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素振り訓練

「勇者様たちは基礎体力は素晴らしい。それについては現状維持のためだけの訓練で十分かと思います。でも、素振りに関しては皆さま今まで経験がないとの事ですので、1ヶ月の訓練をお願いします。可能であれば1か月後も継続して訓練して頂けると、より強くなれます。武器の扱いについては毎日地道に訓練する事が上達の早道ですので、毎日一緒に練習しましょう」

 基礎訓練が終ると教官役の騎士が一気に4人に増えた。


 槍、剣、ナイフ、盾の教官だ。

 槍術スキルの斎藤が槍、斥候スキルの井ノ川がナイフ、怪力の乃木坂が両手盾で、残りは剣で一括り。


 見ていて面白いのは乃木坂の両手盾。

 剣は予備として腰に携帯はするらしいけど、シールドバッシュを中心に盾そのものを武器として使う感じらしい。

 膨よかな人というのは、概して瞬発的な動きは得意で持続的な動きが苦手なので痩せ辛いという話しを聞いた事があるが、もしその説が正しいのなら乃木坂がシールドバッシュを多用する戦術で戦うのは正しいと思う。


 俺たちクラスメイトが素振りをする横で、受入貴族家の息子たちも同じ武器、同じジョブの素振りを習う。

 ん?パーティを組むのに何で同じジョブ?

 特に乃木坂なんて両手盾なのに、受入貴族であるパルモ子爵家のハーミットも両手盾とか意味不明なんですけど・・・・。

 しかも件のハーミットは痩せてヒョロヒョロなのに。適正が合ってない気がする。 

 更に言えば、乃木坂ん所は後2人騎士が付き、合計4人のパーティなのに両手盾が2人?意味不明だ。


 素振りをしている俺たちの後ろでダムエルと各貴族家の騎士たちが会話しているので、その内容もしっかり耳に入って来る。

 乃木坂の家だと両手盾二人なので、回復役と火力がメンバーとして必要となるとのこと。

 そりゃそうだろう。盾2枚にするよりはどっちかを攻撃特化の職にした方が断然効率が良いはず。

 でもこっちの奴らは乃木坂のパーティを見て、火力を上げる事より、盾を強固にするためにも補助系魔法が使える上位の回復役が必要とか話しているんだよな。

 その他の勇者パーティは補助系魔法が使えない回復のみの普通の回復役で大丈夫だろうとのこと。


 でもなぁ、ヘイト管理はどうするんだろう?

 盾だと、後衛や他の前衛職にヘイトが向く事の無い様、ヘイトを集めないとなのに、盾が2枚・・・・。

 盾が2枚だと魔王軍の兵はどっちにヘイトを向けるか迷わないかな。

 そして迷った挙句、回復役へ突進なんて事がなければいいけど・・・・。


 それより何より基礎体力や力も違っているのに、2枚盾なんて無理だと思うんだがなぁ・・・・。


 俺はリーブンから現地の人たちの殆どがスキルを持たず、いるとしても回復魔法が使える人が僅かにいるだけと聞いていたので、ダムエルたちの会話に不信感を持たなかったが、高橋たちはそういう話しを知らないみたいで、自分のパーティの回復役がバッファーを掛けられないのを受け入れられないみたいだ。

 やっていた素振りをやめてダムエルの方へ歩いて行った。


「高橋様、如何されましたか?」

 ダムエルの態度はいつも少し慇懃で、この時はその慇懃さが強く出ていた。それに少しムッとしたらしい高橋の口調はかなり強めだった。

「補助魔法はどのパーティも必須だと思いますっ。どのパーティにもちゃんと用意して下さい」


 聞き分けの無い子供に教えるかの様にダムエルの口調はくっきり、しかしゆっくりとなった。

「高橋様、この国では魔法スキルを持っているのは勇者様方のみです。稀に強い信仰心を持った者の中から回復魔法を使える様になる者が出て来ますが、ほんのわずかな人数です。実際、ウチの国で補助魔法を使えるのはたった2名で、その内1名は前回の勇者様です。その方は既にご高齢ですし、ご自身のパーティがございますので、解散させて皆さまのパーティへと言う事が難しいのです」

「そんなに補助魔法が使える回復役が少ないのか・・・・」

 高橋の納得した様子を少し馬鹿にした様な顔で見守っていたダムエルが、高橋の視線が自分に戻って来たと同時に和やかな表情へ切り替えたのが目に入った。


 ダムエルってどうにも好きになれないなぁ。

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