表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

おたがいさま~美しい薔薇の令嬢が婚約破棄を喜んだ理由~

作者: MURASAKI

「お前とは婚約破棄だ!」


 そんなお決まりのセリフで、婚約者の王子は別の女の腰を抱いて私を指さした。

 驚いているように周りには見えたかもしれないけど、私は喜びに打ち震えていた。


 ぶっちゃけ、私は婚約者が大嫌い。何が嫌いって、体臭においが合わないの。


 こればっかりはどうにもならないじゃない?

 見た目なんて一切気にならない。人を見た目で判断するなんて間違ってる。

 実際に殿下は十人並みの容姿で、少々ぽちゃっとしているところはむしろ可愛いと思うし良いと思うの。


 だけど!

 ()()()だけは!

 どうにもならないのっっ!


 婚約者と会う日は多めにバラの香水をつけて、できるだけ息を止める。何度も香水を振って臭いを上書きする。おかげで城では私は美しき薔薇の令嬢なんて呼ばれているくらい。

 でも、どんなに努力をしても、隣に立つだけで意識が飛びそうになるのっ!


 どうして他の人は平気なの?


 だけど、ようやく私は婚約者の座を降りることになる。

 嬉しくて震える手でドレスの両端を摘まみ上げ、何年も積み上げた美しい所作でカーテシーをする。


「かしこまりました。それでは、わたくしは失礼いたします」


 足早にダンスホールを抜け出して、詰めていた息を一気に開放して深呼吸をする。


 ああ! 素晴らしい自然の香り! 大自然、最っっ高!


 私は空気を胸いっぱいに吸い込んで、自由になった嗅覚受容体(鼻の穴)を思いっきり解放した。



――同じ頃、王子は……


「やっと、やっと解放された」


 テラスの扉を開け、外の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。


「あのバラの香り(香水)には辟易していたんだ」


 元婚約者の残り香(バラのかおり)が充満しているダンスホールを、忌々しく見下ろしていた。

 平和になったダンスホールの中で、王子の隣に居る女性以外の多くの人々が重くため息をつきながらこう思った。


 おたがいさま。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
とても読みやすかったです。 オチも分かりやすく、サクッと楽しめました。 面白かったです。
 面白かったです。  まず話がシンプルでくどくど長くないのが非常に私好みでした。  短い中に技術を感じるとこもいいですね。  「ぽちゃっとしている」で少し肥満気味の人が放つ酸っぱい匂いをイメージ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ