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最期の依頼

作者: かざむき

深夜テンションで書きました。

いいねとかしてもらえると凄く喜びます。

「よっす!」


 カランカランと入店のベルの音を鳴らしながら、勢いよく扉を開く男が一人。


「おっ、俺の静止も振り切って村を飛び出していっちゃった勇者じゃん。冒険どうしたの? もしかして、魔王倒しちゃった?」


 店の中にも彼と同年代の男が一人、品出しをしているところであった。


「なわけ。俺旅立って、まだ三年もないよ。そんな一瞬でいけたら苦労しねえよ。」

「だよね~ww。で何用?」


 男は品出しをやめ、奥からお茶を持ってきて勇者をもてなした。


「これ十銅貨ね。」

「お前から出しといてそれはねえだろ?」

「じゃあ入店料。」

「クソがよ。」


 男はそう言うと銅貨を十枚机において一気にお茶を飲み干した。


「この茶うめえな!? どこのだ?」

「お隣さんの親戚のとこ。」

「高級茶じゃねえか! 十銅貨で良かったのか?」

「末長いご利用を期待していますので。」

「お得意さん料金かよ。」


 二人は村の学び舎で共に育った。その仲は非常によく、周囲からはよく二人は兄弟のようだと言われていた。

 そして、現在、一人は勇者、一人は雑貨屋をやっていた。


「この三年ぐらいで何か変化はあったか?」

「そうだね。あのスケベ野郎がお嬢様と結婚したぞ。」

「まじで!? あのスケベが? 後で俺が祝福していたって言っといてくれねえか?」

「自分で言いに行けよ。昔から面倒臭がりだな。」


 そう言うと勇者は少し苦笑し、店員は一瞬顔が曇った。


「頑張るよ。他には?」

「そうだな。畑のばあさんの犬がやっと芸を覚えた。」

「へぇ~。ばあちゃん頑張ったんだな。どんなの?」

「空中きりもみ三回転。」

「もっと普通のやっとけよ。お手とかお座りとかあるだろ。」

「犬は普通じゃ満足できなかったらしい。」


 二人は久しぶりの世間話に花を咲かせた。

 二人はよく笑い、昔のことから将来の夢まで、語ることが無くなるまで語りあった。


 いつの間にか、高く昇っていた太陽は沈もうとしており、そこで要約二人の会話は落ち着いた。

 二人は沈みゆく太陽を静かに眺めていた。


「なあ、最期に一つ頼みごとをしていいか?」

「最期と言わずに何でも頼んでくれ。」


 男は涙をうっすらと瞳に浮かべて、そう答える。


「いいや、これが最期だ。俺の剣をここで売ってくれないか?」


 勇者はそう言うと、腰に差していた聖剣を机の上に置いた。


「それは、それはお前の!、お前だけのモノだ!!、お前は、それを持って、また、明日も冒険に行くんだ!」


 男は声を荒げて、泣きそうな顔で勇者に怒鳴る。対して、勇者は静かに男を諭すように答える。


「いいや、これは魔王を倒す者が持つべきモノだ。俺にはもう不要だよ。」

「ふざけるな! お前はまだ、お前はまだ――。」


 男の目は大粒の涙と鼻水で酷いことになっていた。


「すまんな。お前に止められて冒険に出なかった俺は、きっと、じいちゃんまでなれたんだろうな。」


 勇者の体が末端から少しずつ灰になっていく。それは魔王によって掛けられた死の呪いであった。


「でも、最期にお前と会えたし、なんやかんやで冒険も楽しかったし、悪い人生ではなかったと思う。」


 男は涙をぬぐい、精一杯の笑顔を作った。


「そうかよ。それは良かったな。お前が満足なら、文句はねえな。」

「ああ、悪くない人生だった。」


 勇者はそう言い残すと灰となって消えた。


 一人になった店内で男は呟いた。


「馬鹿野郎。何が文句がないだよ。何が悪くない人生だよ。また、一緒に暮らすっていう約束を破っておいてよ。勝手に満足しやがって、お前は勇者だろ。お前を慕う人間の気持ちぐらい考えろよ。」


 灰は建物の隙間から入ってきた風に吹かれて無散する。

 机の上にはポツンと一つ、勇者の証である聖剣が残されていた。


他にも書いてるから暇あったら見てね。

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