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願いの証明ー2014,5年の少年少女たち  作者: 釈書院ねずは
第1回戦 青い果実と弾けるポップコーン
4/13

自己紹介

 『箱庭』の世界と同じく立方体の、しかし一辺が1キロメートルしかない小さな世界。

 『箱庭』のように建築物があるわけでもなく、夜空が彩られているということもない。強いていえば地面の茶色と壁の色の青色、それと中央の台に安置された核の赤色しかない。生まれたばかりのような空間。

 しかし、今はそれ以外にも手のひらサイズの4柱の神々と向かい合うように4枚の白い扉。

 その扉から4人の人物が出てくる。

 ほどよく鍛えられた赤みがかった黒髪の少年。ミニドレスを纏った金髪の少女。ツンツン頭の剣道着を着た背の小さな少年。紅いロングコートを纏ってフードを被った包帯グルグル巻きのミイラ。

 参加者がお互い目を合わし、ツンツン頭の少年が一言。


「この戦いってミイラも参戦できたんだ……」


 溢れるようにもれた。その声は当人にもちゃんと聞こえていたらしく、


「……失礼、私はちゃんと生きてる」


 ミイラのような包帯グルグル巻きの人物が睨むように返す。これにツンツン頭の少年も睨み返す。


「なんだよ、ミイラっぽいからミイラって言って何が悪いんだよ」

「……これは包帯」

「怪我人かよ。怪我したんならここじゃなくて、病院行けよ」

「……余計なお世話。バカそうな子供に言われる筋合いない」

「確かにばかそうよねー」

「んだと、こら!」

「はいはい、出会って3秒で喧嘩はやめようね」


 熱くなったツンツン頭の少年が金髪の少女とミイラに詰め寄るのを黒髪の少年が止める。


「おいおいおい、出会って早々揉めんなよ。猿とか猫じゃあるまいし」

「心と心のぶつかり合い……つまり、それは心の声! ならばよろしい!」

「ううおおおぉぉ、青・春・だーーーー!!!」

「……先に進めよう」


 呆れた声のスミス、なぜか少年を肯定して扇を向けてくるドレスを纏った女神、唸りを上げる薄手のゆったりした長ズボンと上半身裸の男神、目をつぶり静かに佇む着物に帯刀した男神。


「いいからちゃっちゃと自己紹介しちまえよ、話が進まねぇ」

「じゃあ、トップバッターはもらうわ。だってアイドルだし! 知名度的にアタシが一番だもの!」


 スミスの促しに答えたのはミニドレスを纏った金髪の少女だった。金髪の少女は自信満々の笑みを浮かべ、決して高いとは言えない胸に手を当てる。


「っあ、でもみんなアタシを知ってるなら自己紹介なんていらなかったわよね!」

「「「…………」」」

「……っえ、ちょ、なんで無言なのよ、あんた達! アタシよ、アタシ!」

「アタシアタシ詐欺?」

「違うよ黒髪の優男! 月島彩華よ! 今期待の新人アイドルの!」

「知らねー、俺テレビ見ねぇし」

「僕も紅白歌決戦見るまで知らなかったなー」

「……知ってたけど、二人にノッた」

「あんたら、いい加減にしなさいよ! ……って後半二人は知ってたんじゃない!」

「いや、だって詳しく知らないし」

「……本名望月寧々。14歳。中二。望月財閥の令嬢にしてアイドル。1年前に芸能デビューと同時にCDデビューしてわずか1ヶ月10万枚の大ヒット。それ以降もヒットを連発。可愛いらしいルックスと甘い歌声で人気急上昇。バラエティーに引っ張りだこ。ドラマにも出てた」

「よし、優男あんたは許しましょう。けど、ミイラ男あんたはダメね、ギルティ。……って、なんでそんな詳しく知ってるのよ?」

「……インドアなめんな。あと、私は女」

「「ッ!!」」


 ツンツン頭の少年と寧々に衝撃が走る。黒髪の少年は薄っすらと気づいていたらしくあまり驚いた様子はなかった。

 固まった2人をおいて包帯を巻いた女性はそのまま続ける。


「……火神蛍。13才の中一。インドア派。嫌いなものは辛いものとウザいものと下衆いもの。以上」

「って、それだけかよ! いや、もっとねぇのかよ!」

「……無い」

「はぁ、もういいよ。……じゃあ次は俺様な!」


 火神蛍の口調は自己紹介というよりもプロフィールを読み上げる淡白な感じだった。

 対称的にツンツン頭の少年は親指で自分を指差し、熱く語り出した。


「俺様は岩倉健太! 今は小六だけど、いつか剣道でスゲー範士になる男だ! 今だったらサイン描いてやらないこともないぜ!」

「ッは! このアイドルを差し置いてサイン? バッカじゃないの、そんなの私の足元にも及ばないわ!」

「アイドルなんてやってるナンパなやつに言われたくねぇ!」

「なんですって、このガキ!? 今、全世界のアイドルを敵に回したわよ!」

「っへ、どうとでも来やがれ! 俺様は痛くもかゆくもねぇし!」

「はいはい、喧嘩は止めて僕の自己紹介してもいいかな?」

「「……フン!」」


 自慢げに語る健太に張り合う寧々。睨み合った二人の間に手を叩いて黒髪の少年が仲介する。


「僕は矢吹匠一。中二だけど、ほとんど海外を回ってるから日本の流行とか結構疎いかな。だから、そこらへんは教えてくれたら嬉しいな。よろしく」

「おう、よろしくな!」

「いや、まともそうにさらっと笑顔で言ってるけど、中二で海外って、どんな高校生よ」

「……矢吹匠一……矢吹匠一? どっかで聞いたかが…………まあ、いいか」


 ジト目で突っ込む寧々。蛍は匠一に名に首を傾げたが思い出せなかったので気にしないことにした。


「おう、やっと終わったか。次は俺たちだな」


 スミスの言葉に小さき神々と向き合う4人。さっきまでとは変わり、空気が少し張り詰める。それもそのはず。

 小さいとはいえ、1柱だけでも存在感を放つ神。それが4柱。人間、ましてや、まだ子供の4人が気を持ち直すのは当然である。


「俺はスミス、『鍛冶』の神だ。矢吹と契約している、まあよろしくだ」


 最後であった矢吹とは逆に最初に名乗るスミス。スミスは自信げに金槌を担いで笑っている。

 

「次は私が。私は『歌唱』の神、ソング。そこの可憐な娘、寧々と契約を交わしました。よしなに」


 ドレスを身に纏った女神、ソングが優雅に一礼する。育ちがあるとするならば、それだけで良いと感じ取れるほど、淀みのない綺麗な一礼だった。


「ううううおおおおおぉぉぉぉ!!! 次は俺だなあぁ! 俺は『火炎』の神フレイム! 俺と契約を交わしたのは火神だ! よろしく頼むぞおおぉ!!!」


 燃えるように熱い、文字通り火が出るほど熱苦しい男神。匠一は横を見ると、火神が自分の契約した神であるのに嫌そうな顔をしていた。表情から心底苦手であることが伝わってくる。


「拙者は『竹刀』の神竹刀でござる。まあ、そのままでござるな。契約した童は健太。以後お見知りおきを」


 フレイムとは打って変わり、物静かに竹刀が姿勢よく会釈する。


「よーし、これで全員名乗ったな。じゃ、これから争奪戦の詳細を説明するぜ」

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