ヤンチャな太陽・・・前編
「おーぃ、見てろよ・・・!」
陽翔は、休み時間の教室で、消しゴムを天井すれすれで、投げ片手でキャッチ。
友達の笑い声が一斉に湧きあがる。
「また陽翔かっー、先生に注意されるぞぉー」
「大丈夫大丈夫、つかまる前に逃げ足早い、チーターだからさっ」
「自分でチーターかーっ面白いなっ」
わざと大げさに、ウィンクして、更にみんなを笑いに導いている。
ーーーーー誰も知らない、その笑顔の裏の秘密を・・・ーーーーー
笑いの中にいることが陽翔の居場所だった。
誰も気づかないあの大きな笑顔の理由は胸の奥の寂しさを隠すものであること。
放課後、空は赤く染まり、校庭の隅に伸びた陽翔の影は一人ぼっちに映っていた。
靴を片手に歩きながら、つぶやく。
「父さん、笑ってくれたかな」
陽翔は、里親夫婦、健一・沙織のもとで暮らしている。
朝はみそ汁とご飯、帰宅すると、"おかえり"と声・笑顔がある。
でも、学校で陽翔はそんなことは話さない、「父さんがいない」ということだけ、みんなは知っている。そして、両親話には触れることはないのだった。
ーーー本当は父はいた。陽翔が小さいころある事故で父は陽翔をかばって命を落とした記憶は、陽翔の心の中に刻まれている、あの時、泣かずそっと動けてたら・・・・とそんな思いがずっと、心の中で消えずに残っていた。ーーー
だからこそ、誰よりも明るく無鉄砲に見せている。
弱音を吐くよりも、みんなを笑わせる太陽の方を選択しているのだった。
それが自分を守るための薬だと、信じながら・・・。
家に帰ると、玄関からふわっと夕食の匂いがした。沙織がエプロン姿で「おかえり」と迎えてくれる。
陽翔はいつもの調子で"ただいまーっ”と親指を立てて、決めポーズをした。
夕食の後、部屋に戻った陽翔は窓辺に腰を下ろして外を眺めた。
夜空の星がキラキラ瞬きを浴びながら、心の奥にそっと語りかける。
「父さん、俺ちゃんとやってるよ、笑いがないと、みんな心配するから・・・」
その笑顔は誰も知らない、小さな影の祈りでもあった。




