救出計画
「RW様、本日も大量でしたね。どうやったらそんなに獲物を狩って来れるのか知りたいって冒険者たちの間でもっぱらの評判ですよ」
逃走してから2週間、毎日の様に北の森で狩りをして大量に魔物を卸しているので、俺たちの懐は温かい。
今ではもう少しランクの高い宿にも泊まる事ができているし、何なら別の町へも移動可能だ。
それくらい毎日大量に狩りをしているし、中には高ランクな獲物も多数混じっているのだ。
ただ、ザイディール国に置いて来た斎藤と山口の事が気になっており、これ以上ザイディール国から離れた所へ行く事が出来ないでいた。
「どうやって二人の情報を得る?」
「直に俺たちの顔を見られなければ髪の色が違うので直ぐにバレる事はないんじゃないか?」
「一度、あの国に戻るか?」
「そうだな。早めに動かないと乗っ取られてしまった後では何も出来ない」
「乃木坂の時は知らなかったから何も出来なかったけど、乃木坂を乗っ取ったハーミットはそのままにするのか?」
「ところで今度はどの王族にするんだ?」
「そう言えば高橋はどうやって第二王子を連れ出したんだ?」
高橋は第二王子が本当はいかがわしい女が好きだというのをチョーカーを付けられる前に王子自身から聞いていたそうだ。
だが、王子の身分では噂になるので娼館へ行く事もできず、いつかは行きたいと言っていたのを逆手に取って、自分が行くから王子も付いて来て欲しいと誘ったそうだ。
チョーカー装備前なら高橋の口から娼館遊びがバレる事もあるが、チョーカーがあればバラすなと命令されれば誰にもバラされる事がないという安心感。
どんなゲスイ遊びをしても、もう高橋からは漏れないと言う事だ。
自分1人だと城から出してもらえないだろうが、王子が監視する為に付き添うと言うならば、王子も行けるのではないかという悪魔のささやきで城外へ連れ出したそうだ。
貴族の娘ではなく、とことん淫らな女性を、それも複数同時に組み敷いてみたいという王子は、自分の夢を諦めきれず、これは良いとばかりに一緒に娼館へ行ったそうだ。
もちろん王子には護衛が付いているが、自分も娼婦を買いたかった王子は、護衛達を娼館の表に目立たない様に待たせたのだ。
護衛から離れ、複数の娼婦を侍らした第二王子に、高橋は眠り薬を入れた酒を用意し、それを王子に飲ませたらしい。
眠り薬はチョーカーを付けられて不安感が高まり寝れないと数日前に王城の医師から処方された物だったらしい。
体を乗っ取る事を目的とされているため、勇者の体調不良に対する対応はどこの貴族家でも頗る良かった。
だから、眠れないのならと簡単に睡眠薬を処方してくれたらしい。
となると今回、斎藤や山口を助ける為にどの王族をどうやって拉致すれば良いのかが問題だ。
「でも、第二王子に轡を噛ませた時、高橋に命令してたけど、ちゃんとした発音になってなかったからか、高橋、お前反応してなかったよな?」
「おお!井ノ川の言う通りだ。俺、あの時最初は反応しなかったな。と言う事は、命令がはっきりと聞こえなければ従わなくて良い可能性が高いな」
「うん。だな。とりあえずは、まず二人を助け出し、命令が出されたとしても従わなくていい様に簀巻きにしてこっちへ連れてくればいいじゃないか?」
辰徳の意見にみんなが賛成した。
二人を救い出すには出来るだけ早くあの国へ戻る必要がある。
この2週間で貯めた金を手に、4人で再びザイディール国の地を踏んだ。




