08 戦争
「さぁ、戦争の始まりよ、敵の量は多いわ。しかしこの私が居るからには負はないわ。皆出陣よ!」
「オオオォォォオォォ!」
お嬢様の号令で皆が気合が入ったさっきまで少しナヨナヨしてたのに、やはりお嬢様にはカリスマがあるのか?
「私も流れに乗じて参戦しましょうか?」
「いえまだよ」
どうやらまだ出陣できないらしい。自分が今どれだけの実力があるのかは分からないが、実力を試すにはちょうどいい機会だろう。
「伝令!一騎こちらに突っ込んできます!ネームド恐らく鬼神です」
なんかすごいことになってるな。1人でこっちに突っ込んでくるってよほどの自信家かそれほどの実力を本当に持っているのか。気になるのはネームドという言葉だ。
「ネームドですか?」
「ネームドというのは戦争などで功績を上げたやつのことよ。鬼神は二つ名と言われて勝手に言われているやつが広がっただけよ恥ずかしいわね」
お嬢様が私の質問にすぐ答えてくれた。なるほど戦争で功績を立てれるほどの実力者か最初の相手にしては強すぎるここは誰かにやってもらおう。
「クリム貴方がやりなさい」
「………え?」
なんかお嬢様が変なことを言ってたけど気の所為だろう。うん気の所為だ。
「聞こえなかったかしら?鬼神はクリム貴方がやりなさい」
なんかすごい笑顔で言われている………気がする。これは………断れない雰囲気が………。
「拒否権はないわよ」
うん逃げ道が無いなった。うん諦めよう。
「はぁ、わかりました。最善は尽くしましょう」
やばいことになったな。魔力探知に入った!アイツお嬢様よりちょっと強いぐらいか?あの鎧……魔力が帯びてる?勝てる見込みはあまりなさそう。だが死ぬ訳にはいかない。
「暗器が効けばいいのですが………恐らく鎧に防がれる。相手の鎧のつなぎ目を狙わせてくれるなら勝ち目はありますが……」
思ったより移動が早い‥‥‥もう付きそうだな。
「人の気配があると思ったら‥‥黒髪かよ‥‥‥。ってお前………強そうだな。すまねぇ強いやつには礼儀が必要だ。おっと自己紹介がまだだったな、俺はブルだ苗字は無い孤児出身だからな。お前俺の部隊に入らねぇか?帝国は黒髪に厳しいだろ、だが俺等はちげぇ俺も最初はあんなんだったが実力さえあれば認められる俺等も元嫌われ者だ。だからな‥‥…」
なんか男がベラベラとよくわからないことをずっと喋っている。殆ど聞いてなかったなんて言ってたんだ?まぁどうせ悪口とかだろう喋り終わるまでお嬢様のことを考えてよう。
「‥…ってぇわけよ」
やっと喋り終わったらしい。だいぶ長かったな10分ぐらいか?
「返答なしか。その身のこなし誰かに雇われてんだろ帝国にもそういうやつが居るんだな」
いやしかし1人だけでそこまで喋ることができるのはもはや才能じゃない?すごい人も居るもんだ。
「警戒してんのか?じゃあ始めるか」
おっと自分の世界に入りすぎた何やら始まるようだ。
私は武器を取り出し魔法の準備も始める。ここは【腐食】を使っておこう。他の魔法も使ってみてわかったが【腐食】が一番使いやすくて便利だ。
「おっ構えたな……お前気づかなかったが目が見えてねぇな。だが手加減はしねぇ」
構え的に剣士かアルバスさんとの戦いである程度慣れてはいるが油断はしない。
「行くぞ!」
うお!早い練習してなかったら一撃で終わってたな。首を正確に狙ってくるか厄介だ。しかもあの鎧さっきから魔法が通らない。魔力を帯びているからか?あの魔力より強く打ち込めば……。
「なんだ?鎧が‥…」
どうやらやっと魔法が通ったようだ、かなり魔力を込めないと入らないか。
「厄介ですね」
魔法はメインアタックにはできないか。ならば‥‥‥。
「やっとこっち来たか」
男も私の攻撃に合わせて攻撃を放ってくる。しかしこいつは魔法をまだ使ってない、剣技はアルバスさんよりは分かりやすいが威力はこっちの方が高そうだ。
「よく避けるな。本当に目見えてないのか?」
よく言うな。かなりギリギリだぞ少しでも動きを間違えれば首が飛ぶ。アイツなかなか首を狙わせてはくれないか。ならば狙うのはやはり鎧の間か。
「鎧の隙間を確実に狙ってくるか。やるな」
確実に防いでくる。こっちに勝ち筋が見えない‥…‥どうするか。あっちは息が上げてない。こっちはもうすでに疲れてるってのに。
「はぁ…本当に厄介ですね。初戦闘が貴方なんて」
「初戦闘が俺かぁそれはスゲェなよく俺の動きについて行けるな」
「ハァハァかなりギリギリですよ」
どっちも攻撃があたってないが体力はあちらが上しかもあっちには魔法が残っている。かなり厳しい状況だ。
「なかなか当たらねぇな。そろそろ魔法を使うか」
やっと魔法を使ってくるか。
「まずはこいつだ!」
下から魔力反応⁉この魔法は土魔法か?地面が盛り上がった、しかもこの地面が盛り上がった物魔力を帯びている。
「スゲェな一応初見殺し何だが、まぁ避けると思ってたけどな。さぁまだまだ行くぞ」
チッさっきまでは近づけていたけど段々離されてる魔法でケリをつける気か?
「いッ」
ちょっと掠ったか患部が少しジンジンする。
「やっと当たったか。まだまだ行くぜ!」
男が突っ込んでくる。下からまた魔法反応か、クソっそれぞれだったら対応はできるが両方はキツイぞ私も魔法をじゃんじゃん使っていかないと確実に負ける。
「【崩壊】」
私の触った土が崩れる。【崩壊】触れたあらゆるものを崩壊させる。最近できるようになった中級魔法だこれの弱点は対象物に触れなければいけないことだ。上級にはこれを遠距離でできるものがあるが会得はできなかった。アイツに触れさえすれば鎧は崩壊するだろうだがアイツがそんな隙を晒すとは思えない。
「何だぁ?俺の魔法が崩れたぞ、何かの魔法か?いや黒髪が魔法を仕えないのはガキでも知っている。魔法具かアーティファクトの影響か」
勘違いしてくれるのは好都合だ決めきれればいいが。
「うッ」
男の剣を躱しきれなかった足を切られたか。魔法はなんとか対応出来ているがそれでもキツイ。足を切られたせいでさっきよりも機動力も落ちている。このまま続けても無駄か‥‥‥ならあの作戦を使うか。
「こっちに突っ込んでくるか!捨て身の作戦か?甘いぞ!」
男の剣が私の腹を刺した。これを狙っていたことも知らず。私は男の顔面を掴む。
「【崩壊】」
「何だ?まぁいい」
男は刺した剣を捻り外に向かって凪いだ。私のお腹はヘソから胃の方に向かって切られた。だが魔法はアイツに効いているアイツが死ぬのも時間の問‥…題‥だろ‥‥‥う。私の意識はそこで途切れた。
***
「‥‥ム!‥リム!‥‥‥クリム!」
私の意識が戻ったときにはお嬢様が私のもとにいた。
「ここは…?それに傷が‥‥」
「傷は私が治したわ!それよりも!」
どうやらお嬢様は声が震えて私を心配しているらしい。お嬢様があそこに送り込んだくせに。
「心配ありません。しかし私が対峙した男は?」
私は一番の心配を口に出す。アイツが死んでいなければ‥‥。
「アイツは死んでいたわ。頭から胸ぐらいまで無くなってたから判断しずらかったけど装備とかを照らし合わせて判断したわ」
良かった私が一矢報いた成果は出たようだ。無駄じゃなかったようで。う〜んしかし剣は通用しなかったか‥…もっと練習しないといけないな。
「私があそこに送ったのは事実だけど無理そうだったら戻ってきても良かったのよ?別に戻ってきても捨てたりしないわよ。それより貴方が無事で良かったわ」
「ご心配をかけたようで申し訳ありません。もう立てますので」
私は立ち上がりお嬢様が立ち上がれるように手を添える。
「ありがとう。それでアンタ何見てんのよ。見せもんじゃないわよさっさと戦局を報告なさい」
どうやら兵士さんに見られていたようだ。お嬢様も見られたのは恥ずかしかったのか誤魔化すかのように命令を出す。
「はっ敵兵は大将を失い統率を失い壊滅状態まで追い込み撤退をしました」
「せめて全滅までやってほしかったけど仕方ないわ。元々期待はしていなかったし」
おっとお嬢様?せめて労って上げては‥‥。まぁあのお嬢様が兵士に労いの言葉をかけてたら怖いけどね。
戦争は思ったよりあっさり終わった。戦争より事後処理の方が時間がかかっていた。特にお嬢様は忙しそうだ。
「クソジジイが書類送ったでしょうが。なんで見てないのよ!」
うん忙しそうだ。私はサポートぐらいしか出来ないけどね。頑張ってお嬢様。