友達は大切に
この話ゎ……友情の大切さをぉ考ぇるぉ話…………ぅそ……
今日は平日だ。
高校2年生の初冬、受験まで1年と少々。僕は有名国公立大学(あえて名前は伏せる)に受験するつもりなので、授業は真剣に聞いていなければいけないのだが。
「…………」
今日の僕はずっと、双葉さんを目で追っていた。授業はほとんど真面目に聞いていない。よくこれであんな成績がとれるものだ。やはり怪しい。
「どしたべ綴原。珍しく不真面目に授業さ受げてー」
「四國……。いや、気にしなくていいよ。女子高生を観察してるだけだからさ」
「十分おかしいべ」
こいつの名前は四ッ谷 政國。あだ名は四國。
数えるほどしかいない僕の友人の一人である。
「女子高生を観察というと齟齬をきたすな。ただしくは、ひとりの女子高生を観察している、だ」
「なんら言い訳になってねーべ」
「いちいち難しい野郎だな。思考するな。感じ取るんだ。フィーリングだ」
「なおのこと訳わがんねーべ」
「というかお前の喋り方どうにかならんのか? 鼻につくんだが」
「しっつれーだべ! 大事な故郷の言葉だべさ!」
「お前は四国出身だろーが」
「四国じゃねーべ関東だべ!」
「東北じゃねぇのかよ」
故郷はどうした故郷は。
「とにかくもう話しかけるな。女子高生観察に集中できないだろうが」
「授業に集中してけろ……」
四國の捨て台詞を無視して僕は双葉さんの観察に戻る。
ふと、双葉さんの様子がおかしいことに気が付いた。なんだかさっきよりもじもじしている気がする。
もじもじというか、もぞもぞというか。
一体どうしたんだろう。具合が悪いのだろうか。頬も少しだけ赤い気がする。
次の休み時間にでも訊いてみるか。
すると、丁度いいタイミングで授業終了のチャイムが鳴った。
僕は少しだけ勇気を奮って、双葉さんに話しかける。
「双葉さん。少し具合が悪いように見えるけれど、大丈夫?」
「…………」
双葉さんは頬を赤くしたまま、何も言わずに背を向けた。
なんだ? 照れているのだろうか。僕の事が好きなのか? 彼氏がいるのに。
いや彼氏はまだ定かじゃあないか。
この後、授業が終了するまで双葉さんはこの調子だった。身体でも壊したのかな。
護衛という意味も兼ねて、僕はその日も、彼女を尾行した。