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メイド・ルーシェのノルトハーフェン公国中興記(完結・続編投稿中) ~戦列歩兵・銃剣・産業革命。小国の少年公爵とメイドの富国強兵物語~  作者: 熊吉(モノカキグマ)
・第17章:「詰問状」

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第8話:「再会:2」

第8話:「再会:2」


 それは、ノルトハーフェン公国でくり広げられた陰謀の首魁しゅかい

 エドゥアルドの命を狙い、危機に陥れた存在。


 ノルトハーフェン公国の元摂政、エーアリヒ準伯爵だった。


 エーアリヒは、エドゥアルドの敵。

 そうであるのなら、ルーシェにとっても敵だった。


 実際、ルーシェは、策士としてのエーアリヒの恐ろしさを、身に染みて知っている。

 ある時、エドゥアルドの公爵としての形式的な公務の関係でシュペルリング・ヴィラへとやってきたエーアリヒを、ルーシェは監視して、探りを入れようとしたことがある。


 しかし、ルーシェはあっさりとエーアリヒに見つかってしまった。

 そして、その場で捕まってしまい、怖い目に遭わされたのだ。


 その時は、スラム街出身の、どこの馬の骨とも知れないようなちんちくりんのメイドの言うことなど誰が信じるのか、なんの証拠にもならないと思われたようで、ルーシェはなにごともなく解放されたが、怖かったという気持ちは今でもはっきりと覚えている。


 そのエーアリヒは、エドゥアルドによって捕らえられ、正式な処分が決定するまでの間、謹慎きんしんとなっていたはずだった。


 だが、ルーシェの目の前にあらわれたエーアリヒの姿は、健康そのもので、少しも疲れたとか、やつれたとかいったことはない。

 平然と、悠然とした態度で、堂々としている。


 しかも、手錠などといった拘束なども一切されていない、自由の身だった。

 さすがに武器の携帯は認められていないのか剣などは身につけてはいなかったが、それでも、[罪人]に対する処遇としてはあまりにも緩く思える。


「なんで、アナタがここにっ!? 」


 ルーシェは、鋭く、自分にできる精一杯の怒った顔で、エーアリヒのことを睨みつけた。


 お前が悪者だということを、知っているんだぞ。

 ルーシェの言葉には、そういうニュアンスがはっきりと込められている。


「ルーシェ。いきなり、大声を出さないでくれ。驚いたじゃないか」


 ルーシェの叫び声に、顔をしかめながらそう言ったのはエドゥアルドだった。


 ルーシェは早くエドゥアルドに再会したいという一心で駆け出してきてしまったのだが、せっかくエドゥアルドと会えても、嬉しさよりも驚きの方が先に出てきてしまった。

 なぜならエドゥアルドは、まるでエーアリヒと親しい間柄にあるように、並んで謁見の間から出てきたからだ。

 そしてその背後には、警戒の兵士の姿などはなく、ただ1人、ヴィルヘルムがつき従っているだけだった。


「エドゥアルドさま! どうして、その人と一緒なんですかっ!? 」


 ルーシェは、自分がエドゥアルドのメイドであり、相手がノルトハーフェン公爵だということも忘れて、[信じられない! ]と、怒ったような口調で問い詰める。


 エドゥアルドとエーアリヒは、敵同士であったはずだった。

 エーアリヒはエドゥアルドの命を狙おうとしたことさえあったのだ。

 もっとも、エーアリヒは巧妙に証拠を隠蔽いんぺいし、その罪を隠してしまったが。


 だが、エドゥアルドには、黒幕がエーアリヒだということはわかっていたはずだ。

 それなのに、今は、お互いに並んで歩いている。

 まるで、気心の知れた相手であるように。


「ルーシェ。詳しいことは後で説明するが、もう、エーアリヒ準伯爵は僕の敵ではない。


 エーアリヒ殿はすでに、僕のために働くと約束してくれたのだ」


 興奮して呼吸を荒くし、エーアリヒを威嚇するようなうなり声をあげているルーシェに、エドゥアルドは冷静な口調でそう言う。


「なんででございますかっ!? 」


 ルーシェはそれだけでは到底納得できず、重ねてエドゥアルドを問い詰める。


 なぜなら、ルーシェも、エドゥアルドが屋敷を出発し、ポリティークシュタットへ向かって進軍しようとした際に、人々の前で宣言した言葉を聞いているからだ。

 その時、ルーシェは負傷者たちの治療のために忙しく働いていたが、確かにエドゥアルドの言葉を記憶している。


 罪ある者は、必ずそれを明らかにして、罰する。

 エドゥアルドは、間違いなくそう言った。


 それが、エドゥアルドによるノルトハーフェン公国の統治の、始まりになるはずだった。

 公平で公正な統治。

 そんな清らかな政治をすると、エドゥアルドは誓ったはずなのだ。


 そしてルーシェは、そんなエドゥアルドのことを尊敬していたし、信じていた。


 それなのに、まだその言葉を口にして数日しか経っていないのに、エドゥアルドはエーアリヒと親しそうにしており、「彼はもう敵ではない」などと言う。

 ルーシェにとっては、あの言葉はウソだったのかと、ショックだった。


「いろいろ、事情があるのですよ、ルーシェ殿」


 簡単には納得しそうにないルーシェを前に、困ったような顔をしているエドゥアルドに代わって、とりなすようにそう言ったのは、ヴィルヘルムだった。


「公爵殿下とエーアリヒ殿は、きちんと話し合ったうえで、お互いに協力することに決めたのです。


 もちろん、すべては、公国のため。

 人々が穏やかに、豊かに暮らせるように公国を統治するためです」


 エーアリヒを断罪するならば、その罪に連坐れんざして、芋づる式に数多くの人々を罪に問わなければならない。

 そうなれば、公国には粛清しゅくせいという名前の、陰惨な恐怖の荒らしが吹き荒れることになり、罪に問われた人々が抜けた穴によって、公国の円滑な統治ができなくなってしまう。


 エドゥアルドとエーアリヒが関係を修復しようとしているのは、そういう政治的な配慮からだったが、ルーシェはそんなことは知らない。


 納得できない。

 そういう視線で、ルーシェはエドゥアルドたちを睨みつけている。


「少し、お話をさせていただいても、よろしいでしょうか? 」


 その時、そう言って1歩前に進み出て来たのは、エーアリヒ準伯爵だった。


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