第四十四話「気前がよくてありがたいねぇ」
2月も終わり…、3月になろうとしていた頃。
昼下がり、剣太の家には、剣太と…
秋山と一場、そして大月が居た。
剣太はベッドに座り込み、その表情は荒んでいた…。
先日のバレンタイン直後に…、彼女からフラれ、剣太は怒りと屈辱で自暴自棄になっていた…。
その勢いのまま学校で同級生と揉め、喧嘩となり…、1週間の停学処分となっていた。
剣太は、壁にもたれかかり…、「クソが...。あの女...」と低く罵る。
「気持ちはわかるが、余り荒れるなよ」
なだめるように秋山が言う。
そして…立ち上がると秋本は、剣太の隣に座り…、親友を慰めるかのように肩を叩いた。
「そうはいっても、わけが分からない。俺の何がだめだったんだ!?」
剣太は秋山に向かって吠える。
彼は、最初から飽きっぽい、ゆまを紹介されたなどとは思ってもいなかった。
「そのうち、またお前の良さが分かる女子がでてくるって。」
大月は、心にもない言葉で励ます。
「そうだ。俺も紹介した手前、気にしている。だからまた、誰か紹介できないか探しているところだ。」
秋本の言葉を聞き、剣太の虚ろな瞳に急に光が戻り…、
剣太は…急に明るくなる。
一場は、秋本の言葉を聞いて、タバコの煙をゆっくりと吐き出し、俯き笑みを隠す。
「え?マジで? 」
大月は、秋本が次の「玉」を用意していることに驚く。
秋本は、時計に目をやった。
「実はな…、今日も、お前のために紹介できる子いないかを相談しにいくところだったんだ。もちろん、ゆまとは違ってもっといい子を探すつもりでな。」
「そろそろじゃね? そんな時間だろ」
大月も時計に目をやり言う。
「そういやそんな時間か…。」
秋本は立ち上がり、帰り支度をしようとしたところで、大袈裟に気付く振りをした。
「あ、ヤベェ。今日、合格祝いも兼ねて相談しようと思ってたんだが…、金をあまり持ってきてなかった。スマン!ちょっと貸してくれ!」
剣太は、何の疑いもなく財布を取りだすと「分かったよ」と、1万円を渡す。
「悪い!助かる。期待しててくれよ!」
秋本は、一場と大月と共に、剣太の家を出た。
剣太の家を出た途端…、
一場と大月は笑いをこらえられなくなった。
「あの急な振り、酷すぎない?」
「だよなぁ。ちょっと雑くて、変に思われないかと少し焦ったわ!」
秋本は、笑顔で待ち合わせのファミレスへと3人で向かう。
「それにしても、紗矢ちゃんは、T学院とはね。女子高じゃかなり上じゃないの?」
「ああ。制服が可愛いだけで受けてたけどな。」
「羨ましいねぇ。優秀で可愛いんだから」
「てか、公立も残ってるのに、なかなか余裕だね」
一場は驚く。
秋本は、手に握った一万円札を軽く叩いた。
「まあな…。だからこそ、今日はせっかくの剣太のおごりだ!一緒に紗矢を祝ってくれよな?」
一場は、秋本の提案に笑って頷いた。
「そうだな、剣太さんは…、いや、剣太様か!気前がよくてありがたいねぇ」




