罠
「赤髪も勇者なんじゃないか?」
「俺たちのスピードについて来れているってことはそれしか無いだろう」
その日は例の洞窟で夜を明かす事にした俺たちは順番に見張りに立ちながらも、奥で追跡者についての話し合いを続けていた。
見張りに立っている間は、奥の会話を聞く事ができない声量で話しているので、外で見張っている追跡者に俺たちの会話が聞こえていないと思う。
「顔は日本人じゃなかったな」
「そうだな。東洋人とかイスラム系とかではなく、ヨーロッパ系の外見だったよな」
「今、生きている勇者って回復魔法を使えるおじさんって話じゃなかったか?」
「召喚の際、死んだとされるクラスメイトの誰かかとも思ったけど、顔が全然違ったよな」
「どっちにしても、勇者じゃなければ俺たちのスピードについて行く事はできないはず」
どうしてもここでグルグル思考が元の位置に戻ってくる。
「俺たちって勇者を召喚するのがザイディール国だけなのか、他の国もなのかを知らないのがネックかな」
「そうだな。どこの国でも召喚ができ、更には体の乗っ取りが出来るとすれば、行く先々で命を狙われる可能性があるよな」
「赤髪を襲って吐かせるか?」
「でも、相手も勇者ならどんな戦闘能力を持っているのか分からないのが怖いな」
ここで辰徳が見張りから戻って来た。
今度は俺が見張りの番だ。
高橋が辰徳に今までの会話の説明をしている。
しばらくすると奥から井ノ川が来た。
「交代するぞ」
「おう」
「何か動きはあったか?」
「無い」
交代して奥へ行くと、高橋が「やっぱり今夜赤髪を捕まえようって決まった」
俺は多くを語らず、頷いただけで焚火の横で寝る支度をした。
襲うにしても今すぐじゃないらしい。
朝方の4時くらいを狙うそうなので、それまでは見張り番以外は睡眠をとる事になったのだ。
勇者かもしれない敵。
俺たちで勝てるか?
色々思い悩んでいたけど、疲れてもいたのだろう、いつの間にか寝入っていた。
高橋に揺すり起こされて、いつの間にか消された焚火の灯りさえなく、真っ暗だ。
「そろそろだ」
俺が最後だったみたいで、皆既に起きていた。
井ノ川を先頭に追跡者がいるであろう場所にあたりをつけて移動を始める。
洞窟の中はそこまで足音がしないが、草の上を歩くと、草が摺れる音がする。
相手にバレてもスピード勝負で捕まえようと事前に決めていたので、一気に赤髪がいるであろう場所へ駆けて行った。




