断罪は未遂で終わらせましょう。
王家主催の夜会の最中。
この時間であれば、第二王子は中庭で張り切っているはずである。
おーいたいた、いましたよ。
今んとこわたしの婚約者の第二王子と、浮気相手の男爵令嬢が。
人気のない中庭の噴水前で恋人繋ぎをしていますね。下半身で。
スチルで見た時は結構興奮したんだけど、わが身に降りかかると…。
あ、ここは十八禁乙女ゲーが元になったらしい世界です。
どういう因果か知りませんが、わたしは公爵令嬢として転生し、
最終的には第二王子から断罪を受けて娼館へ売り払われる末路。
本来ならねー。
この浮気相手から挨拶された時、記憶が蘇ったのは幸いだったわ。
やり込んだりはしてなかったけど、ストーリーは覚えていたので、
今後に起こるであろう運命に抗う覚悟が出来ました。
しかし屋外でよくやるよねえ。絵面は結構綺麗かもしれんけど。
だがコレが終わった後、わたしはいわれのない罪で断罪されるのだ。
しかも売られる娼館は質の悪い場所でヒヒジジイ達の遊び場だ。
そうはいくかい。絶対潰す。
◆
「いやあぁぁぁぁぁ!誰かっ、誰か来てえぇぇぇぇぇっ!
殿下がっ、殿下がっ、噴水の前で不埒な事をぉぉぉぉぉっ!」
前世で合唱団に入ってて、これほど良かったと思った事はないわ。
うまい具合に中庭で反響してくれて、夜会の会場まで届いただろう。
この絶叫は当然第二王子と男爵令嬢にも届いている。
びくっ!と身を震わせてのけぞって、辺りをきょろきょろ確認中だ。
めくるめく二人の官能の世界から地獄の現実へようこそー。
おお、あちらこちらから押し寄せる人の波が。
乗るしかない、このビッグウェーヴにっ!
さも今来たばかりのような顔をして、しれっと人ごみに紛れておく。
「これはっ…どういう事だっ!?」
怒りの表情でそう怒鳴るのは、男爵令嬢の婚約者。
そう、この女は婚約者持ちでありながら第二王子に手を出したのだ。
確かゲーム内の設定では、DVというか暴力的な男だったので、
男爵令嬢に同情したんだけども…うまーく避けてるのよね、こいつ。
多分この男爵令嬢も前世持ちでプレイ経験あるんだろう。
折角の主人公転生、これはもう逆ハーに一直線でしょ!みたいな、
そういう考えの持ち主なんだろうなあ、この女。
ゲーム内なら、やっちゃえやっちゃえ!なんだけどさ。
現実にやらかしちゃダメ、ぜったい。
何よりわたしが迷惑だ。
「君はっ…この私と将来を誓ってくれたんじゃなかったのか?」
そうこうしているうちに多分逆ハー要員二号が到着。
彼は頭脳明晰と称される宰相の息子だ。明晰じゃなかったのか。
ぷぷっ、簡単に騙されてやんの。やーいやーい。
「ウソだ…こんなの、ウソだっ…!」
これは学園長の孫。三号ですな。
「俺を裏切っていたのか?なぜ?なぜだあっ!?」
四号。将軍の息子。
「君がこんな事をする生徒だとは思わなかったよ…」
目を伏せて憂いた表情を見せるのは新任教師。五号。
六号、七号、八号と続く間に第二王子は我に返ったらしい。
これまでどう言い訳しようかと考えていたみたいだけど、
自分以外にも両手の指ぐらい相手がいた事に怒り心頭だ。
「どういう事なんだ、チッチョリーナ!
彼らと君との関係はっ!説明してくれっ!」
男爵令嬢は動転しているせいか、あわあわしていて言葉が出ない。
逆境に弱いんだな、このまたぐらブラックホール女は。
この大騒ぎを人垣が囲んでいたのだが、急に人の山が割れた。
あー、国王陛下まで来ちゃったのか。第二王子の顔色は蒼白だ。
「…これはどうしたことかな。説明せよ、愚息よ」
第二王子、さっきまで怒鳴っていた威勢はどこいった。
というかね、いい加減外したらいかがかね、下半身同士を。
陛下も見てるぞ。みんなも見てるぞ。
この夜。第二王子をはじめとして国の将来を担うはずの人達が、
ことごとく表舞台から姿を消す事となった。
◆
わたしの婚約は勿論、第二王子の有責で破棄となった。
第二王子は王族から外されて断種、一兵士として辺境行き。
それ以外で、あの元男爵令嬢に篭絡されていた連中だけど、
婚約者のいた者は当然お流れ、妻帯者も混ざっていたけど離縁。
今ではそれぞれの家族からも冷遇されているらしい。
ああ、元男爵令嬢ってのは現娼婦だから。
わたしが押し込まれる予定だったところへ無事ご案内された。
有力貴族の令嬢がわたし含めて何人も宙に浮いちゃったけど、
あのまま騙されてるよりは良かったんだと思いたい。
まあ、しばらくは婚約とかいいかなぁ。
ストーリーが完全に終わったと確認出来てからで。
ああ、そう言えばDV男は元男爵令嬢現娼婦の元に通っているとか。
特殊プレイOKらしいので、こういうのも元サヤっていうのかねえ。
ブラックホールは、穴ではない。
元男爵令嬢の名前ですが。まあ言わないでおきます。




