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第五十六話「こんにちは!お久しぶりです!」

そうして…迎えた、文化祭当日。



リョータのクラスは、予定通りメイド喫茶を開いていた。



制服は女子が作成した…、男子がメイド姿になるというコンセプトだった。



流行っていたアイドルの衣装を真似たものだった。



リョータは、黒と白のエプロンとカチューシャ姿で、慣れないフリフリのスカートを履いている。



「…ついにこの日が来てしまったのか…。」



マジかと思う気持ちが大きいが、当日を迎えると、意外と乗り気の男子が大勢を占めていた。



リョータもどちらかというと乗り気のグループだった。



イベントは開き直って、楽しんだものが勝ちというところなのだろう。



「みんな似合ってるって!シックなメイド服、ギャップ萌えってやつ!ウケる!」


「そうそう!みんな似合ってるよー!かっこいい!」



女子たちも大いに盛り上がり、彼氏や友人と写真撮影に盛り上がっていた。



しかし、一部のやる気のない男子たちは、隅で壁にもたれかかり、温度差が生じていた。



彼らは早く着替えたいというオーラを全身から放っていたが、クラス全体としては盛り上がっており、彼らも渋々参加せざるを得ない状況になっていた。



とはいっても、客が入りだすと、そんな彼らを写真で撮りたいという女子も増え、オムライスにパワーを入れる注文が入ると、



恥ずかしがりつつも、それなりにこなしていた。



一方、体育館では、軽音部がライブをしており、爆音と歓声が響き渡っていた。



その一角、壮馬のクラスは、予算と技術不足から、メリーゴーランドの出来損ないみたいな空中ブランコを完成させていた。



ワイヤーで吊るされた簡素なブランコは、お世辞にも安全とは言えないが、そのスリルとバカバカしさが功を奏し、生徒にはそこそこ受けていた。



壮馬のクラスメイトがメガホンで叫んでいる。「安全第一!でもスリル満点!命がけのライドに挑戦しろー!」










昼を過ぎると、家族や招待チケットをもらった友人たちが少しずつ増えていった。



奏は、実行本部として田岸と本部席に座り、盛況な様子を眺めていた時だった。



「奏先輩!」



声の方を見ると、紗矢が人混みを縫ってやってきた。



彼女は私服ではなく、高校の制服を着ていた。



「紗矢。いらっしゃい」



「お疲れ様です!私、ちょっと時間が空いたから顔出しました。」



「今日は誰と?」


紗矢は、待ってましたと明るい笑顔になる。


「彼氏と楽しく回ってますよ!ね、先輩、ちょっと喉渇いたでしょ?ジュース買ってきますね!」



紗矢は、奏の返事を待たずにちょっとジュース買ってくると駆け出した。




そして…





「久しぶり、奏」


「…秋本」



隣にいた会長が、状況を察したように気遣う。



「奏、友人なら少しくらい席を外していいぞ?今のところ、何も問題はなさそうだし。」



奏は、会長に礼を言い、中庭のベンチへと秋本を促した。



中庭のベンチに移動すると、展示スペースの割り当てがないため、程よく騒がしいが、人通りは少ない。



奏は少し周りを見渡し、特に人気の少ないテーブルへと向かう。



奏は、秋本に座るように促すと、秋本が完全に座る前に冷たい目を向けた。



「アンタ…、紗矢のこと、適当にしてないでしょうね?」



その目は、警告の色に満ちていた。



可愛がっている後輩が付きあっている。奏も知っていた。



秋本は、両手を挙げて白旗をあげるように大げさに肩をすくめた。



「怖いね。わかってるよ、奏」



奏は、少し話題を変えるように、惚ける。



「ところで…、うちの会計の先輩が、急に私に絡んでこなくなって。最初は避けられてたんだけど、今は自然体になってる。なんなら化粧が派手になって、ギャルみたいになってる。なんでかしらね?」



秋本試すような視線で見つめるも、秋本は動揺した様子は見せない。



少し間を開けて…秋本は、腕を組み、空を見上げる。



「さあ?」



「面倒毎が減ったのは、誰がやってくれたのかしれないけど、ありがたいと思ってる。」



半分皮肉交じりの表現で、さらに秋山に問いかける。



「…そうなのか?」



だが、秋本は揺るがない。相変わらず飄々とした顔で、なんのことだか分からないとばかりに応える。



奏は、再び表情を厳しくした。



「紗矢が望んで踏み入れているなら、私は何も言わない。彼女は自分の選択に責任を取れる子。けど、もし巻き込んだのなら、私は許さないから。」



そして、間髪入れずに奏は言う。



「売上…いいみたいね?一部の女子の間では噂になってるくわ。特に…3年生。受験前だというのに。最も推薦で決まってるから浮かれてるんだろうけど…。」



「最初はどうだったのか知らないけど、結果的にWin-Winになっているのなら、それも私は何も言わない。」



「けど…、剣太。あれをあなたは制御できてるの…?」




奏の連続した問いかけに、秋本は一瞬、少し恐れ入ったような顔と態度を見せた…。



「…まさか…。」



秋本は、奏を睨み返す。



2人の間の会話が途切れるが、2人とも視線を切ろうとしない・



そうして…、時間的には10秒にも満たない沈黙であっただろう。



沈黙を破って、秋山は奏の目を見て言い返す。



「誓うよ。お前はもちろん…、紗矢が悲しむようなことはない、絶対だ。」



秋山は先ほどまでの飄々とした態度はどこに行ったのか、真剣な眼差しで奏を見つめる。



「だったら、私はもう何も言わないわ。」



奏は目を閉じ、再び目を開けた時には、いつもの冷静な表情に戻っていた。





その時、リョータと智美が、模擬店の食べ物を手に、中庭のベンチにやってきた。



「あれ?秋本、久しぶり」


「ほんとだ。珍しい組み合わせ。」



リョータと智美は久しぶりにみた同級生に声を掛ける。



「久しぶり、リョータ、智美。楽しんでるか?」



そして、会話が始まった瞬間、その場に剣太がやってきた。



リョータは、少し驚く。剣太にI高の知人が居るのだろうか…?



剣太には失礼な疑問であったが、そもそも剣太は他校の文化祭に行くようなキャラではなく、自分の学校の文化祭でさえ乗り気でないことは、2回の中学生生活で体験していた。



だからこその疑問。



「剣太?お前、どうやって入ったんだ?チケットはどこから?」



すると、剣太は、悪びれずに答えた。



「うん?知り合いがいてな。」



知り合い?小林さんか誰かだろうか?ふと、誰だろうと考えていると、



剣太は剣太で、何かを言いかけた瞬間…、その場に一人の女子が駆け寄ってきた。




「探したよ、剣太!」





渚沙は、剣太の腕に掴まると、強引に連れて行こうとする。



「昨日、約束したでしょ。私の案内するから一緒に回ろう!」



剣太は、リョータたちに軽く手を振ると、渚沙に引っ張られるまま去っていった。



「あの人、生徒会の人だよね?」


「確か…。」



リョータと智美が奏の方を見る。



「そうね…、会計の渚沙先輩。」



にしても…、剣太がどうやって渚沙先輩を手名付けたのか…。秋山か…?



リョータ以上に、奏は渚沙の出現に驚きを覚えたものの、何となく思い当たることが当たっていたことを感じたため、それ以上、何も気にしないようにした。





リョータは、剣太の去り際を見て、秋本に尋ねた。


「おい、剣太は、後輩とつきあってなかったか?」



秋本は、肩をすくめて流す。



「さあな。剣太は意外とモテてな?」




「へぇ?剣太がねえ。」


リョータは智美と顔を見合わせ、そんなこともあるのかと驚いた様子を見せた。




そうして、そこに、さっきジュースを買いに行っていた紗矢が帰ってきた。



「お待たせ!冷たいジュース買ってきました!」



リョータと智美が声をする方を見ると、3つのジュースを持った紗矢が居た。



確か…、奏が可愛がってたバスケ部の後輩の…。俺をは記憶にあった顔を思い出そうとする。



紗矢は、笑顔で秋本と奏にジュースを渡すと、リョータと智美にも挨拶する。



「あ、リョータ先輩と智美先輩、こんにちは!お久しぶりです!」

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