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令嬢なるもの

断罪は未遂で終わらせましょう。

作者: 浮月重月
掲載日:2026/10/29

王家主催の夜会の最中。

この時間であれば、第二王子は中庭で張り切っているはずである。


おーいたいた、いましたよ。

今んとこわたしの婚約者の第二王子と、浮気相手の男爵令嬢が。

人気のない中庭の噴水前で恋人繋ぎをしていますね。下半身で。

スチルで見た時は結構興奮したんだけど、わが身に降りかかると…。


あ、ここは十八禁乙女ゲーが元になったらしい世界です。

どういう因果か知りませんが、わたしは公爵令嬢として転生し、

最終的には第二王子から断罪を受けて娼館へ売り払われる末路。

本来ならねー。


この浮気相手から挨拶された時、記憶が蘇ったのは幸いだったわ。

やり込んだりはしてなかったけど、ストーリーは覚えていたので、

今後に起こるであろう運命に抗う覚悟が出来ました。


しかし屋外でよくやるよねえ。絵面は結構綺麗かもしれんけど。

だがコレが終わった後、わたしはいわれのない罪で断罪されるのだ。

しかも売られる娼館は質の悪い場所でヒヒジジイ達の遊び場だ。

そうはいくかい。絶対潰す。


◆


「いやあぁぁぁぁぁ!誰かっ、誰か来てえぇぇぇぇぇっ!

 殿下がっ、殿下がっ、噴水の前で不埒な事をぉぉぉぉぉっ!」


前世で合唱団に入ってて、これほど良かったと思った事はないわ。

うまい具合に中庭で反響してくれて、夜会の会場まで届いただろう。


この絶叫は当然第二王子と男爵令嬢にも届いている。

びくっ!と身を震わせてのけぞって、辺りをきょろきょろ確認中だ。

めくるめく二人の官能の世界から地獄の現実へようこそー。


おお、あちらこちらから押し寄せる人の波が。

乗るしかない、このビッグウェーヴにっ!


さも今来たばかりのような顔をして、しれっと人ごみに紛れておく。


「これはっ…どういう事だっ!?」


怒りの表情でそう怒鳴るのは、男爵令嬢(・・・・)の婚約者。

そう、この女は婚約者持ちでありながら第二王子に手を出したのだ。


確かゲーム内の設定では、DVというか暴力的な男だったので、

男爵令嬢に同情したんだけども…うまーく避けてるのよね、こいつ。

多分この男爵令嬢も前世持ちでプレイ経験あるんだろう。


折角の主人公転生、これはもう逆ハーに一直線でしょ!みたいな、

そういう考えの持ち主なんだろうなあ、この女。


ゲーム内なら、やっちゃえやっちゃえ!なんだけどさ。

現実にやらかしちゃダメ、ぜったい。

何よりわたしが迷惑だ。


「君はっ…この私と将来を誓ってくれたんじゃなかったのか?」


そうこうしているうちに多分逆ハー要員二号が到着。

彼は頭脳明晰と称される宰相の息子だ。明晰じゃなかったのか。

ぷぷっ、簡単に騙されてやんの。やーいやーい。


「ウソだ…こんなの、ウソだっ…!」


これは学園長の孫。三号ですな。


「俺を裏切っていたのか?なぜ?なぜだあっ!?」


四号。将軍の息子。


「君がこんな事をする生徒だとは思わなかったよ…」


目を伏せて憂いた表情を見せるのは新任教師。五号。


六号、七号、八号と続く間に第二王子は我に返ったらしい。

これまでどう言い訳しようかと考えていたみたいだけど、

自分以外にも両手の指ぐらい相手がいた事に怒り心頭だ。


「どういう事なんだ、チッチョリーナ!

 彼らと君との関係はっ!説明してくれっ!」


男爵令嬢は動転しているせいか、あわあわしていて言葉が出ない。

逆境に弱いんだな、このまたぐらブラックホール女は。


この大騒ぎを人垣が囲んでいたのだが、急に人の山が割れた。

あー、国王陛下まで来ちゃったのか。第二王子の顔色は蒼白だ。


「…これはどうしたことかな。説明せよ、愚息よ」


第二王子、さっきまで怒鳴っていた威勢はどこいった。

というかね、いい加減外したらいかがかね、下半身同士を。

陛下も見てるぞ。みんなも見てるぞ。


この夜。第二王子をはじめとして国の将来を担うはずの人達が、

ことごとく表舞台から姿を消す事となった。


◆


わたしの婚約は勿論、第二王子の有責で破棄となった。

第二王子は王族から外されて断種、一兵士として辺境行き。


それ以外で、あの元男爵令嬢に篭絡されていた連中だけど、

婚約者のいた者は当然お流れ、妻帯者も混ざっていたけど離縁。

今ではそれぞれの家族からも冷遇されているらしい。


ああ、元男爵令嬢ってのは現娼婦だから。

わたしが押し込まれる予定だったところへ無事ご案内された。


有力貴族の令嬢がわたし含めて何人も宙に浮いちゃったけど、

あのまま騙されてるよりは良かったんだと思いたい。


まあ、しばらくは婚約とかいいかなぁ。

ストーリーが完全に終わったと確認出来てからで。


ああ、そう言えばDV男は元男爵令嬢現娼婦の元に通っているとか。

特殊プレイOKらしいので、こういうのも元サヤっていうのかねえ。

ブラックホールは、穴ではない。


元男爵令嬢の名前ですが。まあ言わないでおきます。

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