表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平民を守りし最後の盾  作者: 喉元思案
1/5

プロローグ

 ――地獄絵図。

 その言葉がピタリと当てはまる空間だった。

 ある者は赤い水を垂れ流しながら地に伏せ。

 ある者は火に包まれながら踊り狂い。

 またある者はその場に膝をつき横たわる人を揺らしながら泣き叫んでいた。


 逃げ惑う人々。くすんだ、家で見たものと比べればいかにも安物だと分かる装飾も何もない剣を振りかざしながら駆ける者。


 どうしてこうなっているのだろう?

 どうして夜のはずなのに、こんなにも明るいのだろう?

 どうして昼のように喧騒としているのだろう?


 私は外に出たことがなかった。何をするにしても召使の人がしてくれて、私はただ家の中で勉強するだけで。つまらない、退屈な毎日だった。そんな私を楽しませてくれたのは本だった。本の世界はどれも色鮮やかな世界で。私は外を見て見たくなった。


 そして今。なぜか召使の人が慌てていて、私のことを見ていなかった。その隙に玄関の扉を開き、初めて目にした本物の街は、本の世界とは全く違った。

 目の前に、鮮やかな赤に彩られた剣を持つやつれた男がいた。男と面識はない。けれど、男は私をこれでもかというくらい怒りに満ちた形相で睨んでいた。


 剣が振り上げられる。普段飾られているだけのものをどうやって使うんだろうと思っていると、それは私に向かって真っすぐ振り下ろされた。

 向かってくる剣。当たる。そう思ったとき、目の前が真っ白に染まった。

 男の人だった。真っ白なマントと煌めく白銀の髪。とても、綺麗だと思った。今までに読んだ本のどの世界よりも。


 それからその人は、私の前で赤や緑、青や黄色といったいろんな色を見せてくれた。

 私はその人から目が離せなくなり、虜になった。

 私はこの人のようになりたいと強く願った。十二歳のある日のことだった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ