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振り子

 部屋の暗さもあってだろうが、覗き込まないと顔も見えなさそうな深いフード付きのマントを着ている男たち。

 3色のマント。

 真ん中の男は赤色。血の様な赤だ。

 その男の左側には黒のマントの男たち、右側には鮮やかな紺色のマントの男たち。

 全部で30人くらいいると思う。

 そしてマントの男たちから少し離れた所に中世ヨーロッパの貴族に似た服を纏った顎髭の男。


「おい、とにかく全員を起こそう」と高橋が号令を出したので、まだ意識の戻っていない斎藤と山口をみんなで揺り起こした。


 俺たちが全員意識を取り戻した所で一歩前に出た顎髭男。

 痩せぎすで灰色の固そうな髪の男だ。

「みなさん、ザイディール国へ良くお越し下さいました。歓迎致します。みなさんは全員、私が話している言葉を理解されていると思います。異世界から召喚された勇者補正として、みなさんの魂に言語理解というスキルが刻まれているハズです。私の言葉を理解できる方は、恐れ入りますが手を挙げて頂けますか?」


 俺たちは恐る恐る手を挙げる。

 口の動きは違うのに、ちゃんと日本語に聞こえるのだ。


「ありがとうございます。全員、我々の言葉を理解されている事が確認できました。では、このままご説明をさせて頂きます。みなさんは勇者として我がザイディール国へ召喚されました」

「なっ!」

 高橋が異議を申し立てしようとしたのだろう。立ち上がり声を発っしようとすると、顎鬚男が右手を前に突き出し、ストップという風に高橋を押しとどめた。


「みなさんは突然召喚され、勇者様と呼ばれ、驚かれたでしょうし、納得もいかないでしょう。しかし、我々がみなさんを召喚した訳ではありません。みなさんの後ろをご覧ください」

 クラスメイト全員が咄嗟に後ろを振り向いた。


「カッチカッチ」

 暗がりの奥に先ほどから休みなく聞こえていた機械音の正体がそこにあった。


 巨大な振り子だ。

 黒光りする金属で出来ており、暗がりに設置されているので今の今まで気づかなかった。

 あんなに音は自己主張していたのにな。


「これは勇者召喚の振り子です。我が国の建国と共にこの地にありました。この振り子が定期的に勇者を召喚してしまうのです。我々も無闇やたらと勇者を召喚していしまうこの振り子を疎ましく思っているのですが、我が国の伝説に、この振り子を破壊してしまうと国が亡びるという下りがございまして、我々の手では振り子を破壊する事はできないのです」


 高橋が再び口を開こうとした所、また顎鬚が「あっ、勇者様。おっしゃりたい事は分かっております。ただの伝説に拘って自分たちが召喚されるのは許せないとおっしゃりたいのでしょう?分かっております。今までも召喚された勇者様たちが同じ様なリアクションをされておりましたので、皆さまの感じられる事、考えていらっしゃる事は重々分かっております。私は振り子の伝説と申しました。はい、伝説です。ですが、ザイディール建国前にこの地にあった王国はその国の振り子を破壊した為、殆どの国民と一緒に地に飲み込まれ消滅してしまっているので、この振り子も同じ機能を持つと思われているのです」


 もう高橋は口を開きはしないが、顎鬚の説明が終ったら質問しようと待ち構えているのが傍目にも分かった。

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