綴原宗士の見解
でぃあぼろです!
この小説はチャット友達との共同計画、題して『ふたばproject』作品のひとつです。
ふたばprojectとは、双葉 夏希という少女を主人公にしたパラレル作品をそれぞれ別の作者が描くといった旨の計画です。
興味を持っていただけたならば、WAIWAI通信さん、音風奏太さんの作品も見てもらえると嬉しいです。
この日々を生き抜くためには刺激が必要だ。
少なくともこの僕、綴原 宗士はそう考えている。
物語の主人公といえば、いつも自分の人生に退屈していて、自分をつまらない人間であると揶揄する。
そこに、日常からの脱却を願っているかどうかの違いはあるけれど。
しかしそれでは駄目なのだ。主人公ならば主人公らしく望まずとも非日常は外部からやってくるのかもしれないが、奇しくもここは現実だ。自分から何か刺激を求め、行動しなければならないのだ。
けれども、いざそれを実行した人間は?
例えば悪魔を召喚するために黒魔術に手を出したりとか。例えば、周りには見えず自分だけに見える少女と話しているフリをしたりだとか。
駄目だ駄目だ。
これではまるで変人だ。
厨二病という忌々しい言葉によって社会的奈落に突き落とされてしまう。
ここいらで少し、自分語りをしよう。
僕の生態に興味を持つ人間なんか砂粒程度にもいないとは思うけれど。
名前は先程言ったとおり、綴原宗士だ。綴原というのは母方の苗字で、旧姓は群雲。父は若くして死別した。母は子供を養うために海外で考古学関係の仕事をしており、家に帰るのは年に二週間程度。そのため僕は姉と二人で暮らしていた。
僕は今年の春に高校二年生になったばかりの男子高校生。
クラス内ヒエラルキーの中層部をキープしており友達も数える程度だがいる。背はさほど高くはない。体重も相応だ。運動はあまり得意ではないが、勉強においては有名国公立大学を狙える程度に優秀だ。
そんな絵にかいたような勉強小僧、それが僕の実態だった。
そんなごく普通の僕は今、女子高生をストーキングしている。
変な意味じゃない。いや変な意味ではあるのだが、不純な理由じゃあない。
ストーキングといったって顔が好みの女子をつけ回している、というわけでは決してない。
僕はさながら物語の主人公のように非日常を追い求めていた。自分から非日常を作り出す作戦には失敗してしまったので、非日常を運んできそうな人間にスポットを当て、徹底的に観察することにしたのだ。
その結果が今の僕であり、そんな僕が追う彼女こそが、僕の求める“非日常”になりうる存在なのだ。
なぜそう思ったのか。それは、彼女が完璧すぎるからだ。
常に成績はこの僕を上回っているし、体育の成績だって女子の中で一番高い。おまけに、人を外見で判断するのはどうかと思うが、彼女は容姿端麗なのだ。テレビに映る人たちと比べても十分に張り合うほどに。
おまけに絵も上手いし、字も綺麗だ。歌だってきっと上手に違いない。
しかし、完璧すぎて逆に彼女の周りには人が寄ってこない。例えるなら、宇宙ステーションに咲く花。高嶺の花すぎて誰も寄ってこない。自分ながら秀逸な喩えである。
彼女は奇妙な人間だった。はっきり言ってしまえば、気持ちが悪いのだ。どうやったらそんなに完全になれるのか。彼女を見るに、やはり神は平等なんかじゃないということが痛いほどわかる。
だからこそ僕は、暴いてやりたいと思ったのだ。
彼女の正体を。彼女の弱点を。彼女の生態を。
双葉 夏希の本当の姿を。