ジョブ
「それでは勇者の皆さま、皆さまのスキルを考慮し、前衛職、中衛職、後衛職に分けて訓練を行いたいと思います」
ダムエルが紙を見ながら俺らにジョブを振り分けた。
高橋は水魔法、火魔法、氷魔法、剣術というスキルを持っているので、前衛でも後衛でも熟せそうだと言う事で、合同訓練時は魔法剣士として訓練して欲しいので前衛という事になった。
魔法スキルに関しては、午前中の合同訓練終了後、毎日午後、城内にある魔術院で俺と一緒に魔法の使い方を習うそうだ。
そして魔法の威力が高く盾がなくても数発の魔法で敵を屠れる様なら後衛職として、魔法の威力が敵に対して低かったり、魔力が残り少なくなって来た時は前衛で対応して欲しいとのこと。
しかし、敵に対して魔法の威力がどれくらいとか、どうやって判別するのだろう?
1回魔法を打って様子見とかなのかな?それはそれで面倒臭い。
斎藤は槍術と体力だから、普通に前衛。
こいつは可成りのビビりなので、盾職が別に必要だと言われた。
まぁ普通に槍なら盾は別の人がやるよな。
この世界では違うのだろうか?
そう思っていたら、勇者以外の盾は弱いので、普通前衛職の勇者が盾も兼任するとのこと。
だから高橋も魔法を打って敵のヘイトを稼ぐと、現地の盾職では敵を前衛に留めておけない可能性が高いので、1回の魔法でどれだけ敵を削れるかが大事になるらしい。
う~ん、場所が違えば常識も違うのかな?
「俺様の槍術で敵を蹴散らせてやるぜ!」なんて息巻いていたが、努力を嫌う斎藤がどこまで出来る様になるかは想像がつかない。
それは他のクラスメイトも同じな様で、いつもの様に斎藤の俺様発言を華麗にスルーしている。
山口のスキルは剣術と素早さなので前衛だ。回避盾の様な動きも求められる場面が出てくるとのことで、盾としての動きも身につける様に言われていた。
こいつは心優しい面もあるのだが、如何せん深く考える事をしないので思った事をそのまま口にして、良くトラブルを起こしていた。
後熱しやすいのな。怒らせると面倒なんだが、めっちゃ沸点が低い。
あまり考えないというのは、条件反射的な動きが主だろうから、回避盾には向いているのかも?コジツケが過ぎるかな?あははは。
体も小さい方なので的としては攻撃を回避しやすいかもしれない。
山口ん所の貴族家では年子の息子が3人おり、誰が山口とパーティを組むかで争っているらしい。
だから今朝の合同練習にも息子が3人で参加している。
理知的なイメージの井ノ川は、外見に違わず頭が良く、常に冷静沈着だ。
顔は取り立てて良いわけではないが、背はそこそこ高く、周りにあまり興味がなく我が道を行く感じのヤツだ。
スキルが斥候と素早さなので、ジョブと言えばもう斥候しかないだろう。
斥候という仕事がら危険な目に合う確率も、他のジョブに比べれば高いだろうが、色んな兆候などを冷静にキャッチして危険を回避しそうな奴なのだ。
地球にいた頃から何人か彼女がいたらしく異性関係は結構充実していたらしい。
あ、別に複数彼女がいたからと言って何股もしてたわけじゃなく、歴代彼女が複数って意味らしい。
だから昨夜、貴族の娘が夜の訪問をしに来ても、相手が緊張しすぎているのを見て、当主に言いつけられた娘が困らない様に部屋へは入れたが何もせずに夜が明けたそうだ。
けっ!なんかスカしてやんの!
俺の友達の辰徳は剣術と体力なので前衛だな。
体格もがっちりしているし、何より愛嬌がありピンチの時も何故か少し余裕がありげに見える所が盾にも向いていると思う。
乃木坂は怪力しかスキルがないので、問答無用で盾職にされてしまった。
横幅があるので衝撃を受けても堪えられるだろうと予測されたのと、継続した敏捷さに欠けるのであまり動かない盾職が向いているとのこと。
盾と怪力を使って敵の攻撃を跳ね除けて欲しいとか言われていたな。
そして俺は土魔法や魔力操作など魔法系のスキル持ちだが、同時に剣術スキルも持ち合わせているために、高橋と同じ感じになるのかと思ったら土魔法は水や火と違って攻撃魔法の威力が低いとのことで、前衛と言われた。
土魔法はストーンウォールなどの防御として前衛で使って欲しいとのこと。
もちろん、午前中は前衛としての訓練、午後は高橋と一緒に魔法の訓練に参加する事になっている。




