11 秘密の実験
「はぁクリムには少し悪いことをしているわね。でも流石にアレを知られればあの子でも私を軽蔑すかかもしれないと思うと言えないのよ」
「おっ姉御じゃねーか。朝食か?」
突然の声に体が跳ねる。
「なんだガイズじゃない何故ここにいるかしら?クリムから朝食をしているはずと聞いたのだけど」
平静を装う様に話す。
「朝食は終わらせてきたぜ。クリムさんがここから出てくるのが見えたんでな来てみただけだ」
「それにしても貴方汚れすぎよ何をしたの?」
「クリムさんと魔法の練習をしてただけだ。まあそのおかげで魔法が使えるようになったぜ」
あまりの習得の速さにビックリする。
ガイズといいクリムといい魔法の習得が早すぎるわね。私が言えたことじゃないけど変質した人間は皆そうなのかしらね。
コンコンコン
「入っていいわよ」
ガチャ
「失礼します。お嬢様お食事をお持ちしました。ん?何故ガイズさんがここに居らっしゃるのですか?食事の場所が分からないのでしたら私が案内しましょうか?」
「食事はもう済ませたぜ」
「だいぶ早いですね。しかしガイズさん少し汗臭いですね。まさか着替えず食事を済ませたのですか」
「だって俺着替える服ねーし」
「服は洗濯に出しときなさい。代わりの服はクリムにでも見繕って貰いなさい」
レミルラはクリムとガイズの会話の間に入り食事をする。
***
「なぁクリムさん姉御を1人にしていいのか?あんた姉御の側近だろ」
「お嬢様が1人で行くと仰ったのです。それとこれが初めてではありませんしコッソリついて行っても撒かれるので既に諦めています」
クリムはガイズの服を洗いながら会話をする。
しかし慣れませんね。お嬢様が本当のことを話してくださらないとはそれだけ重要な事なのでしょうけど。
「ガイズさんはいつまでここに居るんですか?私の元にいても面白いことはありませんよ。魔法の練習をするのであれば練習場などでやってください私の近くでやられると魔力感知で魔力の移動を常に感じるので気が散ります」
「そう言うなってあそこ他の兵士の奴がいて定期的に戦いを挑まれて面倒臭いんだよもっと強い奴がいたら俺もあっちで練習するぜ」
確かにガイズさんは接近戦ではかなり強いです。あそこの兵士の方が挑んでみたいと思うのは分かりますが。わざわざ私のところでやるメリットはないですし。
「それにクリムさん俺の魔法が乱れたらアドバイスしてくれるじゃねぇか。俺は姉御に勝ちてぇんだよ前は圧勝されたからな」
気になるのですからしょうがないでしょう。
「はぁ分かりました。貴方もお嬢様と似て言っても聞かなさそうですし」
「分かってんじゃねぇか。だが戦いに挑むのはまだ先だけどな。とか言ってたら出来たぜ【金属合成】」
ガイズがやっていた魔法は
【金属合成】
本来の金属の性質を持ちつつ別の金属の性質を合わせる
と言う魔法だ。
分かりやすく言うと合金を魔法によって作るという事でしょう。非金属は混ぜることが出来ないようですが。合金というものが金属魔法でしか作れないこの世界ではかなり強い魔法だろう。
昨晩教えた【金属操作】を使えばその金属を剣の形にして使えば良さそうですね。
「次は【金属生成】を覚えたらどうですか?今覚えた魔法とも相性はいいでしょうし」
「おうじゃあそうするぜ」
もう少し私を疑ったりした方がいいと思いますが……。彼の謎の信用と名前のさん付けは一体何処から来たものなんでしょうね。
お嬢様は今何をしているのでしょうか。
***
「実験は順調かしら」
「はい、現在は順調です。最近はお嬢様が手伝って下さるので作業効率が上がっております」
「ならよかったわ。私がここで手伝うのは国王からの命令だからよ。はぁお父様の弱みを握ったと思ったのだけど、私も手伝うなら意味ないわね。領民には知られないようにしないといけないわね。それとクリムにも」
「確かに領民に知られると危ないですね。領民を使って魔物と交配、合成しているのですからね。まだスラムの人間だから大丈夫ですが」
はぁ最悪ねあのクソ親父も私がここに来ていることを知っているでしょうし証拠も抑えられている今までのようにはいかなくなるわね。あの親父は私のことをかなり嫌っているから。クリムは弱者の心が分かっている。自信を助けた私がこんな事をしていると知ればなんと言われるか……。
「お嬢様大丈夫ですか?」
「ええ大丈夫よ。ダンジョンの怪異と子供の合成の所に案内しなさい。確か報告書では喉が潰れたって聞いたけど」
「はい。突然叫び出しまして養生カプセルを開ける訳にもいかず」
確かに養生カプセルを開けたら機能は一時停止してしまう。そしたら中の子供は死んでしまうだろう。喉は仕方ない犠牲だと思いましょう。
「ここです」
この子は確か7歳だったわね。
元々は茶色い髪だったけど 実験により上から下にかけて黒~白のグラデーションが掛かった髪をしている。
1年ほどこの子を見てきたけど一切体が成長していないわね。カプセルで栄養は与えているから問題ないはずだけど……。分からない事ばかりね。
「次はあちらです」
「わかったわ」
レミルラが移動した時、7歳の少女はレミルラの後ろ姿を見つめていた。