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願いの証明ー2014,5年の少年少女たち  作者: 釈書院ねずは
第1回戦 青い果実と弾けるポップコーン
7/13

朝食

 匠一が庭の接しているリビングの大窓を開けると、日が昇りきっていない早朝の、それも冬の肌を刺すような寒気が体を包み込む。

 暖かい室内と外の寒暖の差に体を震わせ、つい目を閉じてしまう。

 数秒後、寒さに慣れ目を見開くと薄暗い藍色と暖かい東雲色に彩られた寒空の下、健太が竹刀を振りながら声を上げ突進を繰り返していた。

 その表情は真剣そのものだった。しばらくして、1セット終わったのだろう汗を首にかけたタオルで拭く健太に声をかける。


「おはよう朝から早いね、剣道の練習かい? 打突系の練習って誰かに向かって練習するんだと思ってたんだけど違ったかな?」


 声をかけると、一瞬驚いた表情になったあと、匠一の方に歩いて来る。


「いや、合ってるよ。切り返しは二人組が基本だけど、兄貴ここにいねぇし、筋トレも素振りも終わったから仕方なくやってんだよ」

「そういってもまだ6時だよ。何時からやってたの?」


 そう言って、リビンクにある掛け時計に目を向ける。


「5時半。日課だから起きちまうんだよ。ミイラと金髪は?」

「見てないからまだ寝てるっぽいね。それと女の子に対してミイラはダメでしょ。金髪ならまだしも」

「伝わったからいいじゃねぇか……わーったよ、じゃ根暗でいいや」

「うーんまあ、さっきよりマシかな。朝食は?」

「いや、まだだけど」

「今から作ようと思うけど要望とかアレルギーある?」

「っあ、なら肉、肉がいい! ステーキステーキ!」


 要望を聞く匠一に、健太は練習の時の真剣な表情とは異なり年相応に元気良く答える。

 健太の要望につい苦笑いになってしまう匠一。


「朝からステーキは重いよ、それに女の子は嫌がりそうだしね」


 そういうとハイテンションだった健太は一気に不満顔になる。


「えー、呑気に寝てる奴らなんてほっといてさっさと作って、さっさと食っちまおうぜー」

「ダメ、君だって自分のご飯がなかったらいやだろう? 終わったんなら、2人を起こしてきて。そのうちに朝食適当に作っておくから」

「ちぇー、わーったよ。そのかわり肉なー」


 そう言い残すと、2階で寝ている2人を起こしにいった。


「……さて、何を作ろうかな」




「匠兄〜、根暗連れてきたぜ〜肉〜飯〜」

「……ふぁ〜、朝から引きこもりを起こさないでほしい。私は夜行性」


 朝食を並べ終えたところで、ちょうど健太が蛍を連れリビングに入ってくる。寝癖がついたままだが、包帯はしっかり巻かれていた。

 ”顔は寝ぼけてるけど、しっかりと巻かれてる……きっと寝ぼけててもできるくらい、習慣化しちゃったんだろうな”

 匠一がリビングと一体となっているキッチンから蛍を見てそんなことを思っていると、腹を空かせた剣道少年と蛍が朝食が並べられたテーブルにつく。

 テーブルには香ばしく焼かれたベーコンにスクランブルエッグ、目玉焼き、サラダ、トーストと一般家庭でよく見る朝食が並べられていた。


「おおー、なんかうまそうだな。料理できたんだな匠兄」

「その『できた』は料理がかい? それとも、そのものにかい?」

「前者。自分からやるってんだから、ある程度はできなきゃおかしいだろうが」

「ふむ、それもそうか。それと匠兄って、僕の呼び名?」

「そうだよ。それがどうかしたかよ?」

「いや、てっきり僕も酷い呼び名されるのかなぁって思ってたからさ」

「あー、俺様だって無差別にいってんじゃねぇよ。ただ、匠兄は気骨のあるやつだと感じたから、親しみこめてんだよ」


 そう言われ心当たりのない顔している正一に、健太は流し目で眠たそうに目をこする蛍を指す。

 それで匠一は昨晩の錯乱した蛍のことだと気づく。


「いやあれは、ただ泣いている子をなだめただけだって。それより、望月さんは?」

「ああ、金髪は何度扉叩いっても起きなかったからとりあえず根暗だけ連れてきたんだよ」

「わかった、なら先食べてて。僕が起こしに行ってくる」

「おうわーった」


 そういうと未だ寝ているお嬢様を起こしにリビングを出、2階に向かった。

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