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吉買通り商店街  作者: フミ
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濃密フェロモン

♩アイ ハブ ア ぺ〜ン♩アイ ハブ ア ペ〜ン♩アイ ハブ ア ペ〜ン♩アイ ハブ ア ペ〜ン♩


「ミッキー君、ずっと この繰り返しなのかな?」

挿絵(By みてみん)


「くぅー!(まず絵がすげえ ダメだぁダメだぁ)」


「どうしたね?」


「いや なんでも無いです。

今 この曲をかけるのって 魚蔵の旦那はどう思います?」


「ふふふ、勇気がいるね。」


「やっぱりそうですよね。

それで ですね、どうやったら カッコ悪くならないか考えて、アイ ハブ ア ペ〜ンだけリピートしたらいいかなって 編集してみたんです。

でも やっぱりダメですね。」


「それじゃあ ペンと何を組み合わせたら面白いか考えてみようじゃないか。

八百昌(やおまさ)は どう思う?ふふふ。」


「ハブ!ハブは一匹 五千円だったのが、今は三千円!」


「くぅー!(ダメだぁ笑っちゃダメだぁ)」


挿絵(By みてみん)

「ふふふ、違う八百昌。

この歌みたいに 片手にペンを持って、もう片方にリンゴを持って突き刺すみたいに、ペンともう一つの何を組み合わせたら面白いか という話しなんだ。」


「ハブ!ハブは奄美大島に25万匹、人口は12万人!ダブ!ダブルスコア!」


「くぅー!(話しが通じねえ)」


挿絵(By みてみん)

「ふふふ、分かった分かった、ハブは持ってるという意味で、蛇のハブじゃないが もう蛇でいい。

ところで八百昌は この歌のタイトルは知ってるのか?」


「pppppapppppapppp!」


「くぅー!(多い!本当にそう思ってるのか、口が言う事をきかないのか。)」

挿絵(By みてみん)

「ふふふ、分かった分かった、じゃあaとpは何の頭文字か?」


「アーポー、パインナーポー、アンダスタン?」


「くぅー!(いきなり発音がネイティヴ!)」

挿絵(By みてみん)


「ふふふ、分かった分かった…」


「ワラァ、シュワルツネェガァ、ミッション イン パッセボゥ!」


「くぅー!(止まらない!)」


挿絵(By みてみん)

「ふふふ、分かった分かった…」


「aはアナコンダ!」


「くぅー!(言いたい事を言いたい時に言ってるだけだ!そしてまた蛇だ!)」

挿絵(By みてみん)

「ふふふ、分かった分かった、それじゃあ この歌は誰が歌ってるか?」


「ダイゴ!ダイゴが歌ってる!」


「くぅー!(多分パンチパーマにキンキラキンの映像を見ても そう思ってる!)」

挿絵(By みてみん)

「ふふふ、分かった分かった、じゃあ DAI語で 今の気分を言ってみてくれ。

OKN、O俺の発音KかなりNネイティヴ、みたいな感じに、分かるよな?」


「う、うううう、難しい…」


「くぅー!(魚蔵の旦那 そりゃ酷だよ。)」

挿絵(By みてみん)

「DATTE ORE ATAMAGA BAKA DAKARA!」


「くぅー!(全部ローマ字にしちゃった!音だけで聞いたのになぜか分かった!)」

挿絵(By みてみん)

「ふふふ、八百昌は やはり面白い。」


カランコロン


「マスターお願い、ツケで何か食べさせてぇ、お腹空いて死にそうなのぅ。」

挿絵(By みてみん)

「亜希ちゃん!どうした?」

「あ、亜希ちゃん!」

「いらっしゃい…亜希さん?!この人が?

ああ!危ない!」


「ああ もうダメ、ベンド ニーに着いたら安心しちゃって もう立ってられない。」


ポフン


「ああ…ありがとうマスター…あ?!あれ?!キミ誰?!」

挿絵(By みてみん)


「マスター出掛けてていないんです。

昨日から ここでバイトやってる 佐藤 実樹貴です。

もしかして 僕の前にバイトしてた亜希さんですか?」


「う、うん…わたし 永島 亜希っていうんだ…

魚蔵の旦那、八百昌さん 久しぶり 元気?」


「倒れちゃうほど お腹空いてるんですね。

今 何かつくりますから 掛けて待ってて下さいね。

カウンターじゃなく、横になれるからボックス席のソファーにしましょう。」


「う、うん、一人で歩けるよ…うう…暑い…うわっ!わたし今まで革ジャン着てるのも気付かなかった…」


「そんなにヘトヘトだったんですか?

こんな暑い中 革ジャン着てたら熱中症になっちゃいますよ。

ハンガーに掛けておきますから脱いで下さい。」


「そんな すまないよ、自分でやるよ、勝手知ったる店なんだからさ。」


「いいから、お節介の面目を潰さないでやって下さい、ね?」


「うん 分かった、やさしいんだねキミ。」


「そうでもないですよ、うわっ!重い!これschottじゃないですか、こんな厚い革ジャン着てたら暑い訳ですよ。

女の人はもっとペラッペラのやつ着てるもんだと思ってた。」


「へへっ、わたしは本物が分かる女なの。

キミもschott持ってるの?」


「高校生には高くて手が出ませんよ。」


「キミ高校生なんだ、大人びて見えるよ。」


「睦美さんとは同級生なんですよ。」


「へぇ睦美と、世の中狭いね。」


「本当そう思います、昨日今日と…あれ?これ…ふんっがっ…ああ…なんだこれ?

目まいがする…ああ…」

挿絵(By みてみん)

「ど!どうしたの?大丈夫?」

「大丈夫かいミッキー君!」

「ミ!ミッキー君!」


「だ、大丈夫です!ちょっと今話しかけないで下さい、出ちゃいます!

大丈夫!本当 大丈夫ですから、今 お水持って来ますから。」


♩ゆらゆらゆ〜れろ〜♩


「んぐっ、んぐっ、んぐっ…プハァ〜

ああ 生き返った!

ありがとう、こんな 美味い水初めてだよ。

あのさ…もしかして わたしの革ジャン臭かった?

3日間 着たきりだったんだよね。」


「ダメ!今その話しダメ!出ちゃう!

ぜんぜん臭くなんかない!」


「なら いいんだけど…何が出ちゃうんだろ?

なんか 恐くて聞けないよ。」


♩ゆらゆらゆらゆらゆらゆら れろれろれろれろれろ♩


「ふふふ、また八百昌が止まらなくなってる。

しかし ミッキーは素早い、亜希ちゃんを支えるのも早かったし料理も早い。」


「早いだけじゃないですよ、とっても美味しいですから。

(いや 匂いを嗅いだだけで出ちゃいそうになるんだから早いか…

それにしても 凄い匂いだったな…

もう一回…いや ダメだ、気が変になる 犯罪者にならない自信が無い!

それに あからさまに嗅いだら怪しまれる。)」


「あのさ、ツケで食べさせて貰う身分で言うのもなんだけど、早く食べたいなぁなんて…」

挿絵(By みてみん)

「あ!はい 今持って行きます!」


「これって おかゆ?いや違うの、別に不満ってワケじゃないんだけど、もっとガッツリしたものが…」


「倒れちゃうほどお腹空いてるなら、重い物は食べたらいけませんよ。

ただの おかゆじゃないから まずは一口食べてみて下さい。」


「うん…ああああ!美味しい!何これ?!

シソの香りと何だろうこれ海の香り、ああああ!ウニが出て来た!

贅沢ぅ!ああ もう無い、ねえ おかわり頼める?」


「ふふふ、ウチのウニだよ。」


「ありますけど、次は もっとゆっくり食べて下さいね。」


「分かったよ、だから早くお願い。」


「(やべぇ、男勝りな感じの人が 早くお願いって やべぇ、また出ちゃいそうだよ。)

ええと、お味噌汁も美味しいですから 飲んで待ってて下さい。」


「うん、期待しちゃうよ…ああ!美味しい!これ普通じゃないよ!

どうやったら こんな味が出せるの?」


「麺つゆを隠し味に入れたんです、時間がなかったからなんですけど、今度 機会があったら本格的にダシを取ったヤツを飲んでもらいたいな。」


「これよりも美味しいの?!凄い!ツケでいいなら いつでも来るよ。」


♩アイ ハブ ア ハブ♩アイ ハブ ア アナコンダ♩ヘイ!スネーク!スネーク!♩


「本当 八百昌さんは自由だよね。

はあ、食った食った!ありがとうミッキー!

あのさ、わたしもミッキーって呼んでいいよね。」


「もちろんですよ、ところで亜希さんは なんで3日も帰らずにフルートの練習してたんですか?

大学の合宿かなんかだったんですか?」


「ああ、睦美のヤツが言ったのね。

別に合宿ってワケじゃないんだけど、なんかさ なかなか上達しなくて 煮詰まっちゃってさ、

凄い このままじゃいけないって気持ちになっちゃってさ。

山籠もりってやつよ、ヒーローモノで必殺技を編み出すのって山籠もりじゃん。

フルート以外に何もない環境になったら、何か見えるのかもって、大学の裏山にあるロッジに行ったのよ。

あそこ大学の敷地で 申請すればタダで借りられるのよ。」


「一人でですか?」


「そう一人、それで笑っちゃうのよ。

わたし 道に迷っちゃってさ、山ん中グルグルグルグル回ってロッジに着けず終いなの!

そんで二泊三日の野宿旅行よ!

笑っちゃうでしょ?あはははあははは!」


「女の人一人で そんな靴で 山に入って野宿してたんですか。」


「そうよ、さっき言ったじゃない。

ちょっと 何 恐い顔してんのよ。」


「亜希さんは自分を何だと思ってんですか!!」


「何よ急に大きな声出して、止めてよ。」


「人は!やっちゃいけない事をやってしまったら!やられちゃいけない事をされたら!

その人の人生も!その人を大切に思っている人の人生も全部 終わっちゃうんだ!」


「わたしのやった事が そんないけない?

誰に迷惑かけてるワケじゃないじゃん。

わたしの事なんか知らないくせに知ったふうな口きかないでくれる?!」


「あわわ!ミッキー、亜希ちゃん 落ち着いて。」


「魚蔵の旦那、わたしは落ち着いてるわ、この子が勝手に盛り上がってるのよ。」


「盛り上がってるなんて言わないで下さい!僕は頭に来てるんです!

確かに僕は亜希さんの事は良く知りませんよ。

だけど 睦美さんが どれほど心配してたかは知ってます!

亜希さんに万が一の事があったら、睦美さんの人生も終わっちゃうって言ってるんです!」


「はあ?なにそれ?私が死んだら睦美が後を追うって言ってんの?

あの子は そんな弱い子じゃないわよ。」


「命があったって心が死んでしまう事があるんだ!!

大切な人がいなくなったら、本当の意味で前向きになんて生きて行く事なんて出来ないんだ!

いくら時間が経っても癒えない傷があるんだ!!

僕より年上のくせに そんな事も分からないのか!!」


「分かるわよ!!大切な人がいなくなった気持ちだって分かるわよ!

睦美がどれほど心配してくれてるかだって分かるわよ!

だけど お母さん死んじゃってから、わたしもいつか死ぬんだって、同じ病気にかかるんじゃないかって、

夢を叶える前に死んじゃうんじゃないかって!

恐くて仕方ないの!やりたい事を!行きたい所に行くの我慢するのが 息苦しくて仕方ないの!!本当に溺れてるみたいに息苦しくなるの!!

そんな気持ちが あんたに分かるって言うの?!」


「うううううううううう!!正確には分からない!!

ぬうううううううううああああ!!」


「ふん 偉そうな事 言って結局そんなじゃん。

わたしの気持ちなんて 誰にも分かんないのよ。

チョー不愉快、あんたがバイト辞めるまで わたし ここには もう来ないから。」


「うううううううううううう!!」


「亜希ちゃん ミッキー君を見なさい、ミッキー君は必死に分かろうとしてるよ!」


「ふんっ!」


バタン!グチャガチャン!


「うううううう!魚蔵の旦那、八百昌さん、すいませんでした。

俺 頭に血がのぼっちゃって、本当すいませんでした。」


「い、いいと思う、ミッキー君。

ハブ…いや違う、ミッキー君は初対面だけど亜希ちゃんを本気で心配してる、だから怒る権利はある。

後は亜希ちゃん次第、真心の分からない子じゃない、きっとまた来るから心配いらない。

ハブ…いや違う、革ジャンも置いて行ってしまったし。」


「あっ!本当だ…

もう一回 嗅ごうなんて考えてませんよ。

いや、違いますって、だから今日はもう終わりです。

いや、変な事に使ったりしませんよ、だって あんな分からず屋なんか好きじゃないし。

…一回だけ嗅ぎます!だからお終い!また今度!」

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