04 与えられた光
「この子よ私が探していた子は!」「でっですが黒髪ですよ。流石にお父様も許可はしてくれないかと」
そんな声が聞こえ私は目を覚ます。
「何よ文句ある?私が欲しいと言ったのよ。貴方は私の言うと通りにしてればいいのよ。そもそもお父様の部下だからって私に口出ししないでくれる?」
うるさい……あの男でも起こすときは静かだったのに。
「あっ起きたのね……って貴方その目どうしたのよ?体も傷だらけだし」
普通はじめに体の傷ぐらいは気づくだろう。……私はなぜ起きて早々に知らない人にツッコミをしているのだろうか。
「直ぐに治すわね。【完全治癒】」
私の体の痛みが無くなった気がする。それよりも魔法というのはやはり存在するのだろう。今までは確証が取れなかったがここまで直ぐに傷が治るとは思えない。
「あら?なぜ目は治らないのかしら?……まさか!あの豚、呪い付きで傷をつけたのか!」
何故やら私の傷を治した女性が怒っている。
「取り乱したわ。ごめんなさい、私ではその目の傷は治せないわ。呪い付き………呪いはその呪いを付けた本人が解かない限り呪いは消えないわ」
歯を食いしばるように女性が呪い付きについて説明する。
「私がいつか絶対に治すわ。貴方のような子にそんな傷は似合わないわ」
女性が私の頬を撫でながら恥ずかしい言葉を囁く。正直まだ信用はできない。でもなぜだろうこの女性と一緒にいると少し、ほんの少しだけど気持ちが軽くなるような気がする。
「さっ帰るわよ」
女性が踵を返し引いていったが女性が急に立ち止まり
「何してるのかしら?貴方も行くのよ」
その場に立ち止まって動かない私にその女性は声をかけ。手を掴み私の歩幅に合わせてあるき始めた。有無を言わせず私は馬車に乗せられ、女性も私と対面するように座った。
「そういえば自己紹介がまだだったわね。私はレミルラ・ホワイト。ホワイト家の令嬢で世界で唯一の聖魔術の使い手よ。貴方は?」
かなり自慢げな話し方で自己紹介するレミルラと名乗る女性。私も聞いたことがある。あの貴族からの噂みたいなものだったが。聞けば自分の好きなこと以外は自分から動こうとはしないだとか、人使いが荒いだとか、人とは思えない容赦の無さで気に入らないものは様々な計画を立てたうえで徹底的に潰すだとか……悪い噂しかないのだが。質問されて黙っていては何されるかわからない。
「………私はただの奴隷です。」
「いや、貴方は今奴隷ではないわ。そのお腹の紋章を見て………。って見れないんだったわね、私が簡単に説明するわ」
どういうことだろう私は奴隷のはずでは?
「まずその奴隷紋と言われるものは、奴隷と奴隷商人と奴隷の主人にあたる人の血を混ぜて体を縛るという魔法で。傀儡魔法を使える人かそれに準ずる魔法具を持っているやつにしか使えない魔法よ。その魔法の効果は誰か一人が死ねば解くことができるわ、さっきの男かなり違法なことをしてたから国から処分されたのよ。はぁなんで処分されるってわかってるのに違法なことをするかねぇ、そんなに金がほしいのかしら」
あまり魔法については理解できなかったがどうやら私は奴隷ではないらしい。私は声と動作で嘘が見破れる視線の移動などはわからないけど。この女性が言っていることは本当と信じていいかもしれない。実際に普段はあの貴族との繋がりのようなものが感じられたけど今は感じ取ることができない。
「わかったかしら?そういえば貴方は名前はあるの?」
名前?元々いた世界では付けられてはいたけど。もう思い出せない何年も必要なかったから。
「私の名前はありません。必要ありませんでしたから」
女性は「そう」とだけ言い黙った。少しの間沈黙が続いたが急に
「決めたわ!」
と大きな声を上げた。びっくりするからやめてほしい。
「貴方の名前を決めたわ。貴方はこれからはクリムと名乗りなさい」
何故かわたしの名前はクリムとなったらしい
「構いませんが。名付けてどうするおつもりですか…‥…」
「決まってるじゃない。私に仕えるのよ」
声を聞く限りとても興奮しているような気がする。しかし私は黒髪で迷惑をかけてしまうかもしれない。断らなきゃ
「あっ……ありがたいお言葉ですが。私は黒髪です。貴方様にご迷惑をおかけしてしまいます。私なんてここで死んでいたほうが………」
私の言葉は最後まで続かなかった。女性が急に私の両肩を掴んできたから
「あなたは強い子よあなたはここで命を散らす器じゃない。私についてきなさい」
目が見えないはずなのになぜかその時だけはこの方いや……お嬢様の光で姿が見えた気がした。
その言葉だけで何故か私は救われた気がした。私はこの方についていく。誰がなんと言おうと。
「わかりました。お嬢様のその言葉で私は救われた気がします。お嬢様貴方に見放されない限り私は貴方様についていきます」
私は緊張がほぐれたのか急な眠気に襲われた。
***
「ぐっすり眠っているわね。私が調べた限りこの子は9歳…1年もあんな生活をしていたなんて……。思い出してきたらイラついてきたわね。あの豚、殺し足りないわ。もう少し痛めつけたあとに殺せばよかった。私がやっと見つけた黒髪……。かつて魔王として君臨した者も黒髪……それに毛先が深紅…伝説と言われた魔王と同じ………。ふふふ私はなんて運がいいのかしら1000年前の夢をやっと実現できそうね。」