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召喚

 その時、教室の床に大きな魔法陣が現れ、俺を含む同じクラスの男子生徒10名が光に包まれた。

 ここは公立の普通科高校。

 進学校として有名なわけでもなく、スポーツ校でもない。

 田舎にある何の変哲もない高校だ。


 2年1組、次は体育の授業なので、女子生徒のみがグランド脇にある女子更衣室で着替えており、男子生徒はカーテンもない教室で着替え中だった。

 ただ廊下側の窓は下半分がすりガラスになっているので、ちょっと腰を屈めば外からは着替えを覗かれずに済む。

 ってか、男子用にも更衣室くらい用意しろよとは思うが、生徒数の少ない貧乏な公立高校では、予算が足りなかったのか、各種部室以外に男子生徒専用の更衣室なんてここにはない。

 そうなると体育の時間の度に文系クラブや帰宅部の男子学生は更衣室を求めて彷徨わなくてはならなくなる。

 それを避けるために男子生徒は一律ホームルームでの着替えとなったらしい。


 まず、眩しい光が視界いっぱいに発生し、10名全員が瞼を閉じた。

 続いて、飛行機の着陸時のキーンといった耳鳴りを更に酷くした耳鳴りが襲ってくる。

 痛い!


 俺は咄嗟に両手の指を耳に突っ込んで、大きく欠伸の様に口を開け、何度も唾を飲む。

 しかし、一向に耳鳴りは止まず頭痛が始まり、その痛みは徐々に酷くなって来た。


 立ったまま着替えていたので、もちろん今も立ったままのはずなのに、今自分が立ったままなのか、横になっているのか感覚が掴めない。

 浮いている?

 そんな事も確かめられないくらい頭痛が酷くなってきた。

 胸中では不安の塊がデーンといすわっている事は感じるが、今は何も考えられない。

 痛い!痛い!痛い!




 ん?ここは?

 誰かが俺の体を揺すっている。

 今は俺が立っているのか横になっているのか分かる。

 俺は石の様な冷たい建材の上に横になっていた。


「おい!彰人。起きろ!起きろよ」

 聞き覚えのある鈴木辰徳の声がする。

 薄っすら目を開けると、案の定、辰徳が俺の横に座り込んで未だに俺の体を揺すっている。

 俺の唯一の友達で、がっしりした体躯の愛嬌のある顔の男だ。


「カッチカッチ」

 何かの機械音がする。


「起きたのか?大変な事になってる」

 辰徳の焦った様な小声がやけに響いた。

 建物に反響したのだ。

 硬質な壁にあたり跳ね返って来た音。

 小さな声でも十分に聞こえるくらいの静謐。

 寒いと感じるくらいの低温の澄んだ空気。

「カッチカッチ」

 その中でずっと続いている小さな機械音。


 上半身を起こすと、古い石造りの部屋の中だった。

 円形の部屋とは珍しい。

 しかも窓は遥か上、高い所にありすぎて大きい窓が小さく見えているのか、それとも窓自体が小さいのか判断が付きかねたが、そんな離れた光源しかない薄暗い部屋。

 そこに俺たちクラスメイト7名が横たわっていたり、座り込んでいたり。


「田中も起きたのか?」

 クラスでもリーダー的な高橋が、上体を起こした俺を見て辰徳に確認している。

 こいつは背も高く、顔も良い。

 何せ背が高いだけでなく手足が長くモデルの様な外見ということもあり、学校の女子の憧れの的だ。

 中学からやっているらしいサッカーの部活でも部長で、何をやらせてもそつなく熟すので、1年の内から周りに一目置かれ、自然とリーダー的な立ち位置に落ち着いた奴だ。

「ああ、起きた」

 辰徳が返事する前に自分の喉から発せられた声は、普段の声より幾分掠れて聞こえた。


「教室では10人いたはずなのに、ここには7人しかいないんだ。それにまだ斎藤と山口は横になったままだ」

「高橋・・・・ここは俺たちだけか?」

 そう聞いた時、壁際に並んで立っている男たちに気付いた。

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