12 不思議な子供
「ガイズさんとダンジョンに潜って欲しいですか……」
「そうよ魔法の練習になるし人間以外の戦い方や協力の仕方も学べるでしょう」
この世界にはダンジョンと言われるものが存在している。ダンジョンの種類は様々だがダンジョンは国の財産とされていてそれを目当てに戦争を行っている国もあるくらいだ。王国と帝国は違うが。そもそもそれぞれの国の城は全部元は城型ダンジョンと言われている。
「お嬢様の命令とあらば従います。ガイズさん部屋の外にいるのは分かっています。少し出てきてください」
「なんで気づいたんだよ」
「呼吸のペースや近づいて来る足音で分かります。それより準備を始めてください」
ガイズは「バケモンかよ」と言いながら自室の方へ行った。
しかしお嬢様はやはり何かを隠していらっしゃいますね。私たちがいない間に何かをするおつもりなのでしょうか。隠すということは……いえ詮索はしないでおきましょう。お嬢様も年齢的に思春期と言われる時期ですし……。
「分かりました」
私は一礼し部屋から出た。
「クリムさん……俺らダンジョンに行くんだよな」
「そうですよ。どうかしたんですか?」
「いや格好が……」
格好がどうかしたのでしょうか?特におかしな所はないはずですが。
「確かに俺はクリムさんの着ている服はそれ以外見たことはねぇただなダンジョン潜るのにメイド服はおかしいからな」
「私はこの服しか持っていませんし、メイド服は私の勝負服ですよ」
「仕方ねぇ無駄に慣れない物を着せるよりマシだろ」
ガイズは半ば諦めたようにクリムの服装を認めた。
「ご理解いただきありがとうございますガイズさん」
「前から言いたかったけど俺の事は呼び捨てでいいぞ」
「そうですかではガイズと呼ばさせて貰います。ガイズも私のことは好きに読んで構いませんよ」
「いや魔法を教えてもらったから個人的に師匠と勝手に思ってるからな今はさん付けで呼ばせてもらうぜ。まぁいつか俺がアンタに勝った時初めて呼び捨てで呼ばせてもらうぜ」
ガイズが私の事を師匠だと思っていたなんて……ですがあまり悪い気はしませんね。
「では行きましょうか」
***
「行ったわね。じゃあ私もやる事をやって来ましょう」
「お嬢様こちらです」
「あら早いわね」
レミルラは実験施設に足を向け歩き始めた。
「この子が脱走したの?」
レミルラは目の前にいる小柄な少女に目を向ける。
「えぇどうやら怪異を用いてカプセルを破壊したのかと」
「なるほどね。知識は無いものだと思っていたのだけど、でもこれは嬉しい誤算だわ。お父様はこの子の事を知ってる?」
「いえアルカ様とお嬢様の実験施設は別々に有りますし入口は常に監視がおりますので知らないと思われます」
じゃあこの子を屋敷に連れてもクソ親父にバレる心配は無いわね。
「わかったわ。さて少しばかり尋問をしましょう。その前に【完全治癒】」
目の前にいる少女が魔法によって治癒されるはずが。
「……?治らないわね」
目の前の子が治った感覚がない。呪付きでの攻撃?いや外の外傷はないしカプセルによって攻撃を受ける可能性は低いわね。
「ではどうしますか」
「そもそもに前提で会話が理解出来ない可能性があるわ。けど一旦簡単な質問をするわ。貴方、私の言っていることわかるかしら?」
少女は私の目をただ見つめるだけで肯定も否定もしない。
「分かるなら首を縦に振りなさい」
この後も質問を繰り返したが反応はなかった。
「まずは言語能力習得が先のようね。でも私はまだする事があるから私自身で教えることはできないわね。施設内にこの子を置く場所もないし……なら貴方この子を連れて屋敷に戻って私の部屋に置いてくれないかしら。」
「しかし得体の知れない者を屋敷に入れる訳には」
「黙りなさいこれは命令よ。ここに置いておくと他のカプセルを破壊される可能性があるわ」
「承知しました」
研究員の男が少女を触れようとした時。男は吹き飛び、血まみれになった男はピクリとも動かなくなった。
「これは怪異?!」
少女を守る様に1匹の怪異が目の前に現れた。
身長は3メートル越え、だがそれよりはるかに大きい腕、足は退化しているのか私の足より小さい。どうやら腕で歩くようだ。
怪異が私の方に顔を向けた。顔らしいパーツは無くただの肉塊の様だが。
「ちょっと不味いわね。【命の守り】【聖なる場所】」
とりあえず1発は耐えれるわね。
どうするか考えていると怪異が目の前に現れた。
流石に早すぎるわよ。これは避けれないわね1発当たって距離を取るしかなさそうね。
「ウッ」
私はボールの様に跳ねて壁にぶつかる。
「死なないとはいえ痛いものは痛いのよ。【命の守り】」
どう逃げるか思考を巡らせる。
あの速度で移動できるなら逃げることはほぼ不可能でしょうね。しかも一発でこれだけボロボロになるなら次の【命の守り】はほぼ意味が無いでしょうね。じゃあ………。
私が攻撃を仕掛けようとした瞬間、怪異の姿が掻き消えた周りを見回してもどこにも居ない。
ふと少女の方に目を向けると私の方に向かって歩いてきていた。私は警戒を怠らず少女に近ずいた。
少女の元へ行くと少女は両腕を私の方に向けた。
「えっと……どうしたのかしら」
私がどうするか迷っていたら少女が抱きついてきた。
「ちょっと何してるの?」
私は少女の腕を引きはがそうとすると 、絶対離さないと言わんばかりに力を強めた。
「痛たたた。分かったわそれ以上力を加えないでちょうだい少し中身が出そうよ」
私が少女の腕から手を離すと少女の力も比例して弱まった。
「はぁ初めて死ぬかと思ったわ。でもどうしようかしらこの子離してくれなさそうだし……。仕方ない抱っこするしかないわね」
少女は抵抗せず私に持ち上げられた。何故好意を向けられているか分からないが、それは後で調べてみましょう。
***
「で、なんで貴方たちはここに居るのかしら?」
「いやーダンジョンって総合ギルド管理だろ。そこに黒髪と元盗賊で顔が知られているやつが顔を出してみろ。かなり追い回されたぞ何とか撒いたけどよ」
「申し訳ありませんお嬢様。しかしガイズ、追い回された原因はガイズですよ。私は嫌われているだけなので追い回される理由になりませんよ」
クリムはガイズとそんなやり取りをする。
「まぁそんな事はどうでもいいんですよ。お嬢様が腕に抱えているその子供は何でしょうか?少し禍々しい魔力を感じますが」
「あーこの子は見つけたのよ」
「………分かりました。深くは聞きません、どうするかはお嬢様に任せます」
皆の魔力とは雰囲気が違います。闇の魔力でしょうか?ですがお嬢様は闇の魔力を扱えるのは私だけと仰っていた。お嬢様が私に嘘を教えたか、突然変異で生まれたのか、まぁお嬢様に危害を加えるのであれば殺す。それだけ考えておきましょう。