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メイド・ルーシェのノルトハーフェン公国中興記(完結・続編投稿中) ~戦列歩兵・銃剣・産業革命。小国の少年公爵とメイドの富国強兵物語~  作者: 熊吉(モノカキグマ)
・第3章:「最初の試練」

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第21話:「対話:2」

第21話:「対話:2」


 ノルトハーフェン公爵・エドゥアルドと、オストヴィーゼ公爵・クラウスの会見は、対峙する両軍の中間で行われることとなった。


 ちょうど、オストヴィーゼ公国が主張している国境線の真上になる。


「フン。

 若造に、こっからここまで我が領土じゃと、ワシの杖で地面に直接、線を引いてやるわい」


 最初からそうなるように見越して野営地をかまえさせていたクラウスは、そう、得意満面な様子で豪語し、ユリウスと供の従者数名だけを引き連れ、馬にまたがって会見の場所へと向かった。


 クラウスたちが野営地を出発するのとほとんど同時に、エドゥアルドたちも布陣したノルトハーフェン公国軍の兵士たちの間から姿をあらわした。


 人数は、3人。

 エドゥアルド自身と、長身の優男、そして会見を開こうという提案を使者として伝えに来た、ミヒャエル中尉だった。


「フン。みすぼらしい馬じゃわい。

 ま、エドゥアルド公爵の馬だけは、なかなか良い馬じゃがの」


 乗馬してこちらに向かってくるエドゥアルドたちを見てクラウスは余裕を見せると、「ハァッ! 」と気合の声をかけながら馬を駆けさせた。

 すると、クラウスが乗った馬は力強く大地を蹴って、颯爽さっそうと走り出す。

 まるでエドゥアルドたちに、オストヴィーゼ公国の軍馬の質の良さを見せつけようとしているようだった。


 やがて、2人の公爵は、容易に声が届く距離で対峙たいじした。


 15歳の少年と、60歳になろうかという老境の人。

 対照的な2人の公爵は、これが初めての対面だった。


「オストヴィーゼ公爵、クラウス殿とお見受けします!

 わたくしは、ノルトハーフェン公爵、エドゥアルドと申します!


 まずは、この度の会見に応じていただいたこと、感謝を申し上げる!

 本来であれば、わたくしの方からご挨拶にうかがうべきであったところを、多忙であるためにできなかったこと、お許しいただきたい! 」


 青鹿毛の馬にまたがったまま、エドゥアルドはまずそう言って頭を下げて見せた。

 会見を開くように求めた側であり、また、年少でもあることから、ずる賢いゆさぶりをかけてきたクラウスにも、まずは敬意を示した形だった。


「こちらこそ、お招きに感謝いたす。


 こちらも、貴殿の誕生祝いの祝賀会に使者も立てられなかったことは、すまぬと思っておったところじゃ。

 故に今回、直接まみえることができて、嬉しく思っておる。


 ワシが、オストヴィーゼ公爵、クラウスじゃ。

 こちらにおるのは、我が息子、ユリウス。

 隣国ゆえ、お互いに長いつき合いになるであろうから、以後、よろしくお頼み申す」


 クラウスの側も、まずはエドゥアルドに対して相応の敬意を示しながらそう言った。

 だが、頭を下げるようなことはしない。

 年長者として、また、優位に立っている者として、エドゥアルドに対して堂々とした、傲慢ごうまんともいえる態度をクラウスは示していた。


 そしてそれは、こちらは1歩たりとも譲歩するつもりはないという意思の表れでもある。


「しかし、老体にはこの寒さはこたえるものじゃ。

 エドゥアルド殿、会見の用件を、早く述べられよ」

「でしたら、さっそく、申し上げさせていただく! 」


 エドゥアルドに余裕をもって考える時間を与えないためにクラウスが急かすと、エドゥアルドはしかし、落ち着き払った様子でうなずいて、彼の主張をはっきりと明らかにした。


「まず、おうかがいしたいのは、なにゆえに兵を持って、クラウス殿がおいでになられたかということだ!


 ここは、確かに、我がノルトハーフェン公国と、貴殿ら、オストヴィーゼ公国との間で、長年にわたって係争されてきた場所である!

 しかしながら、歴代の公爵たちは互いによく話し合い、互いの利益のために、国境線を曖昧あいまいなままとしてきた!


 それなのに、わたくしが公爵として親政を行い始めたこの時、にわかに兵を動かされたのは、いったい、どのような意図であられるのか!? 」

(むぅ……。思ったより、焦っておらんようじゃの)


 エドゥアルドの主張をじっと聞きながら、クラウは[おもしろくない]と思っていた。

 クラウスとしては、突然の事態に慌てふためき、狼狽ろうばいしているエドゥアルドの姿を見たいと思っていたのだ。


「そもそも、我がタウゼント帝国においては、皇帝陛下の御名みなにおいて、帝国永久平和令がしかれ、帝国諸侯同士の私闘は禁止されている!


 それなのに、貴殿らは兵を動かし、領土の係争地という微妙な場所に踏み入って占拠し、野営地まで築いておられる。

 わたくしは、いったいどのようなお考えであるのだろうと、不可解でなりません!


 クラウス殿、どうか、そのお考えをお聞かせ願いたい! 」

(それに、なかなか、知恵が回るようじゃの)


 自らの主張を終え、クラウスにその意図を明らかにするようにと迫ったエドゥアルドのことを、クラウスは内心で苦々しく思い始めていた。

 その主張は、先に兵を動かしたクラウスの側の非を的確に指摘するものであり、そういう指摘のできるエドゥアルドは、きちんと論理的な思考をできるということだった。


(思っていたよりも、なかなか、手強そうじゃ。


 あるいは、そこにいるヴィルヘルムとかいう助言者のおかげか)


 クラウスは無表情をよそおいながら、エドゥアルドのかたわらで得体のしれない柔和な笑みを浮かべている長身の優男、ヴィルヘルムへ視線を向ける。

 クラウスは当然、ヴィルヘルムがエドゥアルドのブレーンとして働いていることも知っている。


 予想よりも手強いエドゥアルドを、どうやって引き下がらせるのか。

 クラウスは無表情をよそおいながら思考を巡らせ、やがて、自らの主張をするために口を開いた。


「ならば、お答えさせていただこう! 」


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― 新着の感想 ―
[一言] 老獪な人物との問答や交渉は作者の腕が試させられる。 きっと、決裂するんじゃないかな。
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