PROLOGUE:変わり果てた街。
ためしに作ってみました。元ネタ的なものは『ダークナイト』や特撮系です。
2012年7月24日。その日から近畿地方は変わったといっても過言ではない。そうして、もうひとつの凄惨な事件の混乱に乗じ、いくつもの犯罪組織が近畿に、特に大阪で様々なことを支配し始めた。
警察も初めは対応していた。だが、決定的な戦力の差があった。警察が銃を取り出すと、マフィアたちはショットガンを取り出し、次にSATを出すと、奴等は機関銃で応戦した。そして、無所属の犯罪者も犯罪を繰り返し、市民には眠れぬ夜が続いた。
そうしていくうちに近畿園の警察たちにも変化が生じた。犯罪組織との汚職だ。汚職の味を占めた警察たちが組織を牛耳り、逆らえば死ぬ。やがて心ある警官の士気も下がり、本来の機能を失っていった。
それから5年。大阪という街は世界でも屈指の犯罪都市へと変化してしまった。
◇2021年10月4日。大阪府堺市泉北。午前1時45分
爆発音が鳴り響く。爆心地は大阪でも比較的大きな銀行だ。基本的には銀行の近くには警察署があり、事件がおきれば直ぐにでもパトカーが追いかける。本来ならば。だが、この街の4分の3はどこかの犯罪組織が買収されており、警察官の殆どが見てみぬ振りをした。この街ではよくあることだった。
煙の中から一台の車が飛び出す。青い色の車でナンバープレートは外され、塗装も所々剥がれている。
「ひっひっひっ! 楽な仕事だったぜ・・・・・・。本当にこの街はいい稼ぎ場だな!」
運転をしている男は下衆な笑い声を上げる。
「確かにな。あとはこの物と金を渡せば、今日の仕事は終わりだ。俺たちのバックにはあの『百頭』がいる。警察も判事も手は出せない寸法だぁ」
「本当にな!」
車に乗っている二人の男が愉快げに話しあう。彼等にとってこの街は只の稼ぎどころでしかない。こうなってはもう誰に止めれない。検事も保険会社も買収されているこの大阪では誰にも犯罪者は止められなかった。
「・・・・・・ただ」
助手席に座っていた男が沈鬱な面持で、手元にある金の入ったアタッシュケースを見る。
「あぁ? まだあの噂気にしてんのか? 馬鹿か。あんなアメコミ仕込みの話なんざあってたまるか。それともあれか? 俺らの頭の上から蝙蝠や蜘蛛でも降ってくんのか? 本当に怖いのはそんなじゃなくて、『グール』だろ。あれのほうが俺としちゃあよっぽど恐ろしいぜ」
もう一人の男は声を震わし小ばかにした風に、助手席の男に語りかける。
助手席の男は目線を上げ、元気よく声を出す。
「そうだな! んなこと絶対にありえないよな!」
「あったりまえだ! 『シルバー』なんていう気違い、いー
『る。残念ながらな』
「「はっ?」」
二人は咄嗟に声のしたほうを振り返る。同時に窓ガラスが割れる音が耳に入る。甲走る音とガラスの破片のせいで、男はついつい耳と目を塞いでしまう。
男はほんの一瞬だが確実に見た。助手席の男の頭を掴もうとしていたあの銀と黒の手を。全身に鳥肌が立つ。
(まさか、ほんとにいるってのか!? 『噂』通りに!!)
困惑と恐怖が同時に男を襲う。頭の思考はうまく出来なくなり、一気に沢山の情報を詰め込まれたかのように頭部が重くなるような錯覚に陥る。
車のクラクションが耳を聾する。どうやら、どこか自分の身体の部が当たった所為でクラクションを思いっきり鳴らしたようだ。男は助手席の男の安否を確かめるために見向く。
いない。どこにも。
鳥肌が立ち、「ひっ!」と情けない声を発しながら顔が恐怖に歪む。
(いた! ほんとにいやがった! 殺される! 殺される!!!)
男が聞いた噂はこうだ。
曰く、シルバーと呼ばれているのはその姿が銀甲冑に似ているから。
曰く、その姿を見たものは必ず投獄される。
曰く、恐怖を操ることができる。
曰く、空を飛ぶことができる。
曰く、怪力で何人もの人間を持ち上げれる。
曰く、シルバーはとくに強淫魔や強盗犯に容赦がなく、惨殺も厭わない。
実際のところはこれらの噂が本当かどうかわからない。だが、男を恐怖で震えあがらせるのには十分過ぎる。
車のドリンクホルダーに入れておいた熱々のコーヒーが倒れ、男の肘にかかる。恐怖と熱さへの驚きが入り混じった声を振りたてた。
また、ガラスが割れる音が耳に入る。次に、頭が生温かい何かに触られる感触を感じる。おそらく、腕だろう。腕の本人は男にも何となく理解できた。
◇2021年10月4日。大阪府堺市泉北。午前1時47分
ビルの屋上。そこには不気味に銀色の甲冑のようなものが浮かんでいた。銀色のそれは動き出す。聞こえるか聞こえないほどの電子音が鳴る。
『俺だ。今、二人の強盗を捕まえた。警察に伝えといてくれ』
『了解! 番号は何時も通りでいいよね!』
『ああ、頼む』
先ほどの電子音が鳴り、通信が途絶える。右腕に取り付いているスマートフォンのような機械―『スマートシステム』―を弄る。ある程度の操作を終えると腰にかけてある銃を取り出し、今立っている建物より低いビルに向かって狙う。
後ろにほんの少し、顔を向ける。二人の男が縄で締め上げられている。車で逃走していたやつらだ。軽く二、三発ほど殴ると簡単に口を割ってくれた。
どうやら大阪にいる中国系マフィアの一つ『百頭』と国際的麻薬組織が、麻薬取引をするための金のようだ。その内の二割―二割でも何千万単位だが―をこの二人が受け取る予定だったらしい。
捜査が必要だ。
どうやら二人は場所の指定はされていなかったようだ。『百頭』の経営する銀行に金を預けろ、という指示しかされていない。
あいつらがどこで何をしているかというのを探る必要がある。
幸い、一年前と違って警察にも味方が着実に増えている。なによりも自分には二人の頼れる仲間がいる。
眠気が彼を襲いマスクの中で欠伸をしてしまう。頭に酸素が足りていないらしい。それと、しっかりとした睡眠も。今日は朝から今の時間まで動き回っていた。そろそろ基地に戻って休養を取らないと身体を壊してしまう。
もう一度、銃の焦点を照らし合わせようとする。
何処から悲鳴が聞こえてくる。
声から察するに男性のようだ。大方、酒の飲みすぎで終電に間に合わずに街のチンピラに金をせびられているのだろう。
このまま放って置いてもシルバーには全く関係の無いことだ。だが、彼は決してそのようなことはしない。例えどれだけ身体が泣き喚いても行くだろう。
もう一度、照準を変える。先ごろまでの場所とは違う、悲鳴の方へと向ける。
銃を撃つ。だが、この銃はただの銃ではない。中に強力なワイヤーを仕込んだ俗に言う、ワイヤーガンという銃だ。
ワイヤーの先端に付いたフックが屋上の柱に引っかかる。シルバーがワイヤーガンについてるボタンを押すと、空を飛ぶかのようにワイヤーに引っ張られていく。
シルバーは耳の部分にあるボタンに触ると、電子音が鳴る。
『なんでしょうか?』前とはまた違った声。対照的に落ち着きの払った印象がある。
『ああ、すまないが今日は少し遅れる』
『承知いたしました。いつも通りというわけですね』
『頼む』
『えぇ。では』
通信が終わるのと同時に目的地にたどり着く。ついさっきまで佇んでいたビルよりは幾許か高度が低い。
シルバーの目の前には一台の銀色のバイクが止まっていた。シルバーは軽快にバイクに跨り、目的地に向かい全速力で疾走する。
目的は無論、男の救出とチンピラの逮捕にある。
これが彼、彼等の日常。街を走り、跳び、そして駈けて、犯罪者たちを倒す。
この話は犯罪都市へと化した大阪で繰り広げられる夜の話。昼のように大勢の人間と協力するわけでもなく、常軌を逸した怪物と戦うのではない。ただ、街の平和を取り戻したい一心に戦う。自称・『街の守護者』の物語。
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