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助手席  作者: 狸
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技能試験に落ちた後必ず一回技能を取らなくてはいけなかった。

私は申し訳なさから担当ではない人で予約を取った。


時間になって前に現れたのは中肉中背の40代ぐらいの男性教官だった。


「こんにちは〜よろしくお願いしま〜す。」


「よろしくお願いします。」


「今日はね大体試験で通る道のりを走ってみてきになるところがあればそこを重点的にっていう流れになるよ。」


「分かりました。」


「本番どうだった?」


「緊張しましたね。」


「やっぱりそうか。普段は全然できるのに試験になったら緊張してっていう子多いからね。」


「そうなんですか。」


「じゃあ運転変わりまーす。」


そういって運転席を降りた教官と交代で運転席に座る。

言われた通り場内をぐるぐる走る。

この時緊張は一切私の中にはなかった。

ただただ言われた通り走った。

50分はあっという間ですぐに技能が終わったように感じた。交代して助手席に座ると


「緊張全然してなかったね。全然問題もないしスイスイいってた印象です。」


「はい。」


「本番の緊張感が邪魔したって感じやね。次は慣れてるしいけるんちゃうかな。」


「だといいですね。」


「担当杉本やろ?」


「え?あ、はい。」


「あの子に関しては心配してないってこないだ言ってたで。」


「あ、そうだったんですか。2回目はじゃあ失敗できないですね。」


「プレッシャーかけたわけじゃないからね。彼はそう思ってるから思う存分楽しみながらやってええと思ってるってことやから。」


そんなことこのタイミングで言われても嬉しくはなかった。

正直に喜べないのは昔から顔色を伺って生きてきたからなのだろう。

出来るだけ争いを避け面倒なことから逃げてきた代償は

自らを息辛くさせただけだった。

心配してないということはそこまで期待もしていないということなのだろうか。

それともできると思われているのだろうか。


今の結果を見ていい方に受け取ることなんてできなかった。

周りでは技能試験で落ちた人なんて聞いたことがなかった。

大きな目で見ればいるのは当たり前だがどうしても自分の世界にしか目がいかない。

技能試験は一発で合格するのが当たり前の世界だった。

多分自分は落ちこぼれなのだろう。


次で合格しなければ。

勝手に自分で肩の荷を重くして自分の首を絞めていく。

人生においてこんな小さなことで生きにくくする自分をいつか捨てられる日が来るのだろうか。

色々失敗してもいいじゃないかと思える日はいつか来るのだろうか。


私は彼に言われるがまま次の試験日の予約を取った。

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