第8話 国へ帰るか?
思った以上に衝撃だった。
『母国・セントジュエルが攻撃を受けている』。その報告は『もう関係ないはずのわたし』の『全て』を止めた。
追放された時よりも大きな衝撃。体の中に冷や水が駆け巡り、頭にモヤがかかる中、ヘンリーさんは言葉を続けるのである。
「────斥候の情報によると、まだ外壁の一枚が破られただけですが、セント・ジュエルはもともと魔防の国でしょう? 内偵によれば、戦力事態それほど持ってないらしいんですよ」
「──ミリア。そうなのか?」
「…………うん……、攻められるなんて、たぶん予想もしてない……、防壁が消えたらとか、だれも、そこまで考えなかったと思う……」
きかれて、こたえた。
一気に不安が溢れ出して、息ができない。
悪口さんざん言われたけど、嫌な思いもしたけど、嫌いな人も居るけど、わたしの故郷。
こんな時に脳が見せてくるのは、楽しい思い出ばかりで。足元の枯草の向こうに、小さなころの景色が流れ、わたしは、
「……おとうさま、おかあさま、……大丈夫かな、もしかして、もう殺されたり」
「────落ち着いて。……ゆっくり息をして。落ち着こう」
「──落ち着けない……!」
手が震える。首を振って彼を見る。
情けない顔をしてる自覚がある。
目を合わせてくれる彼の瞳は真摯に穏やかに、『落ち着いて』と訴えかけてくれてるけど、もう、わたしは、息苦しくて、仕方なかった。
────戻る?
戻りたくない、でも心配、喧嘩して出てきちゃった。本当に嫌いで憎んでるわけでもなかった。大好きな時もあった、あのまま会えなくなるの? 死んじゃうの? でも、じゃあ帰って・わたし────なんて言わ
「…………ミリア……国へ、帰るか?」
「……!」
まるでわたしの考えを読んだような、全てを見通したような彼に言葉に身をすくめた。
凍りつくわたしに、彼は緊張と、心配を纏わせながら問いかける。
「……君がいないと国は落ちるかもしれないだろ。俺のことは構わない。もともと、君を無理やり巻き込んだわけだし」
『申し訳ない』、と避けるように瞳を惑わし、一息。落ち着いた、真摯な声で続きをこぼす。
「……正直、君に『行くな』と言いたいところだが……国の有事となれば話は別だろう。わざわざ戦地に送り出すようなことはしたくないが、君が望むなら、国まで届ける。……どうする?」
「────わたし、……わたしは……」




