07 戦争準備
「お嬢様準備って何すればよいでしょうか?」
私はお嬢様が食事を摂る部屋に戻った。
「そうね、従者が王に招待されることは初めてだから。準備しろって言ったけど特にすることもないわ。まあ私の服を用意しなさい。私も一緒に行くわ。じゃあねアルバス」
「兵士さんアルバスっていうんですね。それじゃあアルバスさん失礼します」
私は兵士さんもといアルバスさんに一礼しお嬢様の後ろをついて行く。
「貴方アルバスの名前知らなかったのね。一週間も練習に付き合ってくれたのに」
「私に良くしてくれたのが彼だけでしたし。珍しい方ですよね、黒髪にも一切嫌悪感を示しませんでしたし」
最初に訓練所に出向いた時、練習の相手を探したけど皆さんは嫌悪感をあらわにして拒否してたけど彼だけがすぐ了承してくれたんだよね。
「まぁ、アイツはそういうやつだよ。アイツが嫌いなのは強いからって努力しないやつだけだもの。逆に貴方は気に入られてるのかもね」
「なぜですか?」
「だって貴方努力家じゃない。目が見えないからって言い訳せずに魔法や近接の練習、掃除や料理まで自分のできることを頑張ってるじゃないそういうところ私もすきよ」
お嬢様に褒められて嬉しいこれまでの努力が無駄じゃなかったと思える。まだまだ精進しよっと。
「お褒めいただき有難うございます」
お嬢様と会話をしながら歩いているとお嬢様の部屋の前にたどり着いた。
「これを着せなさい」
お嬢様が渡してきたドレスを言われた通りお嬢様に着せていく。最初はこれも大変だったな。
「ありがとう。さあ早速城に向かいましょう」
***
「馬車で移動しても遠いわね」
馬車で移動中にお嬢様が愚痴をたれる。たしかにお嬢様の屋敷から王都と言われる場所はかなり遠い。私は暇な時間に慣れているがお嬢様はそうではない。先程から話したり、すぐできる遊びをした。
懐かしいな前よくやってたな1人じゃんけん、1人しりとり、1人あっち向いてホイ。勉強の本以外にも遊びの本も合ったからな、あんまり見なかったけど。
「お嬢様見えてきましたよ」
外にいる御者の人が話しかけてくる。どうやら王都が近づいてきたらしい。
朝出てきて今は夕方ぐらいだろう。1日かからなかっただけ良かったと思おう。
「戦争が一回で終わるわけないしこれから何度も呼ばれると思うと。嫌になるわね」
お嬢様がげんなりしている。また呼ばれるのは確かにめんどくさい1日の大半が移動に使われるのは辛いものがある。
「こんな時間まで検問があるのね、まあすぐに通れるから関係ないわね」
どうやら検問が行われているらしい。セキュリティとしてはいいのかな?
「どこの家のものだ?」
「ホワイト家の者です。中におられるのはレミルラ様です」
「わかった通ってよし」
そんなやり取りが外から聞こえたセキュリティ的にはいいと思ってたけど、結構ガバガバだった。
それはそれでここが王都か日が落ちてきてる時間だけどまだ賑わっている声が聞こえる。
「早速王城に行くわよ。さっさと用事を済ませて遊びましょう。なかなか遊ぶ機会なんてないもの」
なんだかお嬢様がウキウキしている。貴族のお嬢様が城下町で遊んでいるイメージはないけど………まっ貴族だからってイメージを押し付けるのは野暮か。
「さあさあ着いたわよ」
私は先に馬車から降りてお嬢様を下ろす。
「レミルラ・ホワイト様、王の謁見室はこちらです」
私とお嬢様は兵士に案内される。
「着きました」
兵士の声と同時に大きな物が動く音がした。恐らく扉を開けているのだろう。
私はお嬢様の後ろを歩いていると様々な声が聞こえる。
「なぜ黒髪が高貴な謁見室に居るのかしら」「チッ黒髪を見ると目が腐っちまう」「顔は良いですな。ホワイト家の者じゃなければ攫って奴隷にするのも……」
流石、黒髪差別だ悪口が多い。私は気にしないが………先からお嬢様の機嫌が悪いように感じる。
「チッ、クリムをよく知らない無能共が私のお気に入りを馬鹿にするなんていい度胸じゃない」
うん、本当に機嫌が悪いようだ。
「静粛にするがいい。よく来たなレミルラ・ホワイトそしてその従者よ。私はガルアー・ロブ・アヴィファル、この国の王である」
すごい威厳だ魔力量も相当多い、お嬢様よりも数倍高いか‥…流石一国をまとめる王ってわけか。
「レミルラ・ホワイトに命ずる此度の戦争の指揮を行い勝ってみせよ」
う〜んこれ私来る必要あったかな?ここに入らなくても良かった気がするんだけど……。
「承りました。この私レミルラ・ホワイトが戦争を終わらせましょう」
私も隣でお嬢様と同じように頭を下げる。
「では下がれ。今夜は王城に泊らせる、明日の朝に作戦会議を行う」
私はお嬢様の後をついて謁見室を出る。私本当にいらなかった。
「では案内します」
兵士の方が案内を行う。
***
「あの黒髪の従者………なかなか強そうですわ。それに……あの顔私の好みですわ」
王の横にいる金髪の女性がそんな声を上げる。
「確かにあやつは強そうだ。お前の好みに口を出しはしたくないが、お前はこの国の王女ぞ皆に見られていることを努々忘れるでないぞ」
「わかっていますわ、お父様」
***
「着きましたこちらです」
見えないがそこそこ広そうだ。「広いわね」本当に広かったようだ。
「従者の方はこちらに」
「私の分もあるのですか?」
私の部屋もあるなら驚きだが。「いえ従者の方は城下町で宿を取ってください」うんなんか知ってたかも。
「わかりました。お嬢様では失礼します」
私はお嬢様に一礼して兵士の方の後をついていこうとしたがお嬢様に襟を掴まれた。
「おっ……お嬢様?」
「クリム………。貴方は私と寝なさい」
お嬢様がすごい笑顔で言っている気がする。お嬢様……が私をベットに誘ってる……だと?!しかし私は従者です。お嬢様と寝るなんて………正直女性からの誘いは初めてですしうまくできるか分かりません。
「お嬢様。従者と一緒に寝るなんてだめですよ」
「何言ってるの?私の従者になった日私のベットでぐっすり眠っていたじゃない」
「それとこれは話が違います。しかもあのときはお嬢様は起きていたじゃないですか」
お嬢様は一向に離してくれない。
「クリムこれは命令よ。私と寝なさい」
命令ならば仕方がな………。じゃなくこれは命令だとしてもだめです。
「だめです。お嬢様これ以上兵士さんを待たせるわけにはいけません」
なかなかお嬢様が離してくれない。うーんどうしよ……う。
「最初から眠らせればよかったわ。思ったより強情でびっくりしたわ」
意識が落ちる前にお嬢様がそんな事を言っていた。
***
「う〜ん」
「あら、起きたのね」
なんだか前もこんなやり取りをしたな……。いやそうじゃなくて。
「お嬢様なぜそんなに私と一緒に寝ようとするのですか?」
「だって貴方可愛いもの。寝たいと思うのは必然よね」
なんか分からない理由を述べていますが、う〜ん自分の顔は知らないからな分からないや。
「はぁもう好きにしてください」
「あら潔いのね。それとも諦めたのかしら」
「諦めです。今回でお嬢様に何を言っても聞かれないということがわかったので良かったですよ」
はぁお嬢様には言葉で分からせるんじゃなくて逃げたほうが早く終わるし、これからはそうしよう。
「ほら明日は早いのよ。寝なさい」
あっ寝るってただ寝るだけ?ひどい勘違い………。恥ずかし〜。
「あら顔が赤いわよ。もしかして貴方……。違うことを考えてたわね、貴方私が思っているより」
「違いますよ。勘違いしないでくださいお嬢様明日早いって言いましたよね。早く寝ますよ」
ちょっと期待をしていたことはバレないようにしないと。
***
「やっと寝たわね。このこ私が寝ないとずっと起きてたし。魔法を使うと起きた時バレちゃうから大変だったわ。はぁ私のクリム起きてるときにこの子に甘えれないのよね拒絶するから」
なんかお腹が苦しい、それとお嬢様の声が聞こえる。………気の所為だろう。
***
「う~ん朝か…‥…お嬢様はまだ寝てるか」
私は立ち上がり服を着る。寝相は悪くないはずだけど寝間着がはだけている、まあいいか。
「お嬢様起きてください。朝ですよ」
私はお嬢様の肩を揺らしお嬢様を起こす。
「ふぁぁ〜クリム?随分早いわね。でももうちょっと」
「早くありませんよ。今日は戦争の作戦会議があるのですよ。さっさと支度を済ませますよ」
私はなかなかベットから降りないお嬢様を引きずり出す。
「む〜分かったわよ」
お嬢様が自分からベットから降りる。いやいやだったが。
「このドレスを着せなさい」
お嬢様がドレスを投げて渡してくる。
「お嬢様はしたないですよ。言っても仕方ありませんか……。」
私はお嬢様に手際よくドレスを着せる。
「ありがと、さあさっさと作戦会議を終わらせるわよ」
***
「だめよそこに配置すると………」「しかし!ここに………」「ここはどうだ……」
さっきから私は蚊帳の外だ前世の歴史の知識はあるけど活用できるとは限らない。かつ黒髪の私が発言できるわけないよね。
「ここで迎え撃つわ」」「そこは国境付近です。そこでやるとなると」「だがここはあまり」
早く終わらねぇかな。私ただの置物………置物。
「この作戦でいいかしら異論がある人は?………誰も居ないようねこれでやるわ。では解散」
どうやら終わったみたい。暇な時間はよくあったけどただの置物になったのは初めてかも。
「クリム置物になってないで城下町に行くわよ」
本当に置物扱いだったようだ。一応家の兵士の方は居るんだし私居なくても問題はなかったのでは?
「何考えてるか知らないけどよく階段とか降りられたわね」
どうやらいつの間にか城下町まで歩いてきてたようだ。
「考え事をした状態で体や口を動かせる能力は持っていたほうがいいですよ。色々と便利ですし時間の短縮にもなります」
「いやよめんどくさそうだし」
拒否されてしまった。まぁお嬢様はそう言うってわかってたけどね。でも本当に便利なんだけどな。何も考えてなくても男を誘える様になって殴られませんしね。
「なに遠い目をしてるの?」
「いえ本当に便利なんだけどと思っていただけです」
遠い目をしてるって私目はないんですけど……。お嬢様の観察眼がすごいと思っておこう。
「ふ〜んなんとなくわかったけど。めんどくさそうだからやっぱりいいわ」
「そうですか」
城下町を歩いていても黒髪の反応はよろしくない。さっきから大量の悪口と驚愕の声が聞こえる。
「なんで黒髪が居るんだ!」とか「あれはホワイト家のご令嬢じゃないか?なぜ黒髪が」
ふむふむいつも通り!気にしないでおこう。
それからはお嬢様と夕刻まで遊んだ。
***
「思ったより進軍が早いわね」
「軍はどのぐらいの量でしょうか?ここからだと魔法感知では分かりませんし」
「一万ぐらいかしら?こちらの兵は6000少しあちらに部があるけど。私と貴方なら4000の穴埋めぐらいできるでしょう」
おっと?すごい仕事量だ1人で2000ぐらいは確定でやらないといけないなんて。精々足掻いてやろう。
ん?足音が2つ………この足音は兵士ではない。この音は………。暗器か……、暗殺者こちらに暗殺者など居ない。
そこか!
「生憎私も暗器が使えるので。微細な音で大体何を使っているかはわかります。怯えないでいいですよ尋問をするだけですから」
「やっぱり送ってきたわね暗殺者」
「わかってたんですか?」「えぇ」
わかっていたなら教えてくれても良かっただろうに。
「だって言わなくても貴方なら気づいて対応してくれると思ってたのよ」
はぁ私に変な期待をしないでほしい。万が一私が気づかなかったらどうしてたんだろう。
まぁ何を言っても無駄だろう。
さぁ戦争の始まりだ。