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四方山話

 だだっ広い運動場の様な場所。

 でもちゃんと木製の塀でおおわれている。

 王城の真裏くらいに位置しているらしく、昨日、俺たちが呼び出された陰気な塔が近くに見える。


「おはよう」

「おう、おはよう。山口、お前ん家の貴族家ってどうだった?」等と、みんなが集まって昨日の謁見の間を出てからの情報の交換に忙しい。


 辰徳も真っ先に俺の方に駆け寄り、「大丈夫だったか?」と聞いて来た。

 俺も同じ様に辰徳の事を気にしていたので、こいつも俺と同じ様に心配してくれていると思って、謁見の間の後について俺の身に起こった事を逐一報告をした。

 辰徳に安心して欲しかったのだ。

 それは辰徳の方も同じ様で、閲覧の間の後の流れは俺と大体同じ様な感じだったらしいと包み隠さず報告してくれた。


 クラスメイトが固まっている端っこにポツネンと立っている乃木坂は一日経っても暗い表情で、何か思い詰めているらしい。

 そのせいか、俺も含めクラスメイトの誰も近寄らない。


 各貴族家の子息も合同練習に参加するらしく一緒にここまで来ている。

 子息だけではなく、各家付きの騎士たちもだ。

 この合同練習が終了する1か月後あたりに、平均して3~5名のパーティを貴族家毎に作るらしい。

 リーブンによると、パーティを組む前に勇者と貴族の後継ぎたちがもっと親しくなる様にという思惑でリーブンたちも通って来る手筈になっているっぽい。


 日本から召喚された俺たちは一か所に集まって、貴族たちには分からない日本語で会話する。

 貴族たちも彼らで一塊になって話しをするが、あちらの話しは俺らに筒抜けだ。

 しかもこちらは世界渡りで勇者仕様のスペックの高い体で小声の会話も全部聞こえるのだ。

 かてて加えて、ダムエルによると俺たちは全員言語スキルが魂に植え付けられているそうだからな。

 言語の違いも問題ない。


 反対にあっちは、こちらの会話の中身を知りえないということで、何となく貴族家の子息に対し優越感を感じる。

 それはみんなも同じ様で、殊更、彼らに聞かれては不味い話しを態としたり、それを聞き取れない彼らを上から目線で見下ろすのだ。

 となると当然昨夜の話しに集中する事になった。


「俺ん所、夜中に伯爵の娘が部屋に来てさぁ。ふふふふ」

「あ、俺ん所もそうだぞ。何か結婚しなくていいから好きにしてくれって」

「あ、それ、僕ん所もだ」


 蓋を開けると、乃木坂以外は全員、世話になっている貴族家の娘か、親戚の子を宛がわれたらしい。

 みんな若い男なわけで、貴族の綺麗な女性を好きにして良いと言われ、井ノ川以外の全員が据え膳食わぬは~で手を出したらしい。

 俺も含めてだけど。

 だからみんな朝からニタっという擬音がふさわしい笑みを浮かべていたのか。


 乃木坂は、何もなかったと言っているけど、何か様子がおかしい。


「なぁ、乃木坂ん所は本当に何もなかったの?」

「・・・・うん・・・・」

「なんで?」

 おいおい、斎藤、何でって聞いてやんなよ。

 こいつはいつもヘラヘラして、自分より強い人にはこびへつらい、自分よりカーストが下だと見ると思いやりの欠片も無い対応をする奴なんだよな。


「・・・・娘が嫌がった・・・・」

「え!?」

 斎藤が驚いて少し体が引けた感じだ。

 顔は乃木坂も斎藤もそんなに違いがないくらい、美男とは一生呼ばれないであろう容姿だ。

 違いがあるとすれば体形と今回の召喚で与えられたスキルくらいのものだ。

 体形は乃木坂はでっぷり、斎藤がぽっちゃり。

 スキルは乃木坂は怪力、斎藤が槍術と体力だ。

 微々たる違いだと思うけど・・・・。


 勉強は二人ともできないし、いわゆる引き籠り体質なのも一緒。

 努力をしないで、結果が思う様にいかないといい訳ばかりするところも似ているが、乃木坂の方がいじけ度合いが強く、すぐに黙ってしまう傾向がある気がする。

 対して斎藤は自分が上だと思ったら思いっきり上から目線の発言をする。

 そのくらいの違いしか無い。

 なのに斎藤の方にはその家の娘がちゃんと夜の訪問をした様だ。

 何が違うのだろう?


「勇者様、各貴族家の御子息様方、おはようございます」

 みんなでワチャワチャしていたら、ダムエルが訓練場に来た。

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