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ランビエの絞輪  作者: 久遠 三輪
第一章 食行動と殺意
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01 出勤

芦屋医科大学病院は、阪急電鉄芦屋川駅とJR芦屋駅の中間に位置する総合病院である。


一日の入院患者数は、平均七百五十人、外来患者数は二千五百人を超える。医師だけでも六百名以上が常勤する巨大組織だ。


それに引き換え、管理栄養士は舞を入れて十人のみである。ほとんどの管理栄養士が給食センターに配属されており、三交代制で勤務している。


だが、舞は、昨年「認定管理栄養士」資格を取得したため、この春から精神科病棟の医療チームの一員となり、九時出勤となった。


認定管理栄養士とは、実務経験が五年以上、専門分野での事例報告提出が日本栄養士会に認められた者に贈られる受験資格である。その後、試験にパスすると晴れて「認定管理栄養士」となり、最短で二十七歳で取得できる。


舞は昨年、臨床栄養の事例報告論文が学会で認められ、最短で筆記試験に合格できた。大学院入試の際も、大いに役立った。五年ごとに更新手続きがあるが、五年後は、さらに上の「専門管理栄養士」を目指すと決めている。


大学院も順調に行けば、五年後は医学博士も夢ではない。


毎朝、白衣に着替える時に、舞は鏡に向かって、自分の計画を心の中で唱える。途方に暮れそうな事態が起きても、クヨクヨ悩まず、自分のビジョンを思い描くと、不思議と冷静さが戻ってきた。


九時になると、栄養部の朝礼が始まる。他のセクションに配属されている管理栄養士達と情報交換をし、院内の出来事を把握した。三十分ほど書類やデータ、メールのチェックを済ませ、十時になると、回診の同行や患者への栄養指導が始まる。


栄養指導の指揮を執っているのが、三年前に教授に就任した仁川にがわ優子だ。舞の大学院での指導教員でもある。舞は、今朝の殺人現場の経緯を優子に相談したく、栄養指導の時間を心待ちにしていた。


優子は、美魔女と渾名がついている五十三歳の精神科医である。患者には笑顔で接するが、医局内では笑顔が少なく冷徹だ。アメリカで医学博士と栄養学博士の学位を取得している優子は、「精神医療にも食事療法が必要だ」と唱えている。舞の理想の女性であった。


舞は管理栄養士として優子と仕事をするうちに、大学院に進学して優子の指導を仰ぎたいと思うにようになった。昨年は帰宅後、夜遅くまで受験勉強に打ち込んだ。


入試科目は大学の栄養学科時代に勉強した「生理学」「生化学」といった科目の復習だったため、さほど苦にはならなかった。大学院入試対策が、「認定管理栄養士」試験の対策にもなった。 一つの問題だけに集中していては、多くの懸案事項が裁けない。


舞は自身の行動も、ランビエの絞輪のように、効率よく跳躍できる、と確信していた。

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