表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ランビエの絞輪  作者: 久遠 三輪
序章 薄絹が翻る
5/84

05 管理栄養士の推理

車が見えなくなるまで見送っていると、背後から声がした。


舞が振り向くと、解剖医の荒垣壮太あらがきそうたが立っている。


「お早いご出勤で。本当は、九時出勤だろ?」


半ば呆れたような様子で、舞を見詰めている。荒垣は、いつもボサボサ髪にジーンズというラフな服装だ。でも、切れ長の整った顔立ちをしている。三十八歳になるが、女っけはなく、研究一筋という噂だ。荒垣は、舞が覆面パトカーから降りる光景を見ていただろうか? 研究に関係ないことは、詮索してくるタイプではない。


舞は、思い直すと、荒垣の目を真っすぐ見た。


「朝早く来ないと、入院患者の食べ残しチェックができないのです」


「大学院の課題か?」


「そんなところです。では、急ぐので!」


舞はセキュリティ・カードを翳して病棟に入ると、足早に調理室へ向った。


人の思考回路や健康状態は、日々の糧で成り立っている。これは大学の栄養学科で学んでいる時に、舞が学んだ教訓である。事実、加工食品ばかり食べている者は身体が低血糖状態になり、精神状態が不安定になってくる。だから、人は悲しんだり、怒ったり、やがて犯罪を起こすのだろうか?


舞は今朝の白い女が、日頃どんなものを食べ、犯罪を起こすほど神経が昂ったのかを考えていた。薬の副作用も、しかり。


朝八時半までに、舞は入院患者の朝食が終わった後、各トレイの残り物をチェックして記録している。ネーム・プレートがなくなっている場合もあるが、ほとんどの患者が、そのままだ。食後のトレイには、患者が飲み終わった薬のPTP包装シートが残っているので、薬品名も記録していた。


患者の食事献立だけではなく、食べ残しの記録も、舞の研究材料の一つとなっていた。今朝は、いつもの日課に加え、白い女の食行動も気になっている。管理栄養士として培った知識を総動員させながら、白い女の正体に想像を巡らせた。

次回より第一章「食行動と殺意」の幕開けです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ