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第五話「期末テストの返却」

「どうしたん?珍しい。ってか、電話で話すのって初めてじゃない?」


「そうかも。ちょっと声が聞きたくなって。」


「嘘つけ。」


「はやっ。」


「そんなキャラじゃないだろ。」


「ひどっ。」


「ってか、冷やかしなら切っていいか?」


「ごめんごめん。いやあのさ、夏休みに入った最初の土曜に、クラスの何人かで、


遊園地に行かないかと思って。」


「なんでまた。」


「クラスの仲を深めるのさ。」


「ダウト。」


「ひどっ。」


「行くのは構わないけど、単に遊びに行くだけか、なんか裏があるならそれは

教えといてよ。空気読めない行動して、あとから怒られるのは嫌だ。」


「お。話が早いね。実はね、恵ちゃんが勇人君を好きでさ。それでね。」


「みんなで応援しろと。」


「正解!」


「分かった分かった。俺たちは、みんなで遊んでいるようで、実は2人をくっつけようとするわけだな。」


「大正解!」


「おっけー。喜んでその他大勢になりますよ。」


「ありがとー。さすが持つべきものは親友だね。」


「親友になったことはないと思うけど?」


「今、何も言わずに私の言いたいことが伝わったよ。これはもう親友。」


「親友のハードル低すぎない?」


「そうかな?」


その後、たわいもない話をして、電話は切れた。


そういや、こんなイベントがあったな。まあ、奏のせいで失敗するんだけど。





俺が過去に戻って、慣れない日々を過ごしつつ、ようやく夏休みまであと1週間となった。


俺は日々、剣太と智美への警戒は怠らないようにはしていたが、やはり2人とも特に接点は無い。


俺の記憶では2人と仲良くなったのは、文化祭の劇の練習だったと思う。


だからこの時点では、単なるクラスメートだ。


だが、剣太にNTRされないためにも、智美には近づいていた方がいいとは思う。


きっかけをどうするかだが…。




そうして、1時間目、机に答案を置きつつ、期末テストの解説が行われていた。


数学100点。


あっさりと100点を取ってしまった。


まあ、1度はやったところをもう一度思い出しながら復習しただけではあるが、


予想以上に問題が簡単だった。


多分、数学以外の教科でも満点を取れた感触はあった。


これか。過去に戻って、無双する、過去ループチートってやつは。


中々に気分がいい。一応、勉強してるわけで、まるっきりのチートではないわけだし、むしろ俺の努力だろう。


このまま積み重ねていけば、高校も大学も、以前よりいいところを狙える気がする。


過去に戻って、人生をやり直す。うん。悪くない。


体育や音楽といった副教科は努力しかないので、これまた地味な努力をしている。


実は、筋トレとマラソンを始めた。この時にしっかり体を動かしておくことで、


効率よく身体を鍛えることができる。


なにせ、当時は部活も、女バスが男バスと仲がいい。ただそれだけでバスケに入って毎日遊んでただけだった。


くだらないことを考えていると、1時間目終了のチャイムが鳴った。


今日は、あとの授業も、ほぼテストの返却とその解説なので、今日は楽な1日だ。


昼休み、いつものように拓と昼食を食べて、昼食後、いつものようにサッカーに行った。



そうして昼休みが終わり、5時間目が始まった。



理科のテスト。このテストは学年1位が93点、平均点も60点とかなり悪かったらしい。



「うわあー。」


「最悪ー。」



テストが返却される都度、クラスメートの悲痛な声が聞こえる。


前の時は俺は何点取っただろうか。さすがに覚えてはいないが、平均点ぐらいだった気がする。


「拓はどうだった?」


「いやあ…。悪いわー。平均以下やわー。」


「そうか…。なかなか悪いな。」


「お前もそんなもんやろ。」


「だろうな。」


そうして、名前を呼ばれたので、俺はテストを取りに行った。すると…




「正直に言いなさい。」



「は…?」



テスト返却と同時に理科の先生からかけられた言葉、意味が分からなかった。


「青木くんですら93点だったテストを、あなたが100点取るなんておかしいでしょう。」


こいつは何を言っているんだ?


「どういう意味ですか?」


「分からない?不正をしてない?と聞いているんです。」


こいつマジか!その確認をするにしても、普通は職員室に呼び出しするとか、生徒の前で


晒し者になるような形で問い詰めると、どういう問題が起こるか想像もつかないほど、


アホなやつだったのか!?


「不正なんてしてないですよ?」


「正直になった方が罪は軽くなるぞ?」


「いや、普通にやってませんけど?」


「じゃあ、何故、青木君よりお前の方が点数が上なんだ!」


「青木より点数がいいと不正になるんですか?」


「そうは言ってない!」


「いや、言ってるじゃないですか。」


「なんだと!」


ダメだ埒が明かない。




「なんなん、リョータ、カンニングしたんー?」


「悪いなー。」


「最悪ー。」




クラスメートの一部が野次りだした。


クソっ。こうなるに決まってるだろ。馬鹿かこいつ。


「不正をしてないなら証明してみろ!」


「どうやってですか?それ確か悪魔の証明ってやつじゃないですか?」


「できないんなら不正だ!」


ヤバい。誰だこんなやつ、採用した奴は。帰ったら親を連れて、凸るとして、


今は、とりあえず納めないと、1時間つるし上げなんて日には、


明日からの学校生活がヤバくなる可能性だってある。


「先生。とりあえず、身に覚えはないですが、担任の藤原先生も入れて、職員室で話しませんか?」


「ああ、良いだろう。今日の終礼が終わったら、職員室に来るように。藤原先生には私から言っておく。」


「はい。」


はあ、気が重い。


席に戻ろうとすると、こちらを見ていた智美と目があったが…、


智美はスッと目線を下に外した。




そりゃそうだ。関わりたくないわな。




「あいつ、無茶苦茶やな。」


「だろ?青木より点を取ったらカンニングって。意味不やわ。」


席に戻ると、拓が半笑いで声を掛けてきた。


持つべきものは友人だ。


しかし、こんな目立ち方はしたくなかったのだが…。


そうして、理科の時間が終わり、終礼も終ると、俺は藤原先生と連なって職員室に向かった。





「カンニング…。してないよね?」


「やるわけないですよ。」


「そうよね。少なくとも、私が見てた時は、誰もカンニングなんてしてなかったわ。」


「そんなの分かるんですか?」


「カンニングってね。意外と見つけれるものなのよ。皆、見つからないように目立たないようにする。


だから…、逆に目立つもんなのよ。あまり言わないでね。」


「そういうものなんですね。」


「そうよ。というより、テストの点よりもリョウタ君の成長を感じてるわ。」


「…成長?」


「そう。ちょっと前までは、男の子って感じの悪ガキっぽかったのに…、


なんか、そう、落ち着いた雰囲気がする。ちょっと中学生離れしてるような雰囲気もあるかな。」


「それは、褒められてるんでしょうか?」


「もちろん、褒めてるわよ。さ、平田先生と、あと山本先生にも立ち会いをお願いしてあるから。」


「物々しいですね。」


「ちょっとね。平田先生がちょっと興奮してて。山本先生にもお願いせざるを得なかったのよ。」


「そんなにですか。」


「なだめるのが大変だったのよ。まだ若いから機関車みたい。」


「お疲れ様です。あとで、母と校長先生にお伺いしますね。」


「冗談でも止めてね。あと、そういうところ。子どもっぽくない。」


「そうでしたか。」


「そうです。」


そうして、職員室に連れていかれた俺は、3人の先生を相手に問答することとなった。


もっとも、山本先生も自分の立ち合いの時に、不審な動きをしたものは居なかったと


証言してくれたため、俺は意外にあっさりと解放された。


帰り際にも平田先生が睨んできた。


やはり、母親と校長先生に挨拶に行くか…。


俺はそんなことを想いながら、家路についた。

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