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永遠の命  作者: 夜月陽向
9/14

マフラー

12月1日

まだ雪は降っていないが、外に行けば、息が白くなるくらいに、気温が下がってきた。

冬越しの準備も終わったので、最近は、ステラもシロも私も、家の中で過ごしている。

今日も、私達は同じように、暖炉の温まった部屋で、ゆっくりと過ごしていた。


先程、じゅうたんの上で、シロに読み聞かせをしていたステラだったが、ちょうど、その本を読み終えたのか、ステラは本を片付けて、シロと一緒に、私の元へ駆け寄ってきた。


ん?どうしたんだ?二人とも。

本はもう読み終わったのか?


うん。読み終わった!


ステラは私に駆け寄ってくると、そのまま、私の脚に抱き付き、顎を膝の上に乗せて、私の方を見つめた。


ししょー。何作ってるの?


これか?

今は、マフラーを作っているんだ。


私は、マフラーを編む手を止めて、編みかけのマフラーをステラに見せた。


ししょー。マフラーって、何に使うの?


マフラーはな…

こうやって、首に巻いて…

首を暖かくするものなんだ。


私はステラに説明をしながら、マフラーの端を、一周だけステラに巻きつけた。


最近、寒くなってきただろ?

だからこれで、冬の寒さから体を守るんだ。


あったかい!


ステラはそう言って、自分の首に巻いたマフラーを、小さな両手で触り、ニッコリと笑った。


ステラ、お外、寒い!寒い!から、マフラーほしい!


ああ。

今作っているマフラーが完成したら、ステラにあげるから、楽しみに待っていてくれ。


うん!ステラ楽しみに待ってる!


あ…でも…


ステラは突然、何かを思ったのか、急に、暗い顔になった。


どうしたんだ急に?


ステラ、マフラー貰ったら、ししょーのマフラーあるの?

ししょー、よく外行くから、ステラより寒い、寒い…

だから…ステラより、ししょーがマフラーいる。


なんだ。

そんな顔してどうしたのかと思ったら、私の心配をしていてくれたんだな。

大丈夫だ。

私はマフラーが無くても、寒くならない!

それに、このマフラーはもともと、ステラのために作っていたんだ。

だからそんな顔をしないでくれ。

マフラーができたら、受け取ってくれるか?


私がそう言うと、ステラは、うん。ありがとう!と言って、笑った。


…ねぇ、ししょー。

マフラー、ステラも作れる?

ステラ、ししょーのマフラー作りたい!


私にマフラーを作ってくれるのか?

それはすごく嬉しいな。

そうだ。

それなら、お互い、マフラーを作って、マフラーができたら、交換っこしようか。


うん!

ステラ、マフラー頑張って作るね!


ああ。

楽しみにしているよ。


私はステラを抱き上げ、自分の膝に乗せると、ステラ用の毛糸や、編み針をだして、二人でマフラー作りを始めた。


あれから、1日、2日と時間が過ぎていき、ステラに、マフラーの作り方を教えた日から、ステラは時間の空きごとに、マフラーを一生懸命作っていた。


ステラがマフラーを作り始めて、一週間ほどたったある日。

突然、シロが私が私の元にやって来て、ワフ!と吠え、手首を二、三回曲げて、私に来て欲しいと、私を呼んだ。


私は、何かあったのかと、シロについていくと、そこには、ステラが窓際で、マフラーを作りながら泣いている姿があった。


ありがとう。シロ。


私がシロにそう言うと、シロは、部屋の端にあるクッションに移動して、そこで、ステラの様子を見守っていた。


私はそっと、ステラに近づき、ステラの隣に座って、頭を撫でた。


どうしてマフラーを作りながら泣いているんだ?


私がそのようにステラに聞くと、ステラは、マフラーを作っていた手を止めて、頬を流れる涙を拭った。


ステラ…

マフラー、上手にできなかった…

ししょーに、かっこいいマフラー作りたかったけど、全然上手にできない…


ステラは、今にも流れそうな涙を、ぐっと堪えて、マフラーを、ぎゅっと握り締める。


どんな感じか、見てみてもいいか?


うん…


私はステラからマフラーを受け取ると、マフラーの端を持って、宙に広げた。

ステラが作ったマフラーは、ところどころ形が歪でいて、少し不恰好ではあったが、すごく丁寧に作られているのが感じられた。


上手にできて無いって、すごく上手じゃないか?


私がステラにそう言っても、ステラはまだ、自分が作ったマフラーに納得できていないみたいで、下を向いたまま、私に目を合わせてくれない。


ステラ、マフラー作り直す…


ステラは下を向いたまま、小さな声で呟いた。


そうか…

なら、これは捨ててしまうのか?

私はこのマフラーがすごく好きなのに…


本当に…?

でも、かっこいいマフラーじゃない…


私は、ステラの前に移動して、座り直し、改めてステラに話し始めた。


ステラ、私はな。

どんなに綺麗で、カッコいいマフラーより、ステラが作ってくれた、この世界に一つしかない、特別なマフラーが欲しいんだ。


このマフラーには、ステラがどれだけ私のことを思ってくれて、どれだけ一生懸命作ってくれたのかが、ものすごく伝わってくる。

それくらい、このマフラーは、ステラの優しさと暖かさがたくさん詰まっているんだ。

だから私は、このマフラーを心から素敵だと思うし、心の底から欲しいと思っている。


どうだろうか、私にこのマフラーをくれないか?


ステラは、少しの間考えた後、うん!と、笑顔で答えた。


やっと、こっちを見てくれた。

そうだ。

私からのも渡さないとな。

はい、約束していたマフラーだ!


私は、亜空間からマフラーを出し、宙に広げて、ステラに見せる。


どうだ?


すごく綺麗!


良かった。

一生懸命作った甲斐があったよ。

巻いてみるか?


うん!


私は、ステラの首に、二、三周マフラーを回した。


ししょー、どう?


ステラは、そう言って、マフラーを見せるように、くるくると回る。


ああ。

とても良く似合っている。


ししょー。

ありがとう!大好き!

マフラー大切にするね!


ステラは、座っている私に、飛びついて、ぎゅっと抱きしめた。


私もステラが大好きだ。

ステラがくれたこのマフラーも、一生大切にするよ。


私はそう言って、ステラをぎゅっと、抱きしめ返した。

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