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願いの証明ー2014,5年の少年少女たち  作者: 釈書院ねずは
第1回戦 青い果実と弾けるポップコーン
5/13

ルール説明

「よーし、これで全員名乗ったな。じゃ、これから争奪戦の詳細を説明するぜ」

 

 スミスの気合いを入れ直す声。


「まずは聖座争奪戦はついてだ。まず、この戦に参戦する少年少女は代行者と称する。理由は後で言うぜ。

 試合形式は基本4対4のチーム戦の戦闘だ。

 勝利条件は敵陣の核の破壊、もしくは相手代行者の気絶または死亡、降参による退場が全員なされること。

 敗北条件はこのチーム全員が退場すること。または、」


 スミスが4人の背後にある、健太の肩ほどの高さの台座に乗せられた赤い核に接近して腰を下ろす。笑いながら姿勢悪く片膝を立てて座る姿はヤクザの親分を思わせた。

 4人の代行者と3柱の神々は赤い核とスミスを囲む。


「その部屋の核が破壊されるか、だ」

「要するに、敵全員倒すか相手のその赤い玉を壊せばいいのね。簡単じゃない」

「おう、そういうことか。いや、俺はそのキラキラが言わなくてもわかってたけどな!」

「なんですって、このツンツン頭! 絶対分かってなかったでしょ! それに仕事から直なんだからこの衣装はしょうがないでしょ!」

「はいはい、今説明中だから喧嘩しないでね」


 再び喧嘩する二人にまた匠一が間に入って、物理的に仲介する。


「続けていいか? 勝利条件を3日間にこのどちらも満たされない場合、代表者による決闘により決着をつける。んで、戦闘の戦略性を高めるために自陣の改造はありとする」

「自陣の改造〜?」

「この殺風景な平野を?」

「そうさ……フレイム」

「うううおおぉ!!! 了・解・だぁ!!」

 

 スミスの言葉にどこか訝しげの、先ほどまでは喧嘩していた健太と寧々。それでも不敵な笑みを消さないスミスはフレイムに頼む。すると、フレイムの了承する返事と共に、その小さい身体から火の波動が放たれる。

 4人は一瞬身構えるが、波動は幽鬼のように4人の身体を透過する。代行者たちは予想と違い身に異変はないと感じ、目を開くとそこには一面、いや、

 −−四方上下、立方体を織り成す内側の六面が火の海に染まる。感嘆に染まる……3人の表情が。


「なんのつもりッ!! 私にこんな光景を見せつけるなんて! 嫌がらせ! 私は、私は間違っちゃいなかった! だったらどうすれば正解だったの! 

あの時、私は……私はあああぁぁ!!!」


 蛍だ。目を大きく見開き、歯ぎしりさせている。先ほどまでの鬱々とした雰囲気から一転、明らかに殺気立った姿は鬼を思わせた。

 しかし、殺気立っているが表情は怒気というより、困惑や逃避といった色が濃く現れていた。顔が赤く錯乱している。蛍の瞳はここではない、何処かを見ていた。

 健太と寧々はその殺気だった雰囲気に怯えどうすることもできずにいた。しかし、蛍の瞳の中にあるそれが悲しみと寂しさだと読み取れた匠一は蛍の殺気に一切の物怖じせず接近し、


「大丈夫、大丈夫。……だから落ち着いて。落ち着いて。君はここにいる。だから、ここを見て」


 優しく抱きしめた。泣く子を優しくあやすように言い聞かせ、背中をさする。


「私は! ただ、祐華と一緒にいられれば良かったのに……どうして、どうしてよ………」


 抱きしめられた蛍は次第に荒げた呼吸を落ち着かせ、目に正気が戻っていくるのがわかる。殺気立った空気が和らぎ、目尻に涙が溜まる。


「はぁ…はぁ…はぁ………ッ!!」


 落ち着き正気を取り戻した蛍。しかし、先ほどとは違う理由で赤面する。


「なッ、なッ、なッ!」

「さっきより落ち着いたみたいだね。良かった、うん、良かった」


 匠一は落ち着きを取り戻したことを確認すると蛍を放す。

 赤面する蛍に心底良かったと笑う匠一。呆気取られる健太と寧々。バツが悪そうに頭を掻くスミスが竹刀の神竹刀に向き直る。


「竹刀……頼む」

「心得た」


 竹刀が一拍する。火に塗りつぶされた面に先ほどのフレイムと同じように竹刀から波動が放たれる。すると、火の海だった面が再び一転、火が消え、そこかしこにタケノコが生え瞬く間に成長し竹が生い繁る。見渡すと今度は深緑の竹林の中だった。


「あー、悪い。なんか特大の地雷踏んずけちまったみたいだな」


 そう言って頭を下げるスミス。


「……私も、その……悪かった。いきなり取り乱して」

「おう、なら仲直りだな。……それより、おいフレイム……なんで止めなかった?」

「ははは、まさかこいつの炎嫌いがここまでとは思わなかったのだ! まあ、許せ!」

「許さん」

「……許さない」


 悪びれも無く笑顔で許しを請うフレイムに殺意を抱いたのは2人だけではないはず。


「まあ、一悶着あったが続けるぜ。戦に勝てば1ヶ月のインターバルを得て次の戦だ。トーナメントだから負けらんねぇぜ」

「スミス、僕らは何回勝てばいい?」

「12回だ」

「……1ヶ月を12回、1年?」

「そうだ、この争奪戦は1年かかる。だが、下界の時間は止まってるし、お前さんたちの肉体は成長することはねぇ。浦島太郎の逆みたいなことにはならねぇから安心しな」


 言葉を一旦切るスミス。


「次の代行者の説明に移るぜ。

 この戦に参戦する奴らには契約した神から神力の一部、神権を分け与えられる。本来は聖座争奪戦は神々の戦だったんだが、事情があって神同士が直接ぶつかるのはタブーになったんだわ。だから」

「願いを餌に僕たちにやってもらおう、ってことだね」

「言い方は悪いがそういうことだ。だから、代行者って称してる。そんじゃ」


 先回りした匠一の言葉を肯定するスミス。すると、スミスが赤い、ソングが黄色い、バンブーソードが深緑色の、フレイムがスミスよりも更に濃い紅色の光球を身体の心臓あたりからそれぞれ取り出す。


「お前らに神の力の一端を与えるぜ」

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