昼食は館で
「じゃあ、また明日な」
「高橋と山田は午後からも魔法の講義かぁ。午後まで勉強するのはだりぃけど、魔法が使えるとかうらやま~。がんばれよっ!」
合同訓練初日のメニューも終わり、俺たちは仲間同士の挨拶を終え、それぞれの受入貴族に付き添われて帰宅することになった。
「彰人、明日の朝、ゆっくり話そう。そっちの貴族家の事についても知りたいし、お前も俺の方のを知りたいだろう?」
最後のは友達の辰徳だ。
お互いに心配している所は同じなんだな。
高橋と俺は魔法の訓練が午後からあるので、昼食後に再び城で一緒になる予定だ。
馬車に揺られ、モーリス伯爵の館に付き、昨日の晩餐と同じメンバーで食卓を囲む。
ただ、横長のテーブルに食卓という言葉の持つ暖かみは感じる事ができない。
お誕生席とその向かい側に当主夫妻がそれぞれ座り、当主の右側にリーブン、その横に俺、当主の左側にリーブンの妻、そしてマリアンヌとその妹が座っているのだが、料理の皿の数が多い事もあってか、お互いの席の間に結構なスペースがあるのだ。
一家の団らんという雰囲気ではない。
昨日の夜、アレコレしたマリアンヌはそんな事があったとは全然思わせない様に、大人しく食事をして、こちらをちらりとも見ない。
会話も男性しかしないので元々そんなに話す事もなく、主にカチャカチャと食器とカトラリーがぶつかる密やかな音が主だ。
「山田様、リーブン、今日は訓練の初日でした。どんな感想を持ちましたか?」
モーリス伯爵であるパリスがポツリポツリと食事中にする話題は合同訓練が主だ。
それと俺のジョブや、リーブンも同じジョブについて学べそうかなどを男だけで少し話しただけで、結局女たちは全員無言で食事を終わらせた。
男たちが全員席を立つのを待って、女たちも食卓から離れ、控えのドアから出て行った。
「山田様、リーブン、午後も頑張るんだそ」と、一言声を掛け、パリスはさっさと自分の執務室へ戻って行った。
「では、山田様、食べたばかりで落ち着かないかもしれませんが、そろそろ馬車へ乗りましょうか?魔術院は城の中ではあるのですが、独立した建物になっているので、移動に少しばかり時間が掛かるのです」
リーブンが食休み無しでの移動になる事をしきりに詫びながら俺を玄関まで誘導する。
朝、俺たちを王城まで乗せて昼前にここへ連れて来てくれた馬車に再び乗る。
これは俺が謁見の間からこの家に連れて来られた馬車と違って、装飾が少な目な馬車で、中に乗れるのも4人くらいまでの小さな馬車だ。
小さいだけに小回りが利くらしい。
リーブンと俺が座席に納まると、「チュイ」という御者が発する馬への掛け声が聞こえてガタンと馬車が動き始めた。
魔法という新しい技術を身に付けられるということで、俺の期待値は否が応でも上がって行く。
それはリーブンも同じの様だ。
「生まれて初めて魔法を見る事が出来るのも、山田様のお陰です」と嬉しそうに笑うリーブンの笑顔が眩しかった。




