表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
永遠の命  作者: 夜月陽向
8/14

薪割りとキャンプファイヤー

10月31日 11月1日 空白


11月27日

少しずつ肌寒くなり、木の上で踊っていた葉っぱたちは、枯葉として、地面に散り積もっている。

あれだけ騒がしかった森も、長い眠りにつく準備を始めているようだった。


毎年、12月の半ばになると、雪が降り始め、1月の半ばまで振り続ける。

そんな、一か月にも及ぶ、真っ白な雪の世界を無事に越すため、私達は、一週間前から冬支度を始めていた。

今日は、冬の間、おそらく毎日使うであろう薪を、丸太を一つ一つ割って、作っている。


冬眠の準備を始めた森は静かで、カッコン、コン。カッコン、コン。と、薪を割る音が響きわたっていた。


ずっと前からだが、ステラは好奇心旺盛で、よく私がしていることを真似したがる。

今日は、冬の間に使う薪を蓄えとくために、朝から薪割りをしていると、途中からステラがやって来て、ステラもしたい!と言ってきた。


こんなこともあるだろうと、今回はあらかじめ、ステラの分の斧も、用意しておいた。


ステラに斧を渡し、簡単に薪割りの説明をした後、ステラも、私の隣で薪割りをやり始める。


生まれながらの才能もあるが、毎日剣を振って鍛えているおかげで、体幹がしっかりしていて、ステラは、斧をまっすぐに振り下ろせていた。


ちなみに、いつもステラについて回っているシロだが、ずっと同じ作業を繰り返す薪割りに見飽きて、少し前から、離れた場所にある切株に移動し、その上で寝ている。


しばらくの間、私達は薪割りを続け、私は最後の薪を割った。


よし。これで最後だ。

お疲れ、ステラ。

今日は手伝ってくれてありがとう。

おかげで早く終わったよ。


どういたしまして!


ステラは、タオルで額の汗を拭いた後、水の入った水筒を持ち上げ、水をグビグビと飲む。


ステラ、薪割り楽しかった!

また、師匠のお手伝いする!


ああ。

また必要があったら、その時頼むよ。


私は、割った薪を拾い集め、斧と一緒に亜空間にしまい、木屑がついた手をぱんぱんとはたいた。


そうだ。

薪割りを頑張ってくれたお礼に、今日はキャンプファイヤーをしよう。


キャンプファイヤー?


初めて聞く言葉に、ステラは首を傾げた。


うーん。そうだな…

キャンプファイヤーは…

いや、やっぱりまだ内緒だ。

お楽しみは大事に取っておかないとな。


私がそのように言うと、ステラが頭に「?」を思い浮かべているのが見えた。


日の光もオレンジ色に変わり、夜が始まろうとしている。


私は、今日割った薪を組み立て、そこに火をつけた。


ステラ、シロ、こっちにおいで。


私は二人を呼び、隣りに座らせる。


私達が今からする、キャンプファイヤーというのは、親しい人達と共に、同じ火を囲んで、一緒に食べたり歌ったり、星を見たりして、いろんなことを話し、楽しんで、絆を深めるものなんだ。 

まぁ、説明なんかより、実際にしてみた方がはやいから、早速始めてみようか。

ステラもシロも、きっと気にいるはずだ。


そう言って、私達は、キャンプファイヤーを始めた。


焚き火を囲み、料理を食べ、ギターを取り出して一緒に歌を歌ったり、星を見て星座を探して。

まったりと、三人だけの時間を過ごした。


そうだ。危ない危ない。

危うく、これを忘れるところだった。

やっぱり、キャンプファイヤーの醍醐味とえば、じゃーん。マシュマロだ!


私は、亜空間に手を伸ばすと、中から、今日、ステラ達がお昼寝をしている時に、こっそり作っておいたマシュマロを取り出した。


何これ!?ふわふわしてる!


ステラは、マシュマロを手に取ると、不思議そうに、それを見たり触ったりして、食べてみる。


シロも食べてみるか?


ステラにマシュマロを渡した後、シロにもそう聞くと、シロは、ワフ!と返事して、いると答えた。


私は、シロに向かってマシュマロを投げ、シロは上手くそれをキャッチして食べる。


どうだ、二人とも?


美味しい!!

すごく甘くて、口の中でね、ファッファッってなってる!!


ステラがそう言うと、シロも続けて、ワフワフ!と言った。


はは。そうか。

どうやら、二人ともマシュマロを気にってくれたみたいだな。


それじゃあ…マシュマロを気にってくれた二人に、マシュマロのもっと美味しい食べ方を教えよう。


ステラは、私の言った言葉を聞くと、え!マシュマロがもっと美味しくなるの!と言って、何?何?と、興味津々で私を見つめた。


マシュマロは、そのまま食べても美味しいが、こうやって、棒に刺して、焚き火の火で少し焼き目が出るまで焼くと、もっと美味しくなるんだ。


本当に!?


ああ。

ステラも、自分でやってみるか?


うん!やる!


ステラは、やる気満々な様子で答えた。


私は、ステラに棒を渡すと、ステラは早速、マシュマロに棒を刺して、マシュマロを焼き始める。


火傷しないよう、あまり火に近すぎないようにな。


はーい!


シロは、そんな、マシュマロを焼くステラを、隣で眺めていた。


マシュマロを焼いて、しばらくすると、マシュマロの甘い香りが周りに広がっていき、いい感じに焼き目もついてきた。


ししょー。

できた?もう食べていい!?


お!いい感じに焼けているな。

もう食べてもいいぞ。

熱いから気おつけて食べるんだぞ。


うん!


ステラは、マシュマロを焚き火から遠ざけ、口の近くまで運び、ふうーふうーと、息を二、三回かけて、マシュマロを食べる。


う〜ん!美味しい!!

口の中でトロってしてて、さっきより美味しくなってる!


そうだろ。

じゃあ、もう一個食べるか?


うん!もう一個食べる!


ステラはまた、マシュマロに棒を刺して、焚き火に近づけた。


マシュマロをいくつか食べた後、ステラは、私の隣りでうとうとし始める。


そういえば、いつもはこの時間に寝ているんだったな。

本当は、寝る前に歯を磨かないとだけど…

まぁ、また後ででいいか。


私は、ステラの体を引き寄せ、私にもたれかけさせた。


私は、亜空間から毛布を一枚取り出し、ステラにかける。


ししょー…

またキャンプファイヤーしたい…


ステラは、目を瞑りながらも、眠たそうな声で、私に言った。


ああ。また一緒にしような。

今度はマシュマロも一緒に作ろう。


へへ…


ステラはまもなくして、眠りについた。


空を見上げると、あたり一面に星空の海が広がっている。


今日は一段と、星が綺麗に見えるな…


小さくも力強く燃える焚き火が、パチパチと音を立てる。


薄暗く、肌寒い夜のはずなのに、暖かく、光でいっぱいだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ