで予約券を取り出す。


合格発表後も空いてる時間があれば教習所へ行き学科の授業をちょこちょこ受けていた。

第2段階では決まった学科を受けなければ技能の予約が取れないというシステムだった。

あいにく私は技能から先に終わらせるタイプではなかったので次々に学科を受けていた。


あの日杉本さんに言われるがまま取ったはいいものの時間帯のせいもあって外は暗かった。

できたら午前中の方が安心できたのにな。

開始5分前に車の横で杉本さんが来るのを待つ。


チャイムがなると杉本さんは辺りを見回しながらこちらに向かってきた。


「こんばんは〜。」


明るく笑う杉本さんの口から白い息が出ていた。


「とりあえず寒いだろうから先に乗っちゃおっか。」


そう言われ助手席へ乗り込む。


「初めての路上で緊張してる?」


「そうですね。外も暗いし。」


「だろうと思ったよwでも今日はね学科で勉強したと思うけど車の中を一緒に見てもらうから外で走ることはないと思ってて。」


「そうなんですね。」


「今ちょっとよかったって思ったでしょ。」


「バレました?」


「バレバレだよ〜。じゃあ車移動させるからシートベルト締めてね〜。」


そういうと杉本さんは駐車場を出て少し広い場所で車を止めた。」


「じゃあ橋元さんトランクのところに立って。」


言われるがまま突っ立っていると


「あ。ごめんちょっと寒いからマフラーしたまんまでいいよ。僕取ってもいい?」


「あ。それぐらい自分で取りますよ!」


「いいのいいの。ごめんね〜。」


そういうと彼は後部座席に置いておいたマフラーを手に取り


「はい。」


と手渡した。


「じゃあ気を取り直して。ここの教習所の車はハイテクなんだよ〜。」


「そうなんですか??」


「トランクのところにエンブレムついてるでしょ?ちょっと手をかざしてみて。」


言われるがままに手をかざすとトランクが開いた。


「え!?すご!!すごいですね〜。」


まさかと驚いた表情で杉本さんの方を向くと


「まぁ、嘘なんだけどね。僕がリモコン押したの。」


とおどけたようにリモコンをひらひらとさせていた。


「あ!騙したんですね!ひどい!!」


「ごめんね。こういう冗談も挟みつつじゃないと退屈だろうから。」


2人で笑いあっているこの時間がずっと続けばいいのに。

そんな想いは心の隅にそっと置いて


「先生!真面目にやりましょw」


「そうだねそろそろ教官にならないとw」


そういうと杉本さんはトランクを閉めて


「じゃあ開け方は知ってる?」


「一応」


「開けてみて。」


エンブレムの下のちょっとした出っ張りを押す


「おぉ!」


「大袈裟ですよ。」


「だね。じゃあ前来て。」


そう言ってボンネットを開ける。


ボンネットの中に何があるかを隅から隅まで教えていく。


「これが...なんだったっけ。」


「え。」


「うそうそこれ引き抜くから見てみてね。ここに印がついてるの見える?」


「...」


「もうちょっとこっちきて。」


そう言い杉本さんに近づくと彼は私に見やすいようにと目線の高さに合わせてくれた。


「見えた?」


「はい。」


そうやって杉本さんの横で色々説明を聞いていると


「時間に余裕ができたな。せっかくだから路上でぐるぐる回ってみる?」


「え。そんなことして大丈夫ですか?」


「大丈夫大丈夫。教習所の外周とおんなじだから。まぁ、路上だから他の車もいるだろうけど教習所とあまり変わらないよ。」


そう言われ助手席に促されるまま乗り込んだ。

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