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第四十五話「すぐに痛い目を見るわ」

3月も終わりに近い、春休みのある日の午後。



唯と奏が会う約束をした場所は、駅前のショッピングモールのカフェだった。



高校が分かれても、たまに二人で会う彼女たちは、窓際の席でドリンク片手に他愛もないガールズトークを楽しんでいた。



「ねー、奏、最近、新しいコスメ全然チェックできてないんだよね。この春、絶対これ流行るってやつない?やっぱピンク系かなー?」



「あー、わかる!私、この前、あの新色のリップ買ったんだけど、めっちゃ発色良くて神だった!でも、その前にテスト勉強で寝不足すぎて、顔色がね、もうゾンビ…」



「ウケる(笑)」





一通り話し終えた二人は、カフェを出て、コスメを買いに向かう。その途中、唯はコスメショップの向かいにある本屋を見た。



「あっ」



唯は、突然何かを思い出したように立ち止まった。



「そういや、ちょっと気になる本があったんだよね。ちょっとだけいい?」



唯は奏に断りを入れて、少し本屋に行くことにした。



唯が目当ての本を見つけて手に取った…、その横を金髪の男が通りすぎる…。



ん?



唯は、あれ?と思い、振り向いた。



…あれは…、



剣太のように見える…。



…剣太は、周りを確認するような素振りを見せながら…、文庫本の棚の前へ進んでいく…。



剣太はあたりを警戒するように視線を巡らせた後…



小さな文庫本を数冊を素早くカバンに入れた…。



「!」


唯は手に取っていた本を戻し、奏と合流した。



「ねぇ、奏。ちょっと…。」


「どうしたの?」


「ちょっと来て…。」



唯は奏の腕を取り、付いてきてと案内する。



「あれ…、剣太っぽくない?」



唯は奏に目で方角を伝える。



「そう…、っぽくは見えるけど、剣太がどうかしたの?」



すると…、



剣太はまたしても周りを確認しながら、店員の隙をみて本をカバンに入れる。



唯は見間違いでなかったと確信した。



奏は、すぐに状況を理解し、唯に気付かれないように、さりげなく自分のスマホで動画撮影を始めた。




剣太は、本屋から出て、そのまま隣のCD屋に向かう。


「ちょっと、後を追おう」


奏は無言で頷いた。


…CD屋でも、剣太はカバンにCDを入れる姿が見えた。


奏はその様子もスマホに捉える。



CD屋を出ると、剣太はショッピングモール出口に向かうようだった。


何となく気になった二人は、人混みに紛れて後を付ける…。


剣太が向かったのは、モールを出てすぐの公園のベンチだった。


剣太が座ると…、



しばらくして2人組が剣太に近寄る。


学生服を着た中学生ぐらいかもしれない、幼い顔つきの二人組だった。


「あれって、うちの中学?」


「どうだろう…。」


唯も奏も男子の制服までは分からず、お互いに確信が持てない。


すると…、


剣太は、持っていた本とCDを中学生に渡しているようだった。


…代わりと言わんばかりに、中学生はポケットからお金を取り出し、剣太に渡した。


やり取りを終えると、2人組と剣太はスーッと立ち去った。



「あれって、万引きしたものを売ったってこと?」


唯は、その光景に愕然とした。


「頼まれたのか、売ったのか、それとも、売り付けたのか。どっちにしても、完全にアウトだよね。」


奏は、スマホの録画を止め、冷たい声で呟いた。



「あんなのと付き合わなくてよかったわ…。」


唯は、吐き捨てるように言った。


「全くだわ…。」


奏は、口の端に少し仄暗い笑みを浮かべて言う…。




「どうしよう。あれ、確実に万引きだよね…。警察とかに言う?」


奏は、スマホの画面をそっと消した。


そこには、剣太が商品を受け渡しする様子が録画されている。奏は、冷静に、しかし冷たい声で言った。


「逆恨みされるかもしれないし、関わらない方がいいかも…。」


「でも、あんなの、そのままにしておくのは……」


唯は、おな中のクラスメートの悪事をそのままにしておくのは忍びない様子を見せる。


奏は…、唯の両肩にそっと手を添える…。


「私は、唯に何かあった方が心配だよ?」


奏は続けた。


「それに、あんなに派手なことしたら、すぐにばれるよ。店員も気づくだろうし、防犯カメラだってあるんだから。」


「それに…、あの店にはなかったみたいだけど、防犯ゲートで万引きなんてすぐバレる店の方が多いよ。」


唯は、ハッとした表情になった。


剣太は確かに、周りを確認しながらも、手際が悪く、隠れてコソコソしているようには見えなかった…。


「やっぱりそうだよね…。」


「確かに…。逆恨みされるのは怖いかも…。」


剣太が荒れて停学になっているという話は、中学の同級生の間で多少なりとも噂になっていたのを唯は思い出す…。


唯の罪悪感を抑えるように奏は言う。


「ほっといても…、すぐに痛い目を見るわ…。」

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