出港
「スザーナ大陸への国際便がもっと頻繁に出ている港ってありますか?」
「う~む。となると隣の国のマンサ港かな」
「そのマンサ港へ行く船便っていつ出発しますか?」
「ああ、それなら後1時間もしない内に出ますよ。乗りますか?」
「はいっ!4人分のチケットをお願いします」
そして俺たちは中型船に乗り、潮風を浴びているのだ。
「しかし高橋の機転はすごかったな。これで陸地を走るより確実に早くマンサ港へ着けるしな」
「そうだな。走っても同じくらいに到着はできるかもしれないが、迷子になる可能性もあるし、道を尋ねながら移動すればその分時間を食うし、船なら体を休めながら移動できるしな」
「うん、ありがたいな」と3人でしきりに高橋を褒めたのだが、「いや、俺は切符売りのおじさんから、俺たちの行先が斎藤たちにバレるんじゃないか、そっちの方が心配だよ」とどうして優れない顔色なのかの理由を教えられ、3人共、高橋と同じくらい顔色が悪くなった。
「実は金を払ってでも切符売りの口止めをしようかとも思ったんだ」
「なら、何故?口止めしてないよな?」
「金を払ってまでの口止めだと印象に残るじゃないか。それに斎藤たちが俺たちよりも金を積めばバラされる危険性だってある。それなら目立たない事を祈って、知りたい事だけ教えてもらったら、サラっと退場した方が安全かもって思ったんだ」
高橋は今までずっと人の上に立ち、時には指示を出す立場だったりもしたのだが、こいつはなるべくしてそういう地位に就いたんだな。
マンサ港までは半日かかった。
夕方に到着したので、その日の内に出発する船便はなかった。
陸路もそうだが、海路も夜の移動は危ないので忌避されるのだ。
それでも翌朝の便がないか直ぐに調べ、4人分のチケットを購入する事が出来た。
問題は、食糧だ。
明日朝一番に出発ということは、スザーナ大陸に到着予定の2週間分の食糧を持参しなければならない。
一応、食事付きの旅券がないか聞いてみたが、この世界での船旅は食事は各自で用意するのが当たり前なんだぞうだ。
夜でも開いている飲み屋や宿屋を駆けずり回って、果物や野菜、干し肉なんかを手当たり次第購入した。
もちろん足元を見られているので、俺たちの資金はどんどん目減りしていったが、必要な経費なので惜しまなかった。
水や火は高橋の魔法を使えばいいし、簡易竈は俺の土魔法で船の甲板の上に都度作れば良い。
もちろん火事にならない様に工夫をしなくてはならないけどな。
自炊するなら鍋1個と人数分の皿とコップを用意する必要があり、それも泊まった宿屋で使っていた物を買わせてもらった。
朝起きれないのが怖いので、2人ずつ寝る様にし、残りの2人は寝ずの番をして、なんとか遅れる事なく所定の船に乗る事が出来た。
寝不足は船の上で解消できるものな。
朝、まだ夜が明ける前にスッと船は港を離れた。
俺たちを召喚したザイール国がある大陸から離れるということで4人揃ってマンサ港を万感の思いで眺めていた。
地元の人たちなのか手を振ってくれる人も何人かいた。
そんな所は地球と同じだなと思って眺めていたところ、そんな手を振る人たちの間に山口らしき男の影が見えた。
「おい、あそこ。山口じゃないか?」
俺と同じで井ノ川も同じ男に気付いた様だ。
4人で目を凝らしてみるが、勇者特性があっても距離があるためはっきりとは分からない。
だが、黒髪で山口と同じ背丈、同じ髪型らしい男がこちらを見つめているのは確認できた。
もしあれが山口ならば、マンサ港までどうやってこの短時間で到達したのだろう。
何か不気味だ・・・・。




