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吉買通り商店街  作者: フミ
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古いラジオ

♩裸電球がきれ〜てしまあったの〜♩


挿絵(By みてみん)

「こ、この曲 ラブユー東京って曲ですよね。」


「そうよ、私のテーマソングってところかしら。

場末のスナック感バリバリでしょ?

私の店のコンセプトは ザ・場末のスナックなの。」


「場末だなんて!恵さんみたいな綺麗な人がやってる店なら、それだけでプレミア感バリバリですよ。

パンツだってバリバリに…いや 聞かなかった事にして下さい。」


「あらやだ、シモも得意なのね、いいえ聞かなかったわ。

あなた若いくせに 女に正面きって綺麗だなんて言うスキルあるのね。

やだわ 嬉しいじゃない、でも相手を見て言わないとダメよ。

あなた みたいな人は そう簡単に綺麗とか好きとか言っちゃダメなの、分かる?」


「わ、分かりません、何で僕が。」


「ふふん、とにかく ここぞという時にとっておくものなの。

今は 分からなくてもいいわ、でも今 分かる事ないかしら?」


「なんか ラブユー東京とメロディは一緒でも、歌詞が違う気がしますけど。」


「そう!そう!よく分かったわね、これはラブユー貧乏って曲なの。

俺たちひょうきん族って番組の企画から生まれた替え歌でね、ラブユー東京のロスプリモス本人が歌ってるのよ。」


「あっ!それなら知ってます、オクレ兄さんですよね。

小さい頃DVDで見たました、ミスターオクレさんが 貧乏エピソードを発表するやつ。

そういえば こんなBGMだった!

それにしても凄い歌詞ですね、

小さかったから 裸電球とか肉の入ってないすき焼きの わびさびが分からなかった……」


「どうしたの?」


「いえ、何でもないんです。

ちょっと 小さい頃のこと思い出したんです。

そう!そう!そんな事より、できたら この音源 欲しいんですけど。」


「いいわよ、その代りに朝まで付き合ってもらうわ。」


「お酒は二十歳になってから!

ミッキーには俺の店じゃ牛乳しか飲ませないし、外にも連れ出させないぞ!」


「うるさいわね勇人(はやと)、誰も朝までお酒 飲むなんて言ってないわよ。」


「もっとダメだよ!俺の店のモンに手ぇ出すなら 俺が相手になるぞ!」


「あら、勇人が相手してくれるなら それでもいいわよ。」


「ああ!そういう意味じゃない!亜希ちゃんの事だってスカウトしてたの知ってんだぞ!」


「亜希ね、もったいないのよね あの子、私なら いい女に育てられたわ。

人間としての深みがあれば、演奏だってもっと良くなるのに。」


「ゆっくりでいいんだ!亜希ちゃんもミッキーも時間をかけて俺が面倒見る!」


「聞いたわよ、途中で放り出したら承知しないわよ、私みたいにね。」


「おい!おい!おい!ミッキーの前で!」


「あの、お二人がどんな仲なのか興味ありましたけど、怖くて聞けなくなりました。」


「じゃあ聞いて、こいつったらひどいのよ…」


「おい!おい!おい!ただの幼なじみだ!」


「幼なじみって何よ!あんなことやこんなことしておいて!」


「してないよ!」


「してないのが問題なのよ!」


「あわわわわ!!」


「クダ巻いて ないで 自分の店 開けろよ!

もう いい時間だぞ!」


「今夜はミッキーと飲むの!私の店が閉まってたら 皆んなこっち来るわよ!

どうせ あっちもこっちも 来るヤツ同じなんだから!」


「あわわわわ!!」


「同じじゃないだろ!お前目当てのイケ好かない奴が こっち来たらどうするんだよ!」


「来たら来たで 私を取り合って戦ったらいいじゃない!

あははははは!なんか 可笑しくなってきちゃった!

こんなの私のキャラじゃないわ!

ミッキーと知り合って テンション上がっちゃったみたいね。」


「あの…」


「ああ、良かった、恵さんって 大人の女性って感じします。

喧嘩してても 落とし所を用意してあるんですもの。」


「異議あり!異議あり!大人のものか!

小学生の頃から少しも変わらん!」


「あの…」


「マスター 大人になって下さい、そんなだから今回 マスターの絵が無いんですよ。」


「あははは!喧嘩じゃないのよミッキー。

勇人は私のストレスのはけ口なの。

そして私は勇人の性のはけ口、あははは!」


「おい、おい、もう勘弁してくれよ。」


「あわわわわ!」


「あの…」


「あれ?空耳かと思ったけど…」


「あの…こんばんは!入ってもいいですか?!」


挿絵(By みてみん)

「ああ!睦美ちゃんじゃないか!ごめん ごめん。

カウンターでいいかい?何か飲みなよ、睦美ちゃんは紅茶だったよね。」


「あの、すいませマスター 大丈夫です、すぐ行きますから。」


「そんなこと 言わないで睦美ちゃん、私の隣で良かったら座って。

ごめんね、うるさくしてたから入りづらかったのね。

それにしてもしばらく見ない内に綺麗になったわね、亜希は元気?」


「恵さん こんばんは、そんなことないです。

恵さんみたいな綺麗な人に言われても、大谷翔平に球速いねって言われてるみたいです。」


「あははは!相変わらず ややこしい例えするのね!

そういえば そういうのミッキーに似てるわね。

この子の隣なら座る?可愛いでしょ?睦美ちゃんと同い年じゃない?」


「初めましてミッキーさん…ああああああああ!!実樹貴君!!」


「え?は、初めまして。」


「ちょっとミッキー、名前呼ばれておいて 初めましてが成立してないわよ。

睦美ちゃんミッキーとは どういう関係?」


「クラスメイトです。」


「へえ、そうなんだ、世の中狭いね。

昼間はミッキーと猛弘(たけひろ)が知り合いだったし。」


「本当?そうなの?まあ この商店街は皆んな知り合いみたいなものだけどね。

ちょっとミッキー 凄い汗よ。

ははん、クラスメイトにバイトがバレたと思ってるのね。

安心しなさい、睦美ちゃんは チクったりしない子よ。」


「多分 違います。

実樹貴君 私の事 知らないんです。

実樹貴君 クラスの誰とも話さないし…」


「あわわわ!」


「本当?意外ね、内気な子じゃないのに。

逆に本当に面白い子よ。」


「私も知ってます…」


「あわわわ!むつみさん 今日は何のご用事ですか?!

こういった店に出入りする感じには見えませんけど!」


「ははは!睦美ちゃんは ここでバイトしてくれてた亜希ちゃんの妹なんだよ。

こんな可愛いい子がクラスにいるのに気付かないなんて、やっちゃったなミッキー!

はい 紅茶、飲んでってよ。」


「もう、マスターまでやめて下さい。

あの ありがとうございます、マスターの紅茶美味しいですし、折角ですから頂きます。」


「あの、用事は?…」


「ミッキー魂胆が見え見えよ。

早いこと この場を切り抜けたいのでしょうけど、まずは一杯飲んでからよ。

ね、睦美ちゃん。」


「いえ、ゆっくりしていられないんです。

お姉ちゃんを探しているんです、こっちには来てませんか?」


「探してるって!帰って無いのかい?!

でも亜希ちゃんは鉄砲玉だからな、よくある事だろうに。」


「それでも私 心配なんです…3日も帰って無いのは初めてで…」


「3日も?!最近見てないなあ。

心当たりは探したんだろう?よし!今から探しに行こう!

ミッキー一緒に来てくれ、恵は商店街の皆んなに連絡して集めてくれよ。」


「ちょっと待って!場合が場合だから 内緒って言われてたけど白状するわ!

亜希 3日前に ここに来て、食べ物ごっそり持って行ったの。

大学のロッジにこもって誰とも会わずにフルートの練習…いいえ 特訓って言ってたわね。」


「マスターすいません!本当に馬鹿な姉で!本当にごめんなさい!」


「あははは!道理で食材が少ない訳だ、いいんだよ、亜希ちゃんはうちの子だからさ、いいんだよ。」


「はい!一件落着ってことで、もう 遅いから 僕 むつみさんを送って行きます!」


「あら?それも危なくないかしら?」


「いや、それはないな。

ミッキー今日は上がって睦美ちゃんを送って行ってくれ、今日はごくろうさん、明日は好きな時間においでよ。

睦美ちゃんいいかな?」


「はい!実樹貴君がいてくれるなら心強いです。」


「うふふ 睦美ちゃん嬉しそうね。

またねミッキー、今度は私の店にいらっしゃい。」


「はい!恵さん おやすみなさい!

マスター、その…なんだ…見つけてくれて ありがとうございます!お先失礼します!」


「うん、また明日♩」


♩七色の虹が〜消えてしまったの〜♩


挿絵(By みてみん)

「あっ 実樹貴君が歌ってる。

ラブユー東京ね、恵さんの歌。」


「えっ?俺 歌ってた?頭の中だけで歌ってたつもりなんだけど、口に出してたんだね。

なんか 恥ずかしいな…」


「恥ずかしくなんかないわ、だって とっても上手だもの。

それと一人称が 俺 になってる、うふふ。」


「えっ?そう?意識してなかったよ。

なんか かっこ悪いね、相手 見て態度変えてるみたいでさ。」


「そんな事ないわ、ベンド ニーにいる時の実樹貴君 可愛かったもの。

それに 今は私を守ってくれる強い人って感じがする。

私の事 知らなかったのが気まずかったんじゃなくて、遅い時間にスポーツバーに居る私を、一刻も早く家に帰したかったんでしょ?」


「うー、むつみさん 持ち上げ過ぎだよ。

なんで俺なんかの事 高評価するのさ。」


「秘密、だって私の事 覚えてなかったんだもの。」


「うー、なんか したっけか俺、確かにクラスの半分以上の名前と顔は一致しないけど、

面と向かって 話したら忘れないはずなんだよな。」


「面と向かってないわ、お話するのも今日が初めて。

ねえ、どうして実樹貴君は学校では、その…あんな感じなの?」


「うー、あいつらと関わってもメリット無いって言ったら打算的で やな奴だよね。

とにかくさ、関わっても ロクな事が無いんだよ。

スクールカーストって言葉 持ち出したら、分かり易くて きちんと分からない、になっちゃうけど、

あいつら 序列ばっか気にして息が詰まっちゃうんだよね。

お前は このタイプで、このランクだよなって 当てはめて来るんだよ。」


「凄い!」


「えっ!何が?」


「私も何となく感じてた事を きちんと言葉に出来るんだもの。

でも 私が感じてるより ずっと強く実樹貴君は感じてるんでしょう?

だって実樹貴君は どうやったって どこにも 当てはめられないもの。」


「うー、褒められてんのかな。」


「褒めてるの!実樹貴君は自己批判 低過ぎよ。

それと私の名前は!永島 睦美!実樹貴君 ひらがなで むつみって呼んでるでしょ?

フォーエバー アイランド 親睦の睦にビューティフルよ、覚えてくれた?」


「あははは!凄え!睦だけ英語にならなかった!覚えたよ睦美さん。」


「さん なんかつけなくていいわよ、フルーツ ウッド ノーブル君。」


「あははは!俺の名前も英語にしてくれたの?

貴をノーブルって訳すのセンスある!

本人はノーブルなんかないけどね。

でも 呼び捨ては無理だよ、今まで女の人 呼び捨てにしたこと無いし。」


「彼女も呼び捨てにしないの?」


「あははは!あははは!彼女なんていないし、いたことも無い!」


「うそ!実樹貴君 絶対モテるし、恵さんと仲良くしてた、嫌な言い方だけど 女慣れしてる感じしたもの。」


「あははは!あははは!モテるのは協調性があるヤツだよ。

恵さんが大人だから 合わせてくれたんだし、おばあちゃんが料亭やってるから、交友関係広くて 人慣れしてない訳じゃないんだ。」


「そうなんだ…」


「?!!」


「どうしたの?いきなり恐い顔して…」


「ごめん 恐い顔してたかな?

よく聞いて、夜遅くなったら この道は通らないで、暗過ぎる。

遠回りでも吉買通り商店街を辿って明るい道で帰って。」


「分かった、でも どうして?」


「嫌な感じがする、俺も毎日 通る道だけど 今日は何だか 嫌な感じがするんだ。

細かく言わなくても分かるよね、睦美さん頭いいから。」


「それなら実樹貴君も通らないで、えっと…実樹貴 魅力的だから。」


「ぷっ!それってアレ? 大丈夫だよ俺 足速いし、こう見えて凄く強いから。」


「その過信が危ないの!」


「分かった 通らないよ、でも俺の家 すぐそこなんだよね。

あっ!気にしないで ちゃんと家まで送るから。」


「分かってくれたなら いいわ、それと気にしない、私の家もすぐそこ。

あっと言う間に着いちゃった、実樹貴君といると楽しいんだもの。」


「えっ!本当?どこ?あっ!知られたくないなら大体でいいよ。」


「そんなはずないわ、ここよ ここ、目の前。」


「ええええっ!一軒挟んだご近所じゃん!」


「うふふ、私は知ってたわよ、毎朝 あのアパートから凄い速さで走って来るもの。」


「うー、じゃあ一人暮らしなのも知ってるとか?」


「やっぱり そうなんだ、なんでも一人でやってるなんて凄いって思ってたの。」


「うー、パンツのガラまで言い当てられそうだから もう行くよ、おやすみ睦美さん!」


「おやすみ実樹貴君!今日はありがとう。それと一つ言い忘れてた、ヨシカイ通り商店街じゃないの。」


「えっ?じゃなんて読むの?」


「キチガイ通り商店街!おやすみなさい!」


「ええええええええっ!!」


♩荻上チキ セッショントゥエニートゥー

今晩は荻上チキです 南部広美です♩


「荻上チキがやってる もう10時か、TBSラジオは朝から晩まで面白いよな。

テレビなんて必要ないよな、つーかテレビ無いんだけどね。

高校生の一人暮らしは贅沢できないとはいえ家電がラジオだけってのは質素過ぎかな。

古いけど ワイドFMも入るし、デザインもレトロかっこいいんだよね。

今日はさ、いろんな事があったよ 、藤郷さんに 魚蔵の旦那、恵さんに睦美さん、

マスターはさ どこかパパに似てるんだよね。

楽しかった分 疲れたな、おやすみパパ…

ーーーーー

ん?!あの暗い道、睦美さんのお姉さんも通るよな、亜希さんだっけ…心配し過ぎか、大学生って言ってたし…


♩靴下の穴の 穴の気持ちが 何故か無理なくわかる私の涙♩


「あの子達 もう家に着いた頃かしら?」


「うん…ああ 話をすればだ、睦美ちゃんからライン来たよ、無事 着いたってさ。

そう 言えばミッキーの連絡先 聞いてなかったな。」


「ねえ どう思う?」


「何がさ?」


「ミッキーの事よ、絶対に目を離しちゃダメよ!」


「分かってるさ。」


「昔のこと思い出したって時の あの子の顔…

それに 睦美ちゃんを送って行くって時の、なんて言うか 守るっていう…そう 強過ぎる意思よ。

勇人の若い頃を思い出しちゃった、なんだか あなた達良く似てるわ。

似てるからって、あなたと同じ事をすなんて言えないけど…でもやっぱりやりそうだわ。

表に出さないけど、社会のモラルなんか屁とも思ってない、自分ルール100%人間よあの子。

私 あんな想いするの もう嫌だからね。」


「流石だね、あれだけのやり取りで見抜くなんてさ。

分かってるよ、同じ轍を踏ませないのが大人の仕事さ。」


「勇人ごめん、嫌な事思い出させちゃったかな?

歳をとったのかしらね、あの子達が可愛いくて仕方ないのよ。」


「悪いことじゃないよ。


なんかシリアスな感じだけど、肩肘張らずがコンセプトなんで その様に、それではまた 近い内に。」

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